どさくさに紛れて

好きなものを好きなようにつらつらと。

どさくさに紛れて

好きなものを好きなようにつらつらと。

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いつか結ばれるより、

まぶたを閉じて横に寝転ぶ。 ふとした気配にまぶたを開けると、そっと伸びてきていた掌が視界に入った。 瞬きに遮られ、躊躇いに固く結ばれてしまった右手が宙に浮かぶ。 きっと、わたしの頰に触れようとした掌なのだろうと思っても、もう一度まぶたを閉じる気にはならない。 そのまま撫でてと言えるのならば、どんなによかったのだろう。 行き場をなくしたその右手がかわいくて、そっと握ると、乱暴に抱き寄せられる腕の中、照れて笑う吐息が聞こえる。 額にかかる前髪を揺らすそれだって、今夜だけのと

    • 君が好きだと言ったワンピースを着ていく健気さは、きっともう伝わらないだろう。

      「それ、かわいいね」 階段を降りる後ろから、ナイショ話をするような声がする。呼び止めるわけでもなく、聞いて欲しい、というような声色でもない。単純に、ただ思ったことが口から出た、とでもいうような。 「うん、最近買ったお気に入りなの」 「ふーん、上着着てるときは分からなかったけど、さっき店の中で上着脱いだところ見たら可愛いなって」 そっと振り向いて返事をすると、軽く微笑んで、トントン、と弾むように階段を降りて隣に並んでくる。 背が高い私よりもずっと大きい。あまりひとを見上げ

      • わたしの夜たち

        ほんとうは、数えることはできるのだけれど、 言いたいだけの「数えきれないほどの夜たち」 わたしの日常に刺激と、美しい煌く思い出を与えてくれた男の子たちへ、 ありがとうの気持ちとともに、そっと2019年に置き去りにして。 ロシアンブルーの綺麗なねこちゃんを飼っている、綺麗な瞳の男の子 東京駅が眺められるテラスで飲むお酒に酔って、丸の内のキラキラの喧騒の中から疲れ果てて乗ったタクシーはほどよく心地のいい速度で余計に酔いを加速させた。 お約束のようにタクシーの中でも手を繋いでくれ

      いつか結ばれるより、