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あれは大丈夫なときの 足取りです|漫画『神田ごくら町職人ばなし』


意地だけ立派で 腕のねえ奴に
職人の価値はねえ
腕だけ達者で 意地のねえ奴ぁ
職人の資格がねえ

『神田ごくら町職人ばなし』

江戸時代の神田。
多くの職人が集う場所。

「お前の考えた 小袖の意匠は
どっかで見たことのある 文様の寄せ集めで 面白味がねェ」

『神田ごくら町職人ばなし』

紺屋の藍染職人である女性は、行き詰まっていた。

世間の流行は華やかな友禅染め。
自分も女の人には色とりどりの鮮やかな小袖を着て欲しいし、そういうものが作りたい。

そんな胸の内を桶屋職人に打ち明けると。
…じゃあなんで紺屋職人なんてやってるのさ…と、返された。

「それしか できることがないから…」

『神田ごくら町職人ばなし』

流行りのものが見てみたい、と太物屋を訪れた彼女は友禅を眺めながら、この見栄えを藍染の意匠に取り込んだが親方の反応がイマイチだったのを思い出す。

帰ろうとする彼女。

が太物屋に「藍染職人のあんたには ぜひ見てほしいんだ」と呼び止められた。

それは、藍染の白あがり。
茶屋染めという御三家の御殿女中が夏に着る帷子だった。

紺屋へと帰ってきた彼女は、まっすぐに2階へ上がり、自分の机に向かう。
そんな彼女を見て、「大丈夫かね」という問いに親方は自信をもって答えた。

「ええ あれは大丈夫なときの 足取りです」

『神田ごくら町職人ばなし』

これがデビュー作品だったりする?

著者は 坂上暁仁  
この作品以外にコミックは見つけられませんでした。
リイド社にあるプロフィールには

1994年生まれ。2017年、『死に神』で第71回ちばてつや賞入選。

リイド社ウェブサイトより

とあるので、商業誌デビュー作品(もしくは初連載作品)かもしれません。

「このマンガがすごい!2024」オトコ編第3位受賞作品。

出版社 リイド社

掲載誌・レーベル トーチ

発売は 2023年08月
既刊1巻。連載中。


「紺屋」と「畳刺し」が特に好き

基本的に江戸の職人のオムニバス形式の作品です。
主人公は都度変わるものの、「桶職人」の主人公が「紺屋」の相談相手に脇役として出てきたり、というのはあります。

この職人の仕事の描写にフォーカスをあてている、というのがこの作品の特徴。

良くない? 性別も年齢も関係なく、誰かが真剣に何かに向き合ってるのを斜め45度くらいからこっそり見るの。

私、写真とか映像とかでも、レンズの方を見ているのではなくて、レンズのことを忘れてるくらいの絵が好きなのよ!!!

もう、そういう意味で、私の好みドンピシャ。

特に吉原の畳の張り替えを行う畳職人たちの「畳刺し」なんかは良かった。
同じ部屋にいる湯上がりの花魁には目もくれず、真剣に畳を張り替える畳職人とか最高。

みんなカッコ良かったなぁ。

仕事が終わったあとの様子は少し子供っぽかったけど(笑)

そして、張り替えた畳に寝転ぶ花魁・花里も良かった。そうだよね。新しい畳に寝転ぶって贅沢だよね。

「紺屋」の藍染職人も良かった。
自分の持っている技術と流行の乖離、そこから何かを見つけて格闘する姿はとても良かった。

今とは仕事とか全然違うんだけど。
色んなことは出来ない不器用さと、自分の出来ることに真摯に向き合う姿は。
共感できる人も多いんじゃないかな。

時代が違っても。
働く人はカッコいい。
そう思わせてくれる作品でした。



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