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ワッパーの注文体験がよかった

近鉄の急行に10分乗って、珍しくバーガーキングの店舗に並んだ。

順番を待ちながら、はたとモバイルオーダーの存在に気づく。列を外れて、アプリをダウンロードする。会員登録、クーポン一覧から手頃なメニューを選択、現在地から店舗を検索、クレジットカード番号を入力。この間、体感5分もかかっていなかったと思う。なんてスムーズなデジタル体験だろう。

バーガーキングのアプリは、丸ゴシックで統一されたフォントがかわいく、薄ベージュの背景と焦げ茶色の文字のコントラストもはっきりしていて、一切迷うことなく使うことができた。ファストフードのアプリといえばマクドナルドが先行している印象が強いけれど、似せるところは似せ、差別化するところは差別化して、独自の操作感を備えた使いやすいアプリになっている。

数多くの注文系アプリが存在する現在、アプリの制作に携わるデザイナーや開発者は、国内外の先行例を山ほど研究して、共通する「パターン」に沿ったUIを積み上げていっているに違いない。消費者向けの注文系アプリは、優れたUIであることが売上に直結するはずだから、相互作用的に、加速度的に、ユーザー体験がよくなっていく。体験が良いアプリを使う機会が暮らしの中で増えていくのはありがたい。いい時代に生きていると思う。

ところで、バーガーキングは2021年初にグローバルでVIのリデザインを行っている。コロナ禍2年目、アプリとドライブスルー体験の改善に集中投資がなされていた時期だ。

1999年から20年近く使われていた、青い三日月型のあしらいがあるロゴを廃止し、そのさらに一つ前のロゴに戻して、バランスを調整した形になる。KINGのKは少し太って丸みが強調されている。ハインツやバドワイザーを手がけるデザインエージェンシー、Jones Knowles Ritchieの仕事である。

日本語フォントには、フリーWebフォントのM PLUS Rounded 1cが採用されているが、これが新VIのぽっちゃりした欧文フォントとちょうどよく合っている。丸ゴシックを一貫して使っていて違和感がない日本語の画面はけっこう珍しいと思う。成立させるために、細かい調整が山ほど入っているのではないだろうか。


きょう利用したイオン内の店舗は、快適なお一人様席を完備した美しい店舗だったが、しかし「旧デザイン」の内装だった。VIリニューアルは、デジタルコンテンツにはすぐに反映できるが、地方都市の店舗内装を変えていくにはコストと時間がかかる。この店舗がいつ新デザインに模様替えするのか、定期的に通って観察してみたいと思った。

現在のモバイルオーダーは、受け取りの時だけまだ人と人との会話の余地がある。店員さんに「ありがとう」を伝えることはできる。デリバリーまでも完全に機械的だったらあまりに無機質だと思うけれど、しかし、早晩そうなっていくだろう。デジタルが加速する店舗の体験とコミュニケーションの変化を、見逃さないようにしたい。

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