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Aro/Aceの教科書

一時期、アロマンティック/アセクシャルを題材にした作品を重点的にチェックしていた。ヘテロセクシャル至上主義にもロマンティックラブイデオロギーの礼賛にもうんざりしきっていたのである。Aro/Aceが恋愛もせずセックスもせず、結婚もせず子どもも作らず一人で生きていく姿を探していた。
今はもう僕の中で肯定感を育むことができたので外的に表現物を求めることも無くなったが、とりあえず迷える同士はこれを見とけば良いんじゃないという作品を挙げておく。


アセクシャルってつまり何なの?というレベルならまずはこれ。当人にとっても有用だが、身近な存在にアセクシャルを公言している人がいてちょっとどうしたら良いのかわかりませんという状態の人にこそおすすめだと思う。ほぼ全てのアセクシャルもやもや事例が網羅してある。翻訳物ではあるが、当事者がムカつくこと・傷つくことについてはほぼ世界共通だよね。


作者がAceスペクトラムかも、と公言しているので当事者にとっては共感しやすい物語になっている。主人公のチカが恋愛性愛に対してキショ…とか怖…とか感じた上で「普通って何だよ」と悩みながらAro/Aceについての知識を獲得し(むしろこの部分が作品の中心と言っても過言ではない教科書っぷりである)、自己理解を深めていく話である。漫画なので大変とっつきやすいという点から教科書認定した。


ちなみに僕は潔癖症・性嫌悪ありのAro/Aceで離婚歴がある。反出生主義に近いのでもちろん子どもはいない。社会人として労働し、単身で暮らしながら友人たちと趣味に没頭している時に幸せを噛みしみている。
恋人とか家族とか子どもがいない人生に、一体どうして、誰に対してえも言われぬ申し訳なさを感じていたのかたまに考える。僕の場合は「明文化されていない社会規範」であると思う。一時それに従ってみたら多大な苦痛と損害を被ったので見事に騙されたなぁ〜と振り返るが、この罠にかかって余計なコストを支払う同士被害者が一人でも減ることを願うばかりだ。

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