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どの子も日記 第8段階「題材見つけ」の力を育む日記のネタ

今回から、日記の指導段階のレベルが上がる。
一言で言うと、「工夫して書く」レベルに突入する。
私の考える日記指導の最終段階である。
今回は、その最終レベルのうちの、

第8段階 題材を選ぶ

である。

ここまでで説明してきたどの子も日記が書けるようになる段階的指導は、以下のとおりであった。

第1段階 読むことと言葉で言うこと
第2段階 「したこと」を書けば十分!
第3段階 「したこと」を5W1Hで書く 【くわしく書く1】 
第4段階 五感を使って 【くわしく書く2】
第5段階 「思ったこと・考えたこと」を書く 【くわしく書く3】
第6段階 段落指導と全体構成を「始め-中-終わり」で
第7段階 順序を表す言葉を使う

(ここまでの説明にご興味のある方は、下 ↓ ↓ から、スタートである第1、第2段階の説明記事「ヒント帳 73」へ行けるので、そこから、順番にどうぞ!)

「ヒント帳 76」での第5段階の終わりに、「題材」を見付ける「目」を育てることは、日記指導の中心的な指導事項であること、そして、だからこそ、それは難しいことを述べた。その時に予告したように、今回は、「題材見つけ」の指導方法の説明をしたいと思う。

第8段階 題材を選ぶ

「題材を選ぶ」といっても、ここまでお読みいただいた方からすると、私の紹介した指導方法では、学級全員で一緒に同じ「題」について書くことが多いのではないかとお思いかもしれない。
そのご指摘は、ある意味正しい。

日記の「題材見つけ」は、本当に難しい。それが理由で日記を嫌いになる子もいるし、保護者を悩ませることも少なからずある。

だから私は、皆で一緒に同じ「題」について書く機会をしばしば取ったのだ。
それは、これまでお伝えしてきた段階的な指導をするためであり、どんな事柄が日記の題材になるのかを経験的に子供たちに学ばせるためである。

だが、もちろんそれだけでは子供の「題材」を見つけるアンテナは高くならない。そこで、以下の三つの方法を用いてきた。紹介する具体的な方法の中には、日本各地の教師が日々実践しているものが幾つもあることと思う。

(1)まず、書くことを楽しいと感じ取らせる

「題材見つけ」の力を育む大前提として、まず、「書くことが楽しい!」という気持ちを少しでも育みたい。これがなくては、題材を見つけようとする気持ちも湧いてこないからだ。

そこで、4月の当初から、次のような「書くことを楽しむ」活動を定期的に行っていく。

①4コマ漫画のセリフを考えさせる

日頃から、子供が想像力を膨らませそうなオチの4コマ漫画を探しておき、そのオチの部分のセリフを消して子供に提示する。そして、その吹き出しの中に、言葉を入れさせる。
初めて行った時は、ちょっと面食らったような顔をしていた子も、2回目ぐらいからは要領を覚えて、楽しんで考えるようになる。4年生以上に向いている。

②昔話の「続き話」を作らせる

例えば、「桃太郎は、おばあさん、おじいさんの所に鬼の財宝を持って帰った後、どうなったか」などを考えさせる。
2年生でも喜んで書いてきた。

③「もしも日記」を書かせる

「朝起きたら、〇〇に変身していた。」という課題、書き出しで書かせる。
実践されている教師が多いように思う。
私は、4年生以上で主に行った。
もちろん喜んで書いたが、書くことよりも、友達の日記を読むことの方が楽しかったようだった。
なお、「もしも日記」のバリエーションは、「〇〇に変身」以外に、いくらでも考えられる。

④一行日記

ただ、一行で書かせるだけではない。
「一行で『くわしく』書きなさい」と指示を出す。何とも矛盾しているような課題だが、つまり、言葉を工夫して書くように求めているわけである。
4年生以上に向いていると思う。数回繰り返すと、質が向上する。
例えば、こんな日記を書くようになる。

「チョウが箱の中で死んでいた。動かず横たわって。さぞ、がんばったのだろう。」
「時計が静かに左右にふりこを動かしている。鐘がきれいに鳴った。」
「算数のテスト。数字がいっぱい。ぼくも数字をにらみ返した。」

