見出し画像

中級の心得(教授法)

初級も終わり、一段落。

初級と中級では何が違うのかについて書いていこうと思います。

初級の段階では主に”インプット”の訓練。もちろん”アウトプット”の練習もしますが、所詮は短文。短い会話のやり取りなどですが、中級以降ではもっと長い文章の”アウトプット”を中心に進めていきます。

中級以上では「話せること」「作文ができること」「自分の意見や考えをまとめて発表できること」が大切になりますが、ある程度進めていくと、逆に会話練習が少なくなるというジレンマがありませんか?
初級ではインフォメーションギャップやペアワークなどでペアやグループで練習ができていたのに・・・と。初中級ではまだしも中上級になると、クラス全体でのほどんどなく、作文や読解がメインになりがちです。「これでアウトプットができるようになるのか・・」と不安になる教師も少なくないと思います。

ズバリ、それでいいのです。しかし「ただ教師が読んで説明する。」だけではもちろん駄目です。何ができるのか、を書いていきましょう。

まずは、「シャドーイング」です。これは必須です。これは最重要項目といっても過言ではないでしょう。
語学の勉強をしたことが有る人ならばわかるかと思いますが、「シャドーイング」というのはCDや教師が読むのに合わせて学習者が後を追うように真似をするように発話することです。
教科書の「会話」「読解」部分でやりましょう。※できれば学習者にも自分で練習をさせたがよい。
これは慣れたらテレビ番組やラジオでもできます。

人は「真似」をすることで語学を習得します。人間の子どもも親の言うことの意味はわからずに「真似」をしています。外国人学習者も同様に教師やテレビの「真似」をさせることで正しい「アクセント」「イントネーション」を身につけることもでき、更には自然に「助詞」の使い方なども身につきます。

もう一度言いますが、自分で考えて文を作るのも大切ですが、正しい日本語を話すためには「真似」をすることが大切です。

次に「リピート」をさせることです。
理由は「シャドーイング」と同じで教師が読んだ直後、「アクセント」や「イントネーション」を忘れないうちに「真似」をさせるためです。これをしていない教師が意外と多いのです。

そして単語の違いの説明、学習者の国によっては日本語の表現が難しい。
たとえば「の」「こと」「もの」「わけ」これらには複数の意味があり、正しく使うことができないのです。教師がどんなときに使うのか、「文型」として入れてしまえばいいかと思います。
他にも「期待」と「楽しみ」。助詞で言えば「は」と「が」、副詞で言えば「全部」と「全部で」など、挙げればキリがないのですが、細かい違いの説明も必要です。
これらを説明したあとに、「日記」を書かせたり、授業前の軽い会話などで正しく使えているかどうかを教師が意識してください。

そして「読解」方法です。
中級に入り、難易度はドーンと高くなります。
コツは「文の中心」を見つけさせること。まず「文末」。そして「主題」または「行動者」を探させます。
みんなの日本語中級の第一課、「畳」を例にだしてやってみます。

日本に来た外国の旅行者が、部屋の中で最も興味を持つのは畳だそうです。(スリーエーネットワーク:みんなの日本語中級より引用)

上の文ではまず、
T:文の最後は何ですか。
S:畳だそうです。
T:トピック(主題)は?
S:「の」
T:そうですね。この「の」は何ですか。
S:連体修飾、「もの」の「の」です。(みんなの日本語初級38課)
T:そうです。「興味を持つものは畳だそうです」が文の中心です。じゃあ誰が興味を持つんですか。
S:外国の旅行者です。
T:どんな?
S:日本へ来た外国の旅行者です。

以上のように、文末→主題(または行動者)→修飾語というように、文の中心を見つけさせ、次に後ろから読むように意識させます。
だんだん慣れてくれば、スピードもあがり、単語がところどころわからずとも文の内容の80%はわかるようになるでしょう。

これは作文(アウトプット)でも役に立ちます。自分の言いたいことが「一番最後」、次にトピックや主語、それから修飾語を考えてから話せば、大体の文章は作れます。
これらの作業が頭のなかで素早くできるようになれば、会話もできるようになるという理論です。
もちろんこれができるようになるには長い年月と経験が必要です。そのための手助けをするのが日本語教師の役目です。

その上で、教科書の「〜は日本語で何と言いますか」「〜ってどういう意味ですか」などの文法を使って、教師やクラスメートに質問できるようになれば上達するスピードも段違いです。
つまり、教室内を「全て日本語」の環境にすることが大事なのです。
もちろん「正しい日本語」を使えれば一番良いのですが、それはまだ無理なので、せめて「〜が何ですか」とか「日本語以外」で発話するのをやめさせましょう。

そして上記の「正しい日本語」以外を学習者が使った場合、「教師は指摘するのか?」という問題です。
答えは「時々する」です。
「なんだそりゃ?」と思った方もいるかもしれませんが、教師は「指摘する部分」「指摘しなくても良い部分」を理解して注意していなければなりません。

次の項目にも書きますが、全ていちいち指摘していたら、学習者のやる気、自身を削いでしまいかねないのです。

「指摘しなくても良い部分」とは「発音やアクセント、イントネーション」です。場合によるのですが、完璧にできる学習者など中級の段階ではほぼいません。これは少しずつ練習してうまくなっていきます。
「指摘した方がいい所」というのは、やはり「単語の使い分け」「文末表現」などです。
学習者は依頼表現や、勧めたいときなどでも「〜〜ます」などを使いがちです。きちんと「〜〜てください」「〜〜たほうがいいです」と文末表現に気をつけて話させることが大切です。

最後に、上でも触れた「学習者のやる気、自信を削がない」ことです。
「情意フィルター」というのですが、「不安の少ないものほど言語の学習が進む」という仮説です。確かにいちいち指摘していたら学習者は話す意欲がなくなってしまいますよね。
それよりも褒めて、自信をつけさせること。または日本文化に興味をもたせ「勉強したい!」と思わせること。旅行で自分で使ってみて「楽しい!!」「通じた!!」などと意欲を出させること、更には教師自身も魅力を持ち、学習者が「もっとこの人と話したい!」と思わせることです。
ただ、褒めてばかりだと間違った日本語を訂正できなくなったり、学習者も勘違いしたままになる可能性もあるので、時には厳しく指摘することも大事でしょう。
言語習得にも「緊張」と「緩和」のバランスが必要ですね。

以上になりましたが、私の「日本語(中級以上)」を教えるコツでした。
拙い文章ですが、お読み頂きありがとうございました。



よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に 使わせていただきます。