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フラフラした20代を過ごした人に贈る『フランシス・ハ』

バームバック×ガーウィグ共同脚本

次世代のウディ・アレンとも呼ばれるノア・バームバック監督の『フランシス・ハ』は、後に『レディバード』でアカデミー賞候補にあがるグレタ・ガーウィグとの共同脚本だ。映画公開時はバームバックの新作ということで観に行ったが、『レディバード』公開後に再見するとほぼガーウィグの脚本にも思える。

主人公フランシスの出身地はサクラメント。イタい言動や空気を読めない冗談のチョイスなど『レディバード』との共通点も多い。実際、『フランシス・ハ』公開時のインタビューでバームバックは「ここは彼女、ここは自分というように、振り分けをして完成させたわけではない」と語るほど。ガーウィグの意見や考え方がかなり色濃く表れた作品だ。

ニューヨークの家賃は高すぎる

舞台はニューヨーク・ブルックリン。27歳の見習いモダンダンサー、フランシスは親友ソフィーとルームシェアをしている。ダンサーとして成功もすることもなく、彼氏とも別れたフランシスだが親友ソフィーがいるので日々を楽しんでいる。しかし、ある日ソフィーは引っ越しすることになり、ルームシェアは解消される。家を失ったフランシスはニューヨークの友人たちの家を転々とする羽目になる。

ニューヨークの家賃は滅茶苦茶に高い。東京も高いがニューヨークはそれ以上だ。劇中「トライベッカに住める」という親友ソフィーとの会話も登場するが、トライベッカの1ベッドルームの家賃相場は4,000ドル以上もする。相場なので実際はもっと安い部屋もあるが、狭くてぼろいものがほとんどだ。フランシスはルームシェアをして暮らしているが、それでも一部屋で950ドルもする。高い家賃をルームシェアで分担ニューヨークのリアルな現状を描いた作品でもある。

若者でも中年でもない27歳のフラストレーション

フランシスの27歳という年齢設定も絶妙だ。若者でも中年でもない中途半端な「27歳」という設定はガーウィグの当時の年齢をそのまま活かしたものである。実際フランシスの周りの同世代は結婚したり、落ち着いてきている。ルームシェアをしている芸術系の職業の友人たちは親が裕福だ。お金もないフランシスが他人と比べて人生に焦ってしまうのもわかる。単なる思い付きでパリに行って、何もせずに戻ってくる場面なんて、焦りの極みが現れた最高なエピソードだ。

個人的に『フランシス・ハ』は思い入れのある映画だ。私も大学を卒業した後、映画関係の仕事に就きたいという最もらしい理由で内定を辞退し、2年間フリーターをしていた。同級生たちが社会人に成長する姿をみて切ない想いをした。焦って、強がって、無駄に遠方に行ったりした。フランシスに感情移入しまくりなのである。

フランシスのようなフラフラした20代を過ごした人(過ごしている人)は日本にもたくさんいるはずだ。自分の映画と思って是非大勢の人に見ていただきたい。


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