見出し画像

1年生「聞く」「話す」の第一歩「朝の会」は笑顔に包まれて

 1年生のスタート時に大切にしたい学習技能は、「聞く力」「話す力」です。まだ、「読む」「書く」が「できない」からです。
 しかし、「聞く力」「話す力」といっても、いきなり「力」は無理です。
 まず、その第一歩として、「聞くこと」「話すこと」への抵抗を取り除き、「聞こうとする」「話そうとする」姿勢を育みます。
 「園」のときよりも人数が多い小学校の場では、「聞こう」と思っていても集中力が途切れたり、「話そう」と思っていても言葉が出なかったりということがあるはずです。
 どの子も「集中して聞く」「安心して話す」ことができるように、初めの一歩の場作りを朝の会を使って次のように行いました。

朝の会の読み聞かせ

 入学式の翌日の朝の会から、読み聞かせを開始しました。
 当初は紙芝居です。
 1回目は、あいさつの指導にもつながるように、あいさつがテーマの内容にしました。
 
 「手はお膝・目とおへそを話す人の方に向ける」といった「聞き方」の指導も、私はします。そのことに関しては、以前の「ヒント帳」で引用した奈須正裕氏とは考えが異なります。私は、「聞き方」を育てることは、「話し手」を尊重することにつながると考えています。
 
 しかし、読み聞かせは、「しっかり聞きなさい」などという必要がありません
 読み始めると、どの子もしんとして聞き入ります。
 
 時々、ぼんやりとしたり、きょろきょろとしたりする子もいますが、読み方にアクセントを付けたり、「〇〇さん、びっくりしたね。良かったね。」などと声を掛ければ大丈夫。
 子供たちは、教師の話を聞くという習慣がまず、できていきます。
 それが、友達の話を聞く、担任以外の大人の話を聞く姿勢づくりにつながります。

 ちなみに、ある年の2日目は、トイレがテーマ、3日めは手洗いがテーマの紙芝居にしました。時々、大型紙芝居も使いました。
 絵本になったのは、4月下旬でした。

人形の「お友だち」は必需品

 スタート直後の1年生が集中して話を聞くようにするための必需品には、「人形」もあります。
 ただの縫いぐるみでもいいし、手を入れて動かせるパペットならもっと効果的です。
 
 この人形をもう一人の学級の仲間にしてしまいます。
 そして、子供たちにしっかり聞かせたいことがある時に、この人形と会話をしながら内容を伝えたり、この人形に教師の代わりに話をさせたりします。
 もちろん、どの子も真剣に聞きます
 
 人形に名前を付けたりして馴染ませ、ここぞという時に取り出すことで、数カ月は使えます。

朝の会の健康観察で楽しく話す

 1年生が話すことに慣れるには、毎日教室で話す経験をさせればいいのです。
 ですから、教師ができるだけ多くの子に話し掛けたり、授業中に話す場を設定したりするわけですが、そういう日ばかりではありません。特に4月当初は、1年生は「お帰り」が早いです。

 そこで、朝の会の健康観察がよい機会となります。
 朝の会の健康観察なら、毎日必ず全員が言葉を発します。
 聞くことを教える場にもなります。

 初めのうちは、こんなやり方でした。
私 「▢▢さん。」
▢▢「はい。元気です。」
 子供たちは、「返事+体調の自己申告」という、一緒に決めたやり方で答えているだけでした。
 
 しかし、しばらくすると、
「はい。元気もりもりです。」
などと、答える子が出てきます。
 教室がどっと沸きます。

「はい。とっても元気です。」
「はい。スーパー元気です。」

などと言う子も現れ、修飾語が「工夫」されていきます。

「はい。筋肉が付いたのですごく元気です!」
あたりで、教室内のボルテージが一気に上がり、出席番号の最後の子の順番になった時には、果たして何と言うのか、みんな固唾を飲んで見守ったのでした。
 
 誤解をすることのないように。私の学級は「おふざけ学級」ではありません。
 
 こんな時もありました。

「はい。かぜをひいています。」
と言う子もいました。
 すると、
「お大事に。」
と返す子がいます。

 そして、やがて、こんなふうになっていきます。

「はい。怪我をしています。」
「お大事に。」
「大丈夫?」
「どうしたの?」
「転んだの。」
「どこで?」
「何をしていたの?」

 健康観察がだんだん「対話」なっていきます。
 こういう年は、1年生でも、朝の会での1分間スピーチが早くからやれました。「話す力」「聞く力」の学習が進むのです。

 読み聞かせをしたり、こんな健康観察をやったりしていましたから、私の学級は、朝の会の時間が長くかかりました。
 しかし、実際にやっていることは、「国語」「生活」「学活」です。
 1年のスタート時から、「1時間目は△△」「2時間目は◎◎」…と、形式的にやっていくのは、この時期の子供から離れていて「小学校過ぎる」と思うのですが、いかがでしょうか。

 こんな朝の健康観察が続いたある日、ある子が言いました。
「このクラスは、とっても楽しい!」

 これもまた、教師が子供にぜひ言ってほしいと思っている言葉の一つです。