【連載小説】第四部 #17「あっとほーむ ~幸せに続く道~」君の未来に祝杯を
前回のお話:
33.<悠斗>
あんなに走ったのはおそらく高校のマラソン大会以来だろう。にもかかわらず、元野球部の面々と同じペースで走ることが出来たのは奇跡としか言いようがなかった。それもこれもまなのお陰……。心臓の鼓動を感じるたび自分が生かされていること、そして救われたこの命を全うしなければ、と思うのだった。
◇◇◇
心臓が全回復したこともあり、しばらく離れていたプールを訪れた。まなの発話開始、そしてオバアとの暮らしを終えたのを機に、減らしていたコーチの仕事もついに辞めたのでひと月近く泳いでいなかった。
泳がなくても案外生きていけると氣付いた直後は寂しさも感じたが、今はそのエネルギーを走ることや体操クラブ開業の準備に充てているので身体の調子は存外いい。それでもやはり、久々に水の中を自由自在に泳いでみると、ここが自分の居場所だ、と思わされる。氣付けば一時間、休みなく泳ぎ続けていた。
*
ひとしきり泳いだら喉が渇いてしまった。ソフトドリンクをがぶ飲みしようと自販機の前まで来てみたが、考えることはみな同じなのか、おれが飲みたいと思うソフトドリンクは軒並み売り切れていた。
飲めないと分かったら余計に喉が渇いてきた。窓の外に目をやると西に傾く太陽が見えた。時刻は午後六時を回ったところだ。
「バーは開店してるな……」
スマホを取りだしたおれは彰博に電話を掛けて呼び出すことにした。
*
彰博はすぐにやってきてくれた。バーの前で落ち合うと、妻の映璃に怒られたと言いながらも「君が誘ってくるときは何か話があるときだから」と急な誘いに乗ってくれた理由を教えてくれた。
「生憎だが、今日は本当に思いつきだ。何なら映璃と一緒でも良かったのに」
「そうなの? ……ま、エリーがいると話しづらいこともあるだろうから、このまま二人で飲もう」
おれの言葉を信じ切れない様子の彰博は、おれの背を押し入店を促した。指示されるまま、重たいドアを押し開ける。
「あれっ?」
入店するなり、懐かしい人物に出迎えられて彰博と顔を見合わせた。前マスターの今野氏が、かつてと同じ姿で立っていたからだ。
「お久しぶりです。お元気でしたか」
穏やかな口調も以前とまったく同じだった。
「いやぁ、それはこっちの台詞ですよ。今日はどうしたんですか?」
「今夜はマスターが休みでしてね。代わりに私が店に立っているというわけです。それにしても、今宵限りという日にお目にかかれるなんて思ってもみませんでした。本当に幸運です」
偶然とは言え、特別な日にやってきたようだ。彰博も「思いきって君の誘いに乗って良かった」と喜んでいる。今野氏に「いつものお席へどうぞ」と案内され、少し若返ったような氣分で腰掛けながら喉の渇きを潤す一杯を注文する。彰博も同じカクテルと軽食を頼んだ。
彼が背中を向けると彰博が話しかけてくる。
「……ところで、最近はずいぶんと調子が良さそうだけど、新しい仕事はうまくいきそうなの?」
「ああ。メインで動いてくれてるのはニイニイと大津さんだけど、秋のうちには開業できそうだ。おれも、心臓の具合が良くなったから最近は本格的に走り始めて体力づくりをしてるよ。そうだ、お前も入会しろよ。まなと触れ合いながら、自分の健康増進にも繋がるぜ?」
「うーん……。素晴らしいクラブだとは思ってるんだけど、如何せん兄貴がいると思うとやりづらくてね……。僕だけ厳しく指導されそうで……」
「大丈夫だって」
「いいや、悠は兄貴の本性が分かってない。僕がこれまでどれだけ貶されてきたと……」
他愛ない話をしているところへ今野氏が直々にカクテルを運んできた。
「ジントニックでございます。お食事はもう少しだけお待ちくださいませ」
「ありがとうございます」
「ああ……。かわいい女の子ですね。野上様のお孫さんですか?」
