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Culture meets Nature_桜の皮を加工する話

わたしは自然観察が好きです。なかでも手間と時間がかかるのですが、工芸品を真似して、自然のものを「加工」するのが好きです。わかりやすい例だと、ヤマグワの実でジャムをつくるとか、果実酒をつくるとか。料理だって加工ですものね。

今回は料理ではなく、桜の樹皮の加工と採集のお話です。

運良く、剪定後の新鮮な桜の枝が手に入ったので、皮をむいてみました。

「な、なぜ皮をむくの…?」と声が聞こえてきそうですので、説明をば。

木の皮、つまり樹皮は、古今東西でさまざまな道具の材料として使われてきた経緯があるのです。きっとあなたも見たことあるはず…

ほら、雑貨屋さんに樹皮で編まれた素敵なバスケットがありませんでしたか…?

出典:https://store.shopping.yahoo.co.jp/omame/kurumikago04.html

ほかにも、かつてお侍さんが雨の中を走る時に羽織っていた蓑(みの)は、多くが稲藁を編んだもだったそうですが、なかにはシナノキの樹皮を使ったものもあったそうです(※1)。

オオヤマザクラの皮は秋田県では樺細工(かばざいく)の材料として好んで使われ、茶筒などの品々が有名です(※2)。

ほかにもアイヌの方々がマキリ(小刀)の鞘の補強に使ったという伝承が残っています(※3)。

僕はいまのところ具体的に何か作りたいものがあるわけではないのですが、身近な木から生活の道具の材料を取るという、ただそれだけの体験をしたいという気持ちがあったのです。いまは多くのものが化学繊維に置き換わっているので、なかなかそんな機会がないですから。


ナイフで樹皮に切れ目を入れ、マイナスドライバーで少しこじ開けて、後は指を入れて隙間を作っていく…。内皮の湿り気を感じながら、スルスルと面白いくらい簡単にむけていきました。

ほのかな桜の香りが楽しいし、内皮の裏側の模様(こういうのも木目というのか?)が鱗状でとってもかっこいい。

作業をしているうちに、子どものころ山で杖になりそうな枝を拾ったときに「(皮が腐ってむけた)つるつるの枝はあんま見つからへんから、エエやつやねんで」と友達と話したことを思い出しました。

何に使うでもない目的のない作業でしたが、手触りや嗅覚が刺激され、なんだか長く続いてきた日本のいとなみに触れた気がして、楽しいひとときでした。

※記事タイトルの「Culture Meets Nature」は、かつて催されていた、筆者が大好きな博物館の展示「Where Culture Meets Nature ~日本文化を育んだ自然~」をモデルにしました。
https://www.hitohaku.jp/infomation/event/legacy-kyoto2019.html

【参考文献】

※1 東日本における樹皮利用の文化 加工技術の体系と伝統

https://minpaku.repo.nii.ac.jp/・・・

※2 仙北市 ホームページ 樺細工について

https://www.city.semboku.akita.jp/sights・・・/densyo/kaba.html

※3 アイヌと自然 デジタル図鑑 アイヌ民族博物館

http://www.ainu-museum.or.jp/siror/densho/?241645596&ca=&os=10&kw=&book_id=P0205&page=book


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