【短編小説】雨宿主
大工の亀吉は村外れの寺の修繕を終え、のんびり帰る道中だった。サワサワサワ。笹の葉が風と雨に揺れる音がする。
生暖かい風が背を押すと同時に雨が亀吉を濡らした。初めこそ温く優しい雨だったものだから、濡れながら歩けばいいと呑気に歩いていたが、次第に雷が轟き冷たい大粒の雨が降り出した。
風邪をひいては困ると、走り始めたが亀吉の住む長屋まではまだ遠く雨に打たれて走るのでは息も続かない。ふと、今朝、寺までの道中の斜面に洞穴に祀られた祠があったのを思い出した。あそこなら、雨宿りができないだ