【連載小説】「愛の歌を君に」#5 にらみ合いの果てに
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前回のお話:
13.<麗華>
家族のような関係になりたいと言った直後の出来事だっただけに、自分の発言がその現実――智くんが老人のような姿に見えた現象――を招いたような氣がして恐ろしくなった。
しかしそれは数分のことで、氣付けば智くんは年相応の姿でそこに居た。夢を見ていたのだろうか。けれど、拓海も同じ反応だったことを考えると、あたし一人の身に起きたことではなさそうだ。
「……悪い、心配を掛けてしまって」
智くんは目を伏せたまま言った