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私がアンタの為にしてあげられる事が 一つだけある|漫画『【推しの子】』第14巻


これまでの感想はこちら。

映画『15年の嘘』は、星野アイの過去を赤裸々に映し出す。

施設を飛び出したこと、アイドル事務所の社長にスカウトされアイドルになることを決めること。

親族にも疎まれ、実母からも、仲の良かった仲間からも、妬まれ距離を置かれた。

「才能は人の人生を左右する 良くも悪くもだよね」

『【推しの子】』第14巻

撮影が進む中、ルビーは“星野アイ”という人間を見失っていた。

「分からないんだ 本当のママがどういう人だったのか どういう気持ちを抱えていたのか」

『【推しの子】』第14巻

行き詰まり、悔しいと泣くルビーの気持ちが、有馬かなにはとてもよくわかった。
そして、それと同時に自分が辛くても、かなを思いやるルビーに“欠けている”ものも気がついてしまう。

「頑張って当たり前でしょ 私が演じるのはママなんだから この映画はね 私達 家族が 過去と決着を付ける為の作品なの 私達 皆が過去に囚われず 前を向いて未来に進む為のもの
絶対に 何が何でもうまくやらなきゃ駄目なの
だから私はママを理解したい
どうしても良い演技がしたい!」

『【推しの子】』第14巻

かなには、ルビーのこの映画に対する気持ちは、おそらく理解できない。

ただ。

良い演技がしたい。

それだけは。

その気持ちだけは 身が引き裂かれそうな位 よく分かるのよ

『【推しの子】』第14巻

そして。

アンタがアイを理解する為のピースを
私は一つだけ渡せる

『【推しの子】』第14巻

かなの視線の先には、ルビーとかなが仲良く映る写真があった。

そして、覚悟を決めたように微笑む。
しかし、それは一瞬で消えた。

これから、ルビーにその“ピース”を渡すために。


良かった ちゃんと偽物だった

元B小町のメンバー、ニノのこのセリフは怖かったー。
何だろう。やっぱり星野アイは絶対的な唯一無二の完璧なアイドルだった、と印象付けられたというか。

アイの孤独で、虚像で固めた、その先に何があったのか。

「もしかして ママもいつも泣いてたの?」

『【推しの子】』第14巻

「アイは泣いたりしない」

『【推しの子】』第14巻

ルビーとアクアのアイに対するこの解釈の対比が面白かった。
どっちも正しくて、どっちも違っている。 
でも、この認識の差が後々大きな要因になる気もする。

そして、今回、何で有馬かなを魅力的に感じるのかがよくわかった巻でもあったな。

自己研鑽を積んで、下から這い上がってきた他のメンバーと違って、彼女は一度頂点から落とされて辛酸を舐めている。
 
演技が上手くなりたい、ルビーのその気持ちを痛いほど理解していたのは彼女だけど。

それだけでは駄目なことを知ってるのも彼女なんだよね。

だからこそ、共演する相手の演技にまで関わっていく。

「本当に便利な役者だよ」

『【推しの子】』第14巻

この、使い勝手の良いって言い方は腹立たしかったけど。

「彼女は天才役者として売るべきだ」

『【推しの子】』第14巻

上手いだけなら、あかねもフリルもいる。
だけど、彼女の魅力は、他人の演技も変えられること。

俯瞰で、全体的に見ることが出来ている。
そのバランスの中に自分を置くことが出来る。
こういう才能ってさ。演技に限らずだと思うけど、一般社会でも都合よく使われて終わっちゃうことが多いよね。

目に見えにくいというか、評価されにくいというか。

そのジレンマがあるから、それと戦う彼女が魅力的に見えるのかな。

アクアはかなのこと、特別に思っているんじゃないかな、と思っていたんだけど。

どんな形でも良いので、彼女が報われる姿が見たいな。

希望を持つ為にも。


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