遺書

『愛してほしいって、本当はずっと思ってた
苦しくて泣きそうな夜に煙草は優しくて、どれだけ堪えても結局だらしなく流れ落ちる涙に言い訳をくれる

嘘も強がりも、生きてくるには必要なことだったの
綺麗な君に共感なんてされたくない
全部捨ててきたつもりで笑っても、視線を落とせば足元に伸びる影が渦を巻く
何処までもついてまわるんだって
きっと、この先も、ずっと
正しさで私を突き刺すのなら、正しい道へ手を引いてよ
一人で背負って歩き続けられるほど私は強くはなれないから

失ったものの数だけ自分が死んだような気がして、叫び出しそうな喉を焼き切るの
他の誰かに絞められる首なんかもう残ってない
一人で眠るベッドは冷たくて、いつも暖めてくれる誰かを探している
初めましてと共に与えられるお金と愛情に似た欲は、こんな私にはちょうど良かったのかもしれないね
その瞬間私は確かに世界に存在していたという錯覚
いつだって本物よりも嘘の方が優しいの
間違いだらけの私が正しくある為の毒

理想の自分も望まれた役割も演じきれないから、お母さん、あなたの言うとおり私は出来損ないなのでしょう
お前なんて生まれてこなければって、それに抗ったのがきっと最初の間違い
ただ生きているだけのつもりだったのに、それすら罪ならもっと早く教えてほしかったな

背負わされた烙印が毎晩私を嘲笑うから赤が嫌いになりました
傷だらけの白い腕が赤い海に私を引き摺り込んで、沈む私を抱き締める
赤子の泣き声で夢から覚める深夜
寂しくて仕方ないのに誰にも会いたくなくて、部屋でひとり空虚なからだを抱き締める
私は悪くないって、心からそう思えないのはきっと呪い

小さい頃の夢は正義のヒーローだったのに、強くて優しい人になりたいのに、張りぼての武装はすぐに剥がれ落ちるから私には狼少年がお似合いなんでしょう
本当はただ傍にいてほしかっただけだよ
愛して、も
許して、も素直に言えないから下手くそに笑って誤魔化すの

火の消えた煙草を羊の代わりに数えてまたひとつ、夜はまだ明けない
消えていく私をどうか忘れないでください。
それが私の最後の我儘 』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?