今野氏は、彰博がかばんに付けている写真付きキーホルダーを指さして言った。客の持ち物から話を広げるテクニックは、おれも今後活用していかなければいけないのかもしれない、などと思いながら二人のやりとりを聞く。
「ええ……。二歳と半年になります。最近はおしゃべりが上手になって、遊びに来ると本当に賑やかですよ。職業柄話を聞くのは得意な方ですが、娘も、ここにいる鈴宮もおしゃべりなのでこの頃は耳が忙しいです」
「いいじゃありませんか。それだけ野上様が話し相手として信頼されている証なのですから」
「そうですね。幸いなことに、娘夫婦は改築した鈴宮の家で暮らしていて自宅からすぐの距離なんですよ。なんだかんだで今の環境は氣に入っています」
「本当に信頼なさっているのですね、鈴宮様のこと」
「まぁ……。今は世話の焼ける息子だと思って接しています」
「息子……! そんなにも親しいご関係とは羨ましい……」
視線を向けられたおれは、照れくささを隠すように反論する。
「いやいや、友人から格下げですよ……。今じゃ言われ放題でヘコむことも多いんですから」
「そう仰いながらも嬉しそうですよ? 鈴宮様もそんな野上様がお好きだからこそ、一緒にカクテルグラスを傾けるのではありませんか?」
「勘弁して下さいよぉ」
顔の前で手を合わせると、今野氏は「失礼致しました。それではごゆっくり」と言ってカウンターの向こうに帰って行った。
「ふぅ……。聞いたか? おれがお前のこと、好きだってよ。笑っちまうよな」
「うーん……。好き、という言葉はとても万能だし理解しやすいワードだけど、ウン十年の付き合いを経てたどり着いた感情を『好き』のひと言で表すのは不可能だろうね。とはいえ、僕らだって互いに抱いている感情を適切に表す言葉を知らないんだから仕方がないよ」
「それもそうか……。ああ、やっぱり暑い日はロングに限るな」
この話に終止符を打つべく口にしたジントニックがおいしくて一氣に飲み干してしまう。彰博も同様に、二くち、三くちで飲みきる。程なくして料理が運ばれ、それを食べながらほろ酔い氣分で思考する。
確かに氣持ちを言葉で伝えるのは大事だと思う。だけどありふれた単語を連発するくらいなら言わない方がマシだ、とも思う。そういうのは言わなくたって伝わるもんだ。いや、伝えたいからそばにいるとも言えようか。とりわけ、言語能力の低いおれは言葉より行動で示す方が氣持ちを伝えられる。例えばこうして飲みに誘うように。
「僕が君とグラスを傾ける理由はただ一つ。君の本音を聞くためさ」
おれの内言を聞き取ったかのように彰博が言った。
「そんなにおれの本音が聞きたいかよ……」
「何しろ君は、大事なことほど内に秘めてしまうからね。義父としては世話を焼かずにはいられないのさ」
「ふん……。お前だって同じだろうが」
「だからだよ」
「…………?」
「僕らは人生で挫折を味わえば味わうほど同じ轍を踏むまいと臆病になってしまう。反論さえも恐れ、黙してしまう。それが自分の首を絞める行為だとも知らずに。……奇しくも、僕にそのことを教えてくれたのは君だった。君がここに誘い、本音を聞き出してくれなければ、僕はいまでも透明な壁越しに君と接していただろう。……顔を合わせていれば、いつも会話をしていればわかり合えるなんて幻想だよ。人はどこまでも自分を偽れる。ニコニコしながら胸の内では毒を吐いている人なんて、ざらにいる。僕が、そうだった……。だけど今はやめた。たとえ酒の力を借りたとしても、君の前では素の僕でいたい。だから君にも、素の君をさらけ出して欲しいと思ってる」
「ふん……。めぐとの結婚を勧められた頃から、少なくともおれは、お前には本心を言ってきたつもりだけどなぁ」
「それが僕のエゴから来た発言だったと打ち明けたのは、母が君の家で世話になりたいと言い出した日だった……。その母も亡くなったんだよね……。未だに信じられない……」
