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服づくり現場の教科書 006 / 仕様書について

縫製仕様書は社内外問わず、ものづくりをするにあたって関わる人の共通言語として最も重要な役割を果たしています。
服づくり現場の教科書プロジェクトを立ち上げのきっかけは「絵型をちゃんと描けなくて、仕様書を書けない人が多すぎる。」という意見が一致したからでした。

まずは企画の仕事、特にデザイナーの仕事はどんなことだったかを初回の「企画の仕事って?」でおさらいしましょう。

仕様書は製品を作るため指示書、設計図です。設計図に乱れがあるとスムーズなコミュニケーションが出来ず、思うような仕上がりになりません。
重要な役割のはずの仕様書ですが、商社やOEMメーカーのデザイナーとして依頼を受ける場合、ファッションブランドから渡される仕様書を書き直していることがよくあります。理由は下記のような内容です。

・仕様書の辻褄が合わないなどの不備が多い
・依頼する生産背景に沿った仕様書にシフトする
・縫うのが現実的でない仕様は変更する
・どこで仕入れるか、品番や色番などをきちんと記載する

書き直すと転記ミスが発生したり、手間が増える一方です。円滑な取引が出来るよう、不備のない仕様書づくりを目指していきましょう。

このnoteは絵型やサンプルの写真なども入れてご説明していきますが、有料部分の最後に仕様書のフォーマット(エクセル)をダウンロード出来るようにしています。
これからブランドをはじめる方などにオススメです。ぜひご活用ください。

良い仕様書がもたらす効果

1)無駄なコミュニケーションが減る
サンプル作成・量産に取り掛かってから判明する不明点を解消するためのやりとりは、電話やメールで質問をしては返答を待つという時間の無駄があり、お互いにストレスになります。
誰が見ても分かりやすい仕様書は、パタンナーや生産管理、工場をはじめとしたサプライヤー側からの質問も最小限になり、業務効率が良くなります。

2)ミスを減らせる
大切なポイントがちゃんと指示出来ていると、まずサンプル段階でのミスが減ります。逆に指示漏れがあるとサンプルがちゃんと上がらないため、再度サンプル作成が必要になってしまうことがあります。

3)時間のロスが少なくなる
1ではコミュニケーションの時間の無駄、2はミスをリカバリーするための時間の無駄が発生します。このロスが少なくなれば製品の検討などポジティブな業務に時間を割いて、より良い製品作りが出来るようになります。

4)コストを最小限に抑えられる
当たり前のことですが再サンプル作成になると時間ロスはもちろん、サンプル代もその分多くかかってしまいます。
量産の製品にサンプル代をのせる(サンプル代として工場に支払うのではなく、量産値段に割り返して入れ込む)場合は、1枚あたりの原価も高くなってしまいます。量産枚数が少ない場合はとくに注意が必要です。
例えば、生地・資材・工賃・仕上げ費など全て含めて1枚あたり¥4,000の見積もりだったとします。仮にサンプル代が1枚あたり¥20,000、量産は100枚生産するとして…

・サンプルを2枚作る場合(20,000×2)÷100枚+4,000=4,400
・サンプルを5枚作る場合(20,000×5)÷100枚+4,000=5,000

3枚のサンプルの差で1枚あたりの原価が¥600も上がってしまうことになります。量産が100枚ではなく50枚だった場合、厳密には1枚あたりの見積もりは同じ¥4,000ではないはずですが、わかりやすく説明するために同じと設定して計算すると…

・サンプルを2枚作る場合(20,000×2)÷50枚+4,000=4,800
・サンプルを5枚作る場合(20,000×5)÷50枚+4,000=6,000

このように跳ね上がってしまいます。
何度もサンプルを作らずに済むのが理想的です。

5)製品の完成度が上がる
1stサンプルから高い精度で作成し、コストやデザイン面がフィットしていれば、量産までの流れもスムーズになります。
指示が的確であるとそれだけ良いものづくりが出来るということです。

パターン依頼書と仕様書の違い

デザイナーからパタンナーへ依頼するとき、パターンを日本で作成して工場に指示する場合と、海外工場でパターン作成もしてもらう場合があります。

日本でパターン作成する場合はパタンナーが仕様書まで作成するため、デザイナーはパターン作成の意図が伝わる依頼書を作成すればOKです。
パターン依頼書には、

・絵型
・寸法
・形の説明
・仕様図
・端始末
・付属表

の記載が必要です。

パターン依頼書

海外生産をしている低コストの商材は、パターン作成費を削減したり、スケジュールにゆとりのない中サンプルを作成する事があり、依頼先の工場にパターンも作成してもらうことがあります。日本人ではないパタンナーがパターンを作成する事がほとんどなので、パターン依頼書をさらに詳しく、なるべく図解で説明した仕様書を作成します。仕様の名称は海外工場でも理解してもらえることが多いのですが、共通用語ではない仕様もあるので、ひと目で分かるようにします。
社内のパタンナーの有無、生産国などの条件によって、デザイナーがどこまでの仕様書を作成しなくてはならないかという基準が変わってきます。
自分でブランドを始める場合は、意図の伝わりやすい国内のパタンナーに依頼する方法からスタートした方が、ちょっとしたニュアンスも汲み取ってもらいやすいのでオススメです。

では早速、実例を見ながらご説明します。
絵型も出てきます。絵型の描き方は下記のnoteからおさらい出来ます。

パターン依頼書 作成例

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2,838字 / 12画像 / 2ファイル

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