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Ωであることが いつだって俺を惨めにさせる|BL漫画『后宮のオメガ』

※この作品はBL作品です。

雪深い場所にある王国。十三席王子のイリヤは、ほとんどの王族がαである中、Ωとして生を受けた。

犯罪や人身売買に巻き込まれ、成人まで生きるのが難しいとされるΩであるイリヤが、今日まで生きることが出来たのは、単に彼が王族であるからだった。

しかし。

その身に自由はない。

イリヤは、青い海に囲まれた資源豊かな国・ハヌ国の王・ハーリドとの婚姻が決まった。
貧しい祖国が資源と引き換えに技術と共に売りつける、お飾りの后として。 

どうせこの身は 自分のものではない
生まれたときから これからもずっと

『后宮のオメガ』上巻

後宮の美しい庭を眺めるイリヤ。

何もかもが、虚しい。

そこへ1人の少年が迷い込んできた。
宦官にしては身なりが良い為、王子の1人だろうと判断したイリヤは、迷子になったのであろう少年を後宮の出口まで送っていった。

「もうここには 来るんじゃないぞ」

『后宮のオメガ』上巻

そういって踵を返したイリヤの背中に

「またすぐに会える」

『后宮のオメガ』上巻

と言って少年は去っていった。

そして、イリヤは後宮へ戻り、王に会う為に飾り付けられる。
今日まで。自分が生かされてきたのは利用価値があるからだ。

俺は王家としての役目を果たす 望まれるなら子も生む
その代わり
俺自身の魂は 誰のものにもならない

『后宮のオメガ』上巻

扉が開かれ。

イリヤが見た王座に座っていたのは。

後宮に迷い込んできた、あの少年だった。

年端もいかぬうちから王座に就き
年上のΩの男を娶らされたのか

『后宮のオメガ』上巻

誓いの言葉を口にしながら

全く 哀れなこどもだ

『后宮のオメガ』上巻

心の内でイリヤは、その小さな王を憐れんでいた。


シェリプラス?

著者は 露久ふみ
BL作品を中心に活動されている作家さんです。

出版社は 新書館

掲載誌・レーベルは シェリプラス
新書館のBLレーベルであるディアプラスは知っていましたが、シェリプラスは2011年に創刊したディアプラスの姉妹誌(姉妹レーベル)だそう。

発売日 2023年11月 
既刊2巻。完結済。


スゥヤの献身が支えるストーリー

幼い王に嫁いだイリヤ。
十席以降の王族に侍従はつかず、その身ひとつでハヌ国にやってきたイリヤを支えたのは侍女長のスゥヤなんだけども。

いや、ストーリーの基本筋は、勿論、ハーリドとイリヤのラブストーリーなんだけどさ。

幼いけど思慮深いハーリドとの生活で、無関心に生きてきたイリヤが段々と氷解していく前半部分と、王位簒奪を計った兄・ザインにハーリドが殺されたと言われる中で、イリヤが后として自分の意志で民を導き、生きていたハーリドと再会する後半部分の大まかに二部構成で。

大人になったハーリドがこれまたカッコよくて。

ハーリドに影響されながら、誰かの人形ではなくイリヤが自分の意志で選択をするようになっていくのは胸熱なんだけども。

その横にはいつもスゥヤがいて。

ハーリドが亡くなったことになっていた間も、ずっとイリヤに仕えていて。

全2巻という尺の中でスゥヤ自身のことにはあまり触れられていなかったけども。

ハーリドという後ろ盾がなくなってもイリヤに仕えてたスゥヤは、ただただ献身的なというか、忠誠心に溢れた人、ってだけではないと思うんだよね。

比較的、綺麗にまとまったストーリーだっただけに、その辺のエピソードを入れるのは難しかったのかもしれないけど。

 もう少し彼女のバックボーンを知りたかったな。

とはいえ、ヒストリカルテイストのラブストーリーは読み応えがあって。
まっすぐなハーリドと、ツンなイリヤの組み合わせも最高で。

良い作品でした!


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