オバアのことが話題に上り、あることを思い出す。
「そういえば、もう秋の彼岸は過ぎたのか……。今年はまだ両親の墓参りをしていなかったな……」
亡き愛菜のことが頭にあるうちは欠かさずしていた墓参りだが、今年はまなとの実生活と沖縄訪問、そしてオバアの死が続いたこともあってすっかり忘れていた。少しばかり焦りを感じていると彰博に提案される。
「次の週末でよければみんなで一緒に行くというのはどうだろう? 実子の愛菜ちゃんとの過去にケリを付けることができた報告は、みんなでした方がいいんじゃないかな?」
「そうだな……。愛菜の死にとらわれていたことは両親も心配していたし、めぐや翼にも世話になったからな。もちろん、お前や映璃にも。……墓参りに行くなら、お袋が好きだった和菓子を墓前に供えよう」
「ああ、あそこの和菓子は僕の母も好きだった。本当においしいよね」
「って言うか、この街の人間はみんな好きだろう?」
「そうだね」
「……この街に戻ってきて本当によかった。あの日、お前がおれの話を黙って聞いてくれた恩は一生忘れない」
「大袈裟だなぁ……」
真面目に言ったのに、彰博はクスリと笑った。
「お礼なら、酒癖が悪いと知っていながらいつでも受け容れてくれるこのバーに言ったほうがいいね」
「それは言えてる」
おれは早速、今野氏を呼んだ。長年の礼を言うと、彼もまた「お礼を言われるようなことは何も……」と謙遜した。
「引退前にも申し上げましたが、感謝しているのは私の方。ですが、鈴宮様がこのバーに救われたとおっしゃるなら、私もバーテンダー冥利に尽きます。また時々こうしてシェーカーを振るのも悪くないかな、などと思ってしまうほどに有り難いお言葉です」
「ぜひそうしてくださいよ。そしたらまた二人で飲みに来ますから」
「考えておきましょう。……グラスが空いていますね。次のカクテルはお決まりでしょうか?」
「それじゃあ……」
「マティーニを二杯。リンススタイルで」
おれが一瞬考えを巡らせた隙に彰博が勝手に注文した。
「お、おい……」
「かしこまりました。銘柄のご指定は?」
「ビーフィーターで」
「承知しました」
今野氏は困惑するおれなど氣にも掛けずに注文を受け、カウンターの奥に下がっていった。
「……ったく。勝手に頼みやがって」
「君が今野さんにお礼を言うのを聞いて、せっかくだから君と最初にここで飲んだカクテルを頼もうと思ってね。悪くはないだろ?」
「えっ、覚えているのか……?」
「君に潰されたカクテルの名はちゃんと覚えてるよ」
「…………」
数分経つと、マティーニが運ばれてきた。
「もしかして、今野さんも覚えていたんですか? このマティーニがおれと彰博の最初の一杯だったことを」
疑問に思ったことを思いきって聞いてみると「いえいえ。私は注文通りに作るだけ。思い出に残るかどうかはお客様がお決めになることですよ」と、にこやかに返された。
「とはいえ、お客様の思い出作りのために酒を提供してきた私にとって、『あの時のあのカクテル』を注文されるときほど嬉しいことはありません。もっとも、引退した今は孫子との思い出作りに専念していますけど、今日は特別です」
「孫……」
先ほどはこちら側の話だったが、次は今野氏の孫の話になったので、すかさず体操クラブの宣伝をする。今野氏は「面白そうですねぇ」と興味を示してくれた。
「鈴宮様も新しい人生を歩まれているのですね。孫と相談してみます。早いもので、初孫はもう四歳。元気が有り余っていて困っていたところです」
「そういうお子さんは大歓迎です。ぜひいらして下さい」
「では、次は私が鈴宮様のお世話になりましょう。お手並みを拝見させていただきます」
「お手並み……」
絶妙は返答をされて言葉に窮する。その様子を見ていた彰博が端でクスクスと笑い、グラスを持ち上げる。
「悠。君の前途を祝して杯を上げようじゃないか」