⑤とにかく長く書かせる

「長い長い日記」に挑戦させる。ひたすら長く、とにかく長く書かせてみる。
「えーっ」と言いながらも、楽しんで書いてくる子が多い。
高学年になると、私は1ページで500文字を超えるノートを日記帳として使わせるが、それで10ページ近く書いてくる猛者もいた。

⑥班日記

これもよく行われている。
続けているうちに、班のメンバーに対する呼び掛けになったり、前の子の「続き」を書いたりするようになる。
とにかく楽しい。
人間関係までよりよくなる場合が多かった。

(2)課題を提示して書かせる

上の「書くことを楽しませる」目的に重複するものもあるが、以下のような課題を出して日記を描かせることで、「題材を見つける目」を育もうとした。

①行事とつなげて

・学級、学年行事の後に、その行事のことについて書かせた。
・学期末や学期初めに「振り返り」や「目当て」も書かせた。しかし、上の行事についても同様だが、こういう型にはまった日記は、子供にあまり好まれないし、内容も類型的になりやすい。従って、いかに本気で書かせるか、あるいは逆にいかに楽しんで書かせるかという工夫が必要だ。私は、「もう一人の自分になって、前期の自分をほめちぎりなさい」「必ず前期の自分の様子を根拠に書いてから、後期の目当てを書きなさい」などの指示を付け加えた。
また、学級通信で、子供の日記を紹介することをしていたので、それが、日記の一定の質を保証する機能を果たしていた。
・社会科見学や鑑賞教室などの後にも、それを課題として日記に書かせた。前者の場合は「見たこと日記」、後者の場合は「感想文の書き方特訓」という指示を付加していた。

②授業とつなげて

・漢字をできるだけ多く使って書く。
・今日の国語で学んだ「接続詞」や「熟語」、「ことわざ」、「慣用句」を使って書く。
・今日の理科や社会、算数などの授業で、「発見したこと」「驚いたこと」「考えたこと」を書く。
・6年社会の歴史学習のまとめとして書く。
例えば、
「もし、弥生時代に生まれていたら」
「平安貴族と私」
「武士の暮らしと貴族の暮らしのどちらがいいか」
「家来になるなら、信長、秀吉、家康の誰を選ぶか」
・「全て万葉仮名で書きなさい」
これは、例えば、以下のようになる。
今日防災訓練加安利末之太。曽己天保久加楽之加川太利、加无波川太利、学无太利之太己止遠書幾末寸。…
これが、1ページ以上続く。
句読点の使用もありとし、現在使用している漢字熟語も使って良いという条件で挑戦させたが、「先生、二度とやめて。」と子供によく言われた。もちろん、平仮名が生まれた理由は、どの子も納得である。

③季節や社会的な出来事に関係した課題で書く

・七夕の時期は、「星に願いたいこと」。
・「十五夜の月を見て」
・「梅雨はあった方がいいか、ない方がいいか」
・「台風による被害について思うこと」
・「『国民主権』は守られているか」

(3)題名を工夫させる

「題材を工夫しなさい」という指示を出しても、子供にはなかなか難しい。
上記、(1)(2)のような指導を繰り返しても、「書く値打ちのあること」をなかなか見つけられない、気がつけないという子が多いように思う。

そこで、「題名を工夫しなさい」という指示を出す。
どんな題名を付けたら、相手が読もうとするかを考えさせる。それによって、子供の意識が間接的に「題材」にも向くのである。
こうした指示を出した後は、子供たちの付けた題名を黒板に全て書き並べたり、学級通信で伝えたりした。互いの題名を見合うことが、「題材見つけの目」を育むことにも繋がるのである。

ところで、今回は、「題材を選ぶ」ということについての指導方法を紹介してきたが、実は、「題材」を選んで日記を書かせることで、子供たちの「中心をしぼる」という技能も育むことになる。
選んだ題材について書くので、結果として、「何について書くのか」、すなわち「中心」が明確になるのである。
これは、とても重要なことである。


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