【声劇台本】貴女は薬、私は毒
○
●
♦
・女性2人、不問1人の声劇台本です。
・一人称や語尾の変更程度の改変可。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・アラーム音
○「……んん、うるさ。朝か」
●「……んー、何時今……」
○「八時」
●「まだ寝れるじゃん……」
○「いやいや、そろそろ起きよ。昨日の食器、まだ洗ってないしさ」
●「日曜日なのに?」
○「日曜日だから、でしょ。さ、起きた起きた。おはようー」
●「布団めくんないで」
○「まーったく。先起きてるから、気が済むまで寝てな」
○「いや、起きる」
・お皿洗いの音
●「○ちゃんが洗い物してる間に、お洗濯もの干しちゃうね」
○「えらーい、助かるー」
●「ふふ、私えらい子だから。日曜日なのに早起きしたし」
○「そーだね。私もえらいでしょ十分」
●「んふふ、私には及ばないよ〜」
○「なんでだよ」
・鼻歌を歌いながら洗濯物を干す●
○:陽だまりの中の彼女は、美しすぎて、人間の目にはきっとまだ毒だ。
○「●、来て」
●「えー、いいよ」
・●を抱きしめる○
○「●は、ずっとここにいるよね」
●「いるよ、……きっと」
○「絶対って言ってよ」
●「嘘は言いたくないじゃん」
○「……なに、何かあるの?」
●「……ないない。けど、物事に絶対はないし、絶対死なない! とか言う奴に限ってすぐ死ぬから。私はすぐ死にたくないだけです」
○「そっか」
●「ねぇ、ちょっと大事な話。聞いて」
○「……な、なに」
●「……大好きだよ」
○「何それ………ばか」
●「あ! 今バカって言った! この人バカって言った!」
・フェードアウト
・電話口
♦「そういや姉ちゃん、言ったの? あの話。身体悪いってやつ」
●「言ってないよ。てか言うつもりもない。私がそんなんなってるって知ったら、死んじゃうよあの子。ああ見えて、結構繊細だからさ」
♦「んでも、○さんならそういうのも一緒に乗り越えたいって言ってくれるんじゃないの? 恋人なのに」
●「……戻ってこれるか分からないのに、縛り付けてはおけないよ。私より素敵な人なんかね、いや、私みたいなひとはたくさんいるから。世の中広いから。あの子ならきっと大丈夫。……大丈夫に、育てた」
♦「なんだよそれ。とにかく、今日の夕方迎えに行くから。身体冷やさないでよね」
●「はいはい、ありがとね」
●:こういう話のテンプレすぎて、この話作ったひとに文句言いたいくらい。私だってこのまま幸せが続くならそれが良かった。
・インターホン
●「さよなら、○ちゃん」
・車のドアが閉まる音
♦「ほんとに良かったの、これで。今なら引き返せるよ姉ちゃん」
●「……行って」
♦「でも」
●「行って! 私だって、平気で出てきたわけじゃない、一緒に乗り越えようって、もう残り少ないなら結婚でもなんでもしよう、って言われたかった。あの子ならきっと言ってくれるから。だけど、それじゃダメなの。それじゃあ、私が、あの子の未来を黒塗りにしてしまうの。綺麗なあの子の明日を私は、私のせいで……だから……」
♦「……わかった。シートベルトして。動くよ」
●:彼女の無防備な笑顔は、私にとって唯一の薬だった。いいえ、きっとあの子なら次の誰かの妙薬になれる。
○:彼女が何も告げずに私の元からいなくなって数ヶ月が経った。あの日、彼女が干していた洗濯物には触れられなくて、ずっとそのままになっている。今日も幾度の雨を乗り越えてカピカピになった洗濯物が、風に揺れている。
こんな朝だったな。柔らかな日曜日の、うざいほど清々しい晴天の日。
○「薬も規定量以上になると、毒になるんだっけ。愛情、もらいすぎちゃったな」
・瓶が転がる音
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?