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【高校数学】階差数列で数列の一般項を求めるときn=1でも成り立つことを書くのが面倒臭い件

階差数列のやつに対する疑問

数列の一般項を求める問題で,階差数列による手法を使うものがあります.
その際,まず$${n\ge 2}$$で一般項を求め,最後に$${n=1}$$のときにも成り立つことを確認し,解答が終了します.次のページをご参照ください.

階差数列の意味と、もとの数列の一般項を求める方法

しかし,普通に生きていて出会う練習問題は,$${n\ge 2}$$で求めた一般項が$${n=1}$$のときも成り立つものばかりなので,何のための場合分けなんだろうかと疑問に思わなくもないです.ぶっちゃけ,わざわざ書いて確認するのは面倒臭いです.ところが,実際に場合分けが必要になるものもあるようです.次のページをご参照ください.

数列11 階差数列,n=1のときは必ず成り立つか?

どうしてほとんどの場合,$${n\ge 2}$$で求めたものが$${n=1}$$でも成り立つのか,そして,そうならない例はどんなものがあるのか,考えてみたいと思います.

階差数列を思い出す

まず上記の1個目の参照ページの最初の数列を題材にして,思い出しをしてみます.

問.次の数列の一般項$${\{a_n\}}$$を求めよ.

$${1\quad 2\quad 5\quad 10\quad 17\quad 26\quad\cdots}$$

解答.この数列の階差数列$${\{b_n\}}$$は

$${1\quad 3\quad 5\quad 7\quad 9\quad\cdots}$$

である.よって,$${b_n=1+(n-1)\cdot 2=2n-1}$$である.

ゆえに,$${n\ge 2}$$のとき,

$${a_n=a_1+\sum_{k=1}^{n-1}b_k}$$
$${=1+\sum_{k=1}^{n-1} (2k-1)}$$
$${=1+\frac{1}{2}(n-1)\{2\cdot 1+(n-2)\cdot2\}}$$
$${=1+\frac{1}{2}(n-1)(2n-2)}$$
$${=1+(n-1)^2}$$
$${=n^2-2n+2\quad ①}$$

この$${n^2-2n+2}$$に$${n=1}$$を代入すると$${1^2-2\cdot 1+2=1}$$であり,$${a_1=1}$$と合う.よって,①は$${n=1}$$のときも成り立つ.

したがって,$${a_n=n^2-2n+2}$$ (解答終)

n=1で成り立つのはどんな時か

上記の問は典型的な階差数列によるものでした.
普通に$${n\ge 2}$$で一般項を求めてから,$${n=1}$$で確認をしました.
ちゃんと成り立っていたのは良かったです.

しかし,よく見ると,①の1行上の式で,$${1+(n-1)^2}$$となって$${n-1}$$という因子が出てきており,この時点で$${n=1}$$のとき成り立つことは明白です.

ここでそうかと気付きます.
$${\sum_{k=1}^{n-1}b_k}$$を計算した結果が$${n-1}$$の因子を持てば,$${n=1}$$のときも一般項の式が成り立つようです.
どんな数列$${b_n}$$ならそのようになるかを考えてみます.

等差数列の場合

$${b_n=b_1+(n-1)\cdot d}$$ならば,
$${\sum_{k=1}^{n-1}b_k=\frac{1}{2}(n-1)(b_1+b_{n-1})}$$であり,$${n-1}$$の因子を持つのでOKです.

等比数列の場合

$${b_n=b_1r^{n-1}}$$ならば,
$${\sum_{k=1}^{n-1}b_k=\frac{b_1(r^{n-1}-1)}{r-1}}$$であり,$${n=1}$$で$${右辺 =0}$$になる($${n-1}$$の因子を持つ)のでOKです.

l乗の場合

$${b_n=n^l}$$という形のとき:
・$${l=1}$$:
 $${\sum_{k=1}^{n-1}b_k=\sum_{k=1}^{n-1}k^1=\frac{1}{2}n(n-1)}$$ OK

・$${l=2}$$:
 $${\sum_{k=1}^{n-1}b_k=\sum_{k=1}^{n-1}k^2=\frac{1}{6}n(n-1)(2n-1)}$$ OK

・$${l}$$が一般の場合も同様にOK.
 (例えば$${(n+1)^{l+1}-n^{l+1}=(l+1)n^l+\sum_{k=2}^{l+1}({l+1 \atop k})n^{l+1-k}}$$を使えばよい.)

・$${b_n=\sum_{l=0}^{m}c_ln^l\quad (c_lは定数)}$$という形のときもOK

対数の場合

$${b_n=\log n}$$なら,$${\sum_{k=1}^{n-1}b_k=\sum_{k=1}^{n-1}\log k=\log (n-1)!}$$であり,$${n=1}$$で$${右辺 =0}$$となるのでOKです
($${0!=1}$$に注意).

三角関数の場合

$${b_n=\sin^n\theta}$$でもいけそうです.
($${\sum \sin^k\theta}$$を求めるのに$${\sum e^{ik\theta}}$$を使って$${l}$$乗の場合に帰着できる)

よく考えたら

性質の良い関数はテイラー展開できるので$${l}$$乗の場合に帰着できそうです.

n=1で成り立たない例

変な関数形なら成り立たなくなりそうです.
例えば,$${b_n=|n-2|}$$のとき,
$${\sum_{k=1}^{n-1}b_k=\sum_{k=1}^{n-1}|k-2|=\sum_{k=1}^{n-1}(k-2)+2}$$
なので,余分に出てくる2の分だけ合わなそうです.

実際,$${b_n=|n-2|}$$: $${|-1|=1\quad 0\quad 1\quad 2\quad\cdots}$$

$${a_1=1}$$とすると,
   $${a_n}$$: $${1\quad 2\quad 2\quad 3\quad\cdots}$$
$${n\ge 2}$$として求まる一般項は,
$${a_n=a_1+\sum_{k=1}^{n-1}(k-2)+2}$$
$${=1+\frac{1}{2}n(n-1)-2(n-1)+2}$$
この最後の式に$${n=1}$$を代入すると$${1+2=3}$$となって$${a_1=1}$$と合わない.
(2022年10月8日,この部分の式の誤り訂正)

おわりに

ちょっと考えたら,高校数学の数列で現れる形の階差数列ならたいてい$${n=1}$$でも成り立ちそうでした.
成り立たない例は考えればいろいろありそうです.(おわり)

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