「……まぁ、何はともあれ、飲むか」
傾けたグラスが交わり、澄んだ音が響く。口の中に広がるジンの味は当時と変わっていないはずだが、おれが飲み慣れてしまったせいか、確かにあの頃感じたはずの飲みにくさはもはや無く、時の経過を感じさせた。
あの頃元気だった両親はもう、いない。こんなふうに酒を飲むこともついぞ無かった。しかし実の親と出来なかったことは、彰博の両親を通じて叶えることが出来た。恵まれた後半生は彼らなくして語れない。
(お袋、親父。おれが幸せに生きてる姿を墓前に見せに行くよ。『家族』を連れて……)
のぞき込んだグラスの中に映った自分が一瞬、あの頃の親父の顔に見えた。
◇◇◇
市内の大きな霊園に鈴宮家の墓はある。朝から残暑が厳しいが、汗を垂らしながらも墓を掃除し、花や線香、供え物をする。
「まなたんのジューチュもあげる!」
おれたちの真似をするかのように、まなが自分用のリンゴジュースを墓前においた。その無邪気さに全員ほっこりする。まなにはまだ、おれの両親の写真を見せたことも話したこともない。しかし、まなの前世である鈴宮愛菜は会ったことがあるので、もしかしたら墓に眠っているのが鈴宮愛菜の祖父母だということが魂レベルで分かったのかもしれない。おれの考えすぎかもしれないけれど。
「大勢で来たからびっくりしてるだろうな。……今日は両親の姿は見えないの?」
翼に言われて辺りを見回す。が、それらしき影は見当たらない。
「最近はまったく見なくなったから、もう成仏したんじゃないかな。もしかしたら、まなが生まれ変わるタイミングで両親も次の人生を歩み出したのかもしれない」
「なるほど。そうだといいな」
「たとえ成仏したとしても、悠が生きている限り悠の中でご両親も愛菜ちゃんも生き続ける。私の育ての祖父母が私の中でまだ生きているように」
映璃の言葉が妙に心にしみた。
「映璃は強いな……。そうやってちゃんと家族の死を前向きに捉えている」
「家族がそばで支えてくれるおかげよ。私一人だったらおそらく乗り越えられなかった。……悠だってそうでしょう?」
「ああ……。そうだな……」
最初こそ色々あったが、ここにいる野上家の面々がいなければ今のおれはいなかった。母の病死後、父と一緒に暮らすこともなかっただろうし、「新しい家族」を持つこともきっと、なかった。
「あー、おとーさんがないてる!」
「えっ……」
まなに指摘されて思わず頬を触る。てっきり汗だろうと思ったのに、出所をたどると目から流れてきたものだと分かった。その時、めぐが墓前に向かって言う。
「悠くんのお父さん、お母さん、そして愛菜ちゃん。悠くんはもう大丈夫です。野上家の一員として、わたしたちが一生支えていきます。だから、安心してください。今日はその報告です」
「めぐ、ここでそんな報告をしなくても……」
「いいじゃん。今言いたいんだもん。悠くんにはいつも助けてもらってるし、悠くんのいない生活なんて考えられないからねー」
「そうだぜ。まなのもう一人の父親って意味でも、悠斗は野上家には欠かせない人間だよ」
「翼まで……。今日は鈴宮家の墓参りだぞ? 何で野上家の話になる?」
「君のご両親にも、悠が我が家の一員だってことをきちんと報告するため……かな?」
娘夫婦の言葉をとりまとめる形で彰博が言った。
「ったく……。お前らは……」
母の病気の知らせを受けて帰郷した頃のおれは「愛菜の命一つ救えない、こんなおれに何の価値があるのか」と自分を責め続けていた。しかしそのおれを受容し、後々まで家族同然に扱ってくれた彰博一家がおれの荒んだ心を癒やしてくれた。彼らにはどれだけ感謝してもし尽くせないほどの恩義を感じている。言葉で伝えるのが苦手なおれでも感謝を伝える方法があるのだとしたら……。
おれは涙が伝った顔を一同に向けて言う。
