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道の駅の車中泊はグレー?

にんにんさんが、道の駅で車中泊禁止と表現されていることを問題視したのは今から4年近く前、関西の車中泊旅行で奈良県の道の駅飛鳥を訪れたことがきっかけだと思っています。
にんにんさんたちは、夜に道の駅飛鳥に到着しましたが、そこに車中泊禁止と違反者には5万円の過料を科すという内容の書かれた看板がありました。止むを得ずにんにんさんたちは別の車中泊場所を探すことになりました。道の駅飛鳥は設立以来数年間、この看板を設置しており同じように車中泊をあきらめた人は多く居たはずだと思います。道の駅飛鳥のこのルールは管理者である奈良県明日香村が条例でそれを定めていました。

当時車中泊がブームになっており、道の駅の車中泊利用者がどんどん増えていました。それは歓迎されるべきことのはずですが、それにともなって一部の利用者のマナー違反が取り上げられるようになりました。破損、汚損、盗難、ごみ放置、キャンプ行為といった明らかな迷惑行為のほか、長時間滞在、車上生活が車中泊利用者によるものとして、別の道の駅でも管理者が車中泊禁止の看板を立てることが少なからずありました。

さらにYoutubeやメディアでも利用者のマナー問題が取り上げられ、それと関連付けて道の駅の車中泊が禁止であるとか、グレーであるという主張が多く出始めました。無料の河川敷のキャンプ場などがマナーの悪さで閉鎖されたことを例示して、やがて道の駅の車中泊も国交省がグレーの状態から公式に禁止と言うのではないかという意見もありました。
「マナーが悪ければ仕方ないなあ。」
「管理者が言うならそれに従うしかないだろう。」
「現場を知る管理者に権限が与えられている。」
「インフラのタダ乗りは遠慮しろ」
なんとなくそのような考え方がまん延していて、ことさらに異論を唱える人も居ませんでした。そんな風潮が作られていたということです。その風潮の底流には、道の駅関連のビジネスがあるのかもしれませんが、そこは憶測の範囲でしかありません。ともかく道の駅の車中泊はグレーというような感じです。だから、夜間運転で疲れて道の駅に着いて、「車中泊禁止」の表記があれば、多くの善良な人は
「ああ、ここは駄目なんだ」
とまあ、がっかりしますが無理にその道の駅で車中泊しようとはせず、別の場所を探します。誰も公共施設がルール違反などをするとは考えません。仕方ないと思って他を探そうとします。しかし、

「それは違う。」

とただ一人、間違いに気づいたのがにんにんさんだったのです。誰もことさらに疑わず、半ば当然のこととあきらめていたのですが、にんにんさんは違いました。
道の駅の制度やコンセプトに照らしたとき、それは休憩のために作られた施設であり、決してそれを躊躇させるような表記があってはならない。そしてさらににんにんさんが実際に150箇所の道の駅を回って見てきた実態に照らしたとき、マナーを守っていない人は確かに居たが、それは本当にごく僅かであり、ごくまれであり、夜の道の駅も皆が普通に整然と静かに車の中で寝ている。マナーの問題は連休などの混雑時やごく一部の人の限られた問題であり、それは普段の道の駅の車中泊とは全く関係がない。むしろ管理上面倒くさいだけの別問題であると気づいたのです。

「公共施設のルールには従うべき」

多くの善良な利用者はそう思います。
しかしその道徳観に乗っかって、自分ルールを決める管理者が居る。
さらにその管理者が地方自治体ということもある。
その公(おおやけ)がもっと根本的なルール(道の駅のコンセプトや登録要件)に違反していた!
私はそんなこともあるのだとびっくりしたことを思い出します。

公共施設がルール違反をしている

にんにんさんはそれをはっきりと公言し、管理者や行政と交渉しました。

動画の中でにんにんさんは、
「行政のやりたいことをやらせるのではなくてそれを監視するのが私達の役目。」
と言っています。にんにんさんの地道な説明や交渉の末、管理者である明日香村村長から公式に謝罪と看板訂正の文書が届きました。禁止事項として「車中泊」という表記はなくなり、「宿泊場所として利用すること」に変更されました。もともと道の駅飛鳥の規則は、道の駅が開設される半年前から明日香村の条例で決められており、禁止事項として「車中泊」が書かれていました。その文言が「宿泊場所として利用すること」に改められたということです。にんにんさんが、条例を改めさせたということです。
道の駅飛鳥の管理者は奈良県の明日香村という地方自治体です。公(おおやけ)である地方自治体の言うことにも、とんでもない嘘があるという大きな問題の存在を、にんにんさんの活動で初めて気づいた人も多かったのではないでしょうか。私もそうです。にんにんさんの行動が「皆に気づきを与えた」ということが、この問題を浮き彫りにしました。それこそが最も重要な功績だと思います。多くの善良な人には「郷に入れば郷に従え」という道徳観があり、道の駅を無料で利用するのであれば、その道の駅の管理者の意向や価値観に合わせた行動を取るべきだと思うでしょう。ところが、その道徳観を利用して、車中泊禁止。車中泊すれば管理者の権限で過料という罰まで科すことができる。そんなとんでもない地方自治体の条例や自分勝手な独自ルールで管理する道の駅が現実に出てきたわけです。そんなことをすれば本来の道の駅の要件を満たさないことになります。例外的に瀬戸大橋記念公園のように、夜間に暴走族のたまり場になって管理上の問題が生じた場合は特別なルールが決められている場合もあります。その場合も利用制限など道の駅のコンセプトにかかわることをするときは、管理者は国交省に対策の方法を上申する立場にあり、国交省が認めた範囲で、夜間利用の制限をすることになります。あたかも管理者に大きな権限があり、管理者が都合のよいようにいくらでも独自のルールを決められるというようなことをもっともらしく言う人がいますが、そんなことがまかり通れば、もはや道の駅は公共施設としての体(てい)をなしません。にんにんさんはそのような風説の流布に異を唱え、多くの人に気づきを与えました。このことは非常に大きな功績です。
税金が投入されるところにはコバンザメのように関連ビジネスが群がってくる。それが世の常です。にんにんさんがこれを言わなければ、行政と癒着するような道の駅関連ビジネスにも、いいように利用される可能性だってあったのではないかと思います。

にんにんさんは、道の駅飛鳥の他にも、不適切な看板や表記がある道の駅と交渉して是正する活動をずっとしています。国交省のQ&Aにある「宿泊目的ご遠慮」の文言を拡大解釈し、道の駅に「車中泊禁止」の表現のチラシやポスター、看板などがあれば、それは休憩をためらわせる間違った自分ルールであると指摘してきました。道の駅の管理者はもとより各ブロックの道の駅連絡会や国交省の地方整備局とも交渉し、是正してきたのです。是正した道の駅の数は165箇所以上にものぼります。
私たちは、現在普通に道の駅で普通に車中泊できていますが、もしもにんにんさんがこの活動をしてこなかったら、このような現状ではなく多くの道の駅で車中泊することができない状態になっていることは想像に難くありません。
このように、にんにんさんの功績は計り知れないほど大きいです。
にんにんさんのツイートに三桁のイイネがすぐに集まるのは、その活動に感謝している多くの物言わぬ支持者が居るからだと思います。

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