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摩訶不思議! 絶滅した出刃包丁がなぜ8600キロも離れた場所に?!

中新田打刃物といえば、今では石川さんというイメージしかありませんが、何年か前までは約11ほどの鍛冶屋がありました。むかしは鹿島神社でふいご祭りなどもやっていたそうですが、廃業・後継者不足により開催できなくなりました。

まだ市外局番に一桁の時代だったころのパンフレットには数人の職人が写っていますが、10年くらい前にはすでに1つか2つの鍛冶屋しか残っていなかったそうです。

つまり、インターネットなど盛んになるころにはほとんどの鍛冶屋が廃業しており、オンラインショッピングなんて概念もそもそも無かったと思われます。

実際のところ、私が石川さんの通販の手伝いや動画をユーチューブに乗せる前までは中新田打刃物の情報など全くといっていいほどインターネットに存在せず、名前が国内外に知れ渡ってきたのもつい最近の話です。

最近では海外のお客さんからメッセージをもらうことも少なくなくインスタグラムなどで取り上げてくれる方も増えてきました。

昨年の12月にも下記のようなメールをいただきました。メールにはポーランドから書いているよと。私は「どこかの海外代理店から包丁を買ってくれたんだろうなぁ」と思っていました。


しかし、よく見るとその包丁は石川さんの包丁ではないのです。


見ると、たしかに刻印には「中新田」の文字が。しかし、鍛冶職人の名前を示す刻印には「若」という文字が。

石川さんの包丁の刻印は「石」なので、制作者は別人ということになります。

さて、とうぜん誰だろう?ということになるのですが、それ以上にオンラインショッピングなんて石川さんしかやっていないうえに、おそらく鍛造された日時もそうとう昔であろう出刃包丁がなんでポーランドに?!とびっくりしました。

後日、石川さんのところへ出向き、確認したところ、

「これは「わかまっつあん(若松)の包丁だ」

と言われました。

私も石川さんと付き合いが長く中新田打刃物の歴史も多少は知っていますが、わかまっつあんって誰?でした。

どうもずいぶん前に引退・廃業した鍛冶屋さんで石川さんもいつ廃業したか覚えてないとのこと。後継者もおらず工場もとうの昔に無くなっているとのことでした。

なぜ、こんな絶滅した出刃包丁がポーランドにあるのか我々もまったく知る余地がありません。

後日、このポーランド人に「その包丁は石川が作ったものではなく、別の鍛冶職人が作ったものだ」と返信をしましたが、それ以上の返信は返ってきませんでした。

不思議ですねぇ。どういう経緯でポーランドに渡ったのでしょうか?

石川さんと話した結果、キリスト教が絡んでいるのではないかということでした。石川さん家の近くにハリストス生教会があります。むかし、そこに海外から神父さんがよく来ていたので、それで包丁を購入し持ち帰ったか、あるいは発送したのではないかということでした。

まぁ十数年前に超マイナーな中新田打刃物をわざわざ買いにくる外国人もいないでしょうから、その推測が概ねあたっているのではないかと思います。

あとでそのあたりを調べてみると、キリスト教と製鉄に密接な関係があるというのです。まっぷるトラベルガイド編集部によると、

1558(永禄元)年に、備中(岡山県)よりキリシタンであった布留(千松)大八郎・小八郎の兄弟技師を招き、西洋流の最新の製鉄技術が伝えられた。

製鉄所は炯屋(どうや)と呼ばれ、従来の方法の数倍の生産力がある南蛮流製鉄法「たたら式」が伝授されました。その際、唱えると鉄がよく溶けるというキリスト教の祈りの言葉があったと考えられている。

古くから製鉄を行ってきた宮城には、今も伝統的な鉄工の技が残っており、その1つが中新田打刃物とのこと。

https://www.mapple.net/articles/bk/6472/  まっぷるトラベルガイド編集部

私は歴史家ではないので、真偽についてはわかりませんが、このあたりの記述については宮城のトリセツという本に掲載されているようです。

さて、結局のところ結論としてはポーランドの方からメールの返信が来ないのでわからないのですが、いずれにせよ加美町の廃業してしまった鍛冶職人の伝統工芸品がポーランドにわたり、いまでも大事に使用されているというのは感慨深いですね。

あと10年もすれば石川さんも引退で本当に中新田打刃物も消滅です。このような面白い歴史もある工芸品が加美町から消えるというはもったいない話です。

町長も石山さんに変わったので、継承とか保存の話が少しでもでればいいんですけど、財源ないしやっぱ難しいでしょうね。とりあえず、石川さんが元気なうちはサポートしていきたいと思います。

それでは、みなさん良い1日を!

書き手:遠藤

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