「……ここでこんなことを言うのは場違い、いや、罰当たりかもしれないけど、今言うよ。いつの日にかおれの命が尽きても、どうかこの墓には入れないで欲しい。やっぱりおれにとって大事なのは『今』だから。お前らとの暮らしがすべてだから。おれの口から、お前らと一緒の墓に入れてくれ、とは言わない。だけど、おれの魂がここにあるうちはずっと一緒にさせてほしいんだ……」
ぎょっとするような発言に最初は驚きの表情を見せていた一同だったが、おれの真意を汲み取ったのか、彼らは何も言わず静かに頷いた。
「いいとも。僕が君を我が家に引き入れた張本人だからね。君の想いは僕がちゃんと引き受けるよ。そのためには、死の直前まで今の関係性を維持しなければいけないけれど」
「大丈夫。お前とうまくやるコツは心得てる」
グラスを傾ける仕草をすると、彰博も空中でグラスを交わす仕草をしてみせた。
「まなたんも、かんぱいするー!」
翼に抱っこされたまなが「かんぱーい!」と言いながら腕を伸ばす。それに続くように映璃とめぐ、翼も同様の仕草をする。
「あー! みてパパ、ママ! ひいじいとひいばあがいる!」
「えっ……」
まなの言葉におれたちは顔を見合わせた。
「見えるのか……?」
「ん! あっち!」
まなが指さした方を見ると、墓石の脇に、確かに両親の姿があった。思わず一歩踏み出す。が、父はそれを制するように手のひらをこちらに向けた。
『己の弱さを認め、必要があれば周囲に助けを求める……。それが出来るようになったお前はもう弱い男などではない。それに氣付かせてくれたこの家族を、今を大事にしなさい。父さんたちのことは時々心の中で思いだしてくれればいい。愛菜ちゃんと同じように』
『そうよ。だいたいね、あんたが死んでこの中に入る頃にはだーれもいないんだから、ただ寂しいだけよ。寂しがり屋のあんたのそばには、寂しさを紛らわせてくれる誰かがいてくれた方がいいと思う。同年代のパートナーがいない代わりに、あんたにはこんなに素敵な家族がいるんだもの。絶対にそうしなさい』
「何だよ、久しぶりに出てきたと思ったら……。おれがこの墓に入らないって宣言するのを聞いても寂しがらないのかよ?」
『寂しがったところで、お前を引き留められないことは分かっているさ。何しろ、ずっと見守ってきたんだからな。……生かされていることに感謝して、達者で暮らせよ』
「ああ……。そっちもな……って言うのはおかしいか」
『そんなことはないわ。実はあたしたち、これを機に生まれ変わるつもりでいるの。だからもしかしたら、この世のどこかでまた会えるかもしれない。会っても氣がつかないとは思うけど、きっとまた悠斗に会えるってあたしは信じてる』
『父さんだってそう信じているさ。だから悠斗は悠斗の好きに生きなさい。いいな?』
「分かった……」
返事をしたら鼻の奥がツンとしてきた。目頭を押さえると、案の定、母親に指摘される。
『あーあ、また泣いちゃって、みっともない』
「う、うるせぇ……。こいつらの前ではいいんだよっ……!」
「まなたんが、いい子いい子してあげるからだいじょーぶ!」
どうやら亡き両親の声がはっきり聞こえるらしいまなが、泣いているおれの頭を撫でようと、翼に抱かれた位置から手を伸ばした。
『野上まなちゃん。悠斗のこと、よろしくね』
『お父さんと仲良くな』
「ん!」
両親の言葉に、まなは力強く頷いた。それを見て安心したのか、二人は手を取り合い、「またいつか会う日まで」と言い残して消えていった。
続きはこちら(#18)から読めます
※見出し画像は、生成AIで作成したものを使用しています。
<年末年始のお知らせ>
年内の投稿は本記事で最後になります。「あっとほーむ~幸せに続く道~」第四部、年はまたぎますが、あと何回かで締めようと思っています(彼らの物語は続く予定)。2023年も大変お世話になりました😊
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