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Monologue #05 “過去は常に美化されるもの”

東京ディズニーランドのイベントやショーが、昔に比べてパワーダウンした、というような質問がネットにあって。

それに対する回答の多くが

“自分の趣味嗜好が変わって、現在のものが楽しめないだけではないですか?”

というもので。

私自身に言われたわけではないが、その質問は私も感じていたものなので、その答えに愕然とした。

“趣味嗜好の問題ではない”と説明することも出来るけど、問題はそこではなく、そう言われるだけ歳を取ったという事実だ。

過去は美化される。都合の良いところだけが残る。

その一方で、どんなものでも体験しなければわからない。記録を追うだけでは、伝わらない。

私は私自身で体験してきたものを軸に物事を判断しているつもりだが、そもそもその“体験”が正確に記憶されているとは限らないのだ。

とはいえ、現在のあるものがベストで、素晴らしいものなのだろうか。

過去には、価値のある美術品や工芸品を、その時代には価値のないものとして二束三文で海外へ売り渡してしまったり、管理をせず壊してしまったりした例もある。

その時代の価値観だけで、全てを判断するのは必ずしも正しい事ではない。

だからこそ、我々は過去を学ぶ意味がある。

過去を学ぶのは容易ではない。
現在から離れていけば離れていくほど、文化圏が違えば違うほど、“その事”以外の知識も必要になる。

私自身も、「昔流行ったものだから」とよく見もしないで切り捨てたものに、価値のあったものがたくさんあるのかもしれない。

ところで、フロリダにあるウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートにあるマジックキングダムに「カルーセル・オブ・プログレス」というアトラクションがある。

1964年に行われたニューヨーク万国博覧会で初公開されたアトラクションで、何度もリニューアルはされているものの、20世紀の生活(電化製品等)の様子を、各時代ごとにシーン分けしたステージがあり、観客席がステージの周りを周りながら現在へと遡っていく、という内容である。

当然ながら、電化製品は時代を追うごとに便利になり、生活環境も良くなっていく。

そして、過去の人に扮したオーディオ・アロマトロニクスはこう言うのだ。

“今が1番素晴らしい”

と。

現在の価値観で全てを推し量るのは危険だ。

しかし、“今が1番素晴らしい”と思ってしまうのは、私たちの愛すべき欠点なのかもしれない。


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