見出し画像

生活科・社会科 見学まとめのコツは「知識の再構成」

見学後のまとめのコツ

 前の記事(「ヒント帳23」)は、3年生が市役所・公共施設の見学をしたところまでで終わっていました。
 見学では、その後、つまり見学後の学習がとても重要だと思っています。

 そこで、「ヒント帳23」の続きとして、3年生の市役所・公共施設の見学後の授業についてお伝えすることを兼ねて、生活科や社会科など、見学をした後にどんな学習をしたら見学したことが活かせるのか、私が大切にしていた指導方法を紹介します。

 見学のねらいには大別すると二つあると思います。
 一つは、問題を発見するため。
 一つは、問題を解決するためです。
 問題を解決しつつ、新たな問題を生むという場合もありますが、ここでは2つ目に入れておきます。

 さて、どちらのねらいであっても、私は、見学の後の学習では、

見学で得た知識を再構成させること

を大切にしてきました。

 見学で見たものや聞いたこと、ハテナなどをただ発表させるだけでは、それらが、羅列・累積されるだけで終わってしまうからです。
 途中で子供たちもつまらなくなるでしょうし、何の深まりも期待できません。
 授業時間がもったいないとさえ思います。

 「見学で得た知識を再構成させる」とは、見学で見たものや聞いたことなどを、そのままではなく、違う「形」で表現させるということです。

 その方法には、次のものがあると思います。

見学で得た知識を再構成させる方法
(1)見学前の「問題」とは、<異なる>「問題(指示・発問)」について考え合う

(2)ごっこ活動・再現活動(e.g.店の人になって演じてみる、工場の流れ作業を折り紙工作でやってみる など)

(3)立体物などでの制作活動・構成活動(e.g.山や川などの地形を粘土などで作る、お店を段ボール箱などで作る、校舎の学級配置を積み木やティッシュ箱を積み重ねて表す など)

(4)地図や図表に表す

(5)ポスター、新聞、パンフレットなどに表す

見学前の「問題」とは異なる指示・発問をする

 「(1)見学前の「問題」とは<異なる>「問題(指示・発問)」について考え合う」について、詳しく説明します。
 これが、(2)以降の方法においてもその原理になっているからです。

 3年生の「スーパーマーケットの見学」を例にします。
 見学の前に、「スーパーマーケットの人は、たくさんのお客さんに来てもらうために、どんな工夫をしているか」という問題が設定されていたとします。
 
 それが見学の目的だったのですから、見学後は「見つけた工夫」を出していけばそれで「解決」というわけなのですが、見学記録を基にただ発表を出し続けるだけでは、やがて子供は退屈になり、集中力も切れます。
 「既知」の「事実」をただ並べているだけだからです。
 見学が終了した時点で、実は、「答えは出ていた」ということになります。

 そこで、課題を少し<ひねった>指示・発問をします。

 例えば、「スーパーマーケットの人が、たくさんのお客さんに来てもらうためにしている工夫の中で、特に<よい>と思う工夫を3つ選びなさい。」と言います。

 「<よい>」と「3つ」がポイントです。
 子供たちは、見たもの、聞いたことをこの2つの観点で検討します。見学で得た知識が、新たな視点で組み立て直されるのです。

 つまり、事実認識や価値判断を深めるのです。

 それが、本当に「答えが出た」ということでは、ないでしょうか。

「工夫をできるだけたくさん見つけなさい。」もありでしょう。
 工夫だと感じていなかったことも実は工夫になっていたという発見が、あります。
 「学級全体でいくつ見つけられるか」という挑戦意欲も高まります。

 事前に、問題が設定されていなかった場合は、なおさらです。
「見学して分かったことやハテナに思ったことを出し合おう」では、まさに、「出し合う」だけです。

 ですから、「(5)ポスター、新聞、パンフレットなどに表す」ときも、注意が必要です。
 
 見学後に、すぐに新聞にまとめている学級を見たことがありますが、それでは、分かったことやハテナをそのまま出しているだけです。
 
 新聞などにまとめる前に、「<異なる>他者の目」をくぐらせる必要があります。
 友達の見方や既習内容、新しい「事実」(資料)と比較したり関連付けたりすることで、見学で得た知識を捉え直すのです。その後で、新聞などに表すべきです。(もちろん、見て聞いたことをそのままかかせることで、子供の表現を支援することがねらいなのなら別ですが。)

市役所・公共施設の見学後の3年生の学習

 ある年の3年生の市役所・公共施設の見学後の学習では、次のような学習をしました。

学区探検の結果をまとめた地図と市の地図を広げさせて、「市役所の人が造ったと思う建物や場所を見つけなさい」と指示しました。
 子供たちは、見学で得た知識などを用いて考えていたようでした。

②結果を出し合わせました。
 理由や根拠を言わせることで、市役所の人が造ったと考えられるかどうかを検討させました。
 見たものや聞いたことの理解がより具体化され、精緻化されていきました。いくつかの施設について、公共施設か民間施設か考える場面もありました。
 そうした過程で、見学での見間違いや聞き間違いの訂正も行いました。
 
 公園、学校、こども園、市立病院、市民会館、保健所、警察署、道路、橋などに落ち着きました。
 細かく言えば、道路の案内標識などもそうですが、3年生ですので、ここでは厳密さを求めず、見学で得た知識を「使う」ことにねらいを置きました。
 
③出された施設や場所を整理して、市役所の仕事をまとめさせ、概念化を図りました。
 まず、付箋に書き出し、次に、仲間分けをして、「命を守るための施設」「安心して暮らすための施設」「楽しく暮らすための施設」「便利に暮らすための施設」などの「名前付け」をしました。
 最後に、これらの言葉をキーワードとして用いさせ、「市役所の仕事は、暮らしている人の命や安全を守ることだ」とか「市役所の仕事は、市に住んでいる人が元気に楽しく安全に暮らせるようにすることだ」などと、一人一人まとめました。(クラゲチャートによって「まとめる思考」を促しました。)

 さて、「見学で得た知識を再構成させること」が、できたかどうか、ご判断をお願いします。