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「リョウタと同じ絵が描けていたと思う」(中村憲剛)。前線のプレッシングを支えていた、阿部浩之の絶妙な位置取りと、大島僚太の的確なコーチング。そして入念に準備していた柏対策の3バックを使わなかった理由とは?(リーグ第3節・柏レイソル戦:2-1)

等々力競技場での柏レイソル戦は2-1で勝利。

 鬼木フロンターレでは、ホームでのリーグ戦初勝利となりました。

 特筆すべきは、なんといっても前半のパフォーマンスでしょう。
攻守ともに素晴らしい出来でした。ゲームの入りからテンポよくボールが回り、ゴール前へ。まず開始1分には、右での大島僚太からの折り返しを小林悠が中央で落とし。それを中村憲剛が左足で狙いすまして振り抜きます。

 過去にもミドルシュートを決めている中村憲剛ですが、ミドルが決まるときは、打った瞬間に入るかどうか、手応えならぬ「足応え」で感覚的にわかるそうです。

 このシュートは感覚的に「入った」と確信した一撃だったとのこと。
実際、弾道もほぼ完璧だったように見えました。しかしこの鋭く低い弾道のシュートを、柏の若き守護神・中村航輔が横っ飛びでかき出します。この反応には中村憲剛も驚いていました。

「いや、久しぶりだよ。入ったと思ったのが止められたのは。『きた!』と思ったし、(弾道も)ツーンと行ってた。あれは入っていいし、ナイスキーパーだったと褒めるべき・・・若さっていいね(笑)」(中村憲剛)

 36歳の中村憲剛が最後に思わず漏らしたように、中村航輔は22歳と若いGKです。

 そして柏守備陣には「若さ」という特徴があります。この日の4バックは、右から古賀太陽(18歳)、中谷進之介(20歳)、中山雄太(20歳)、輪湖直樹(27歳)。最後尾にいるGK中村航輔が22歳ですから、Jリーグの歴史を見ていても「異例」とも言えるほど若い年齢で構成されていた最終ラインだと言えます。

 若いプレイヤーというのは、良いときに「勢い」があります。ベテラン・中村憲剛(36歳)を筆頭に、小林悠(29歳)、阿部浩之(27歳)の前線が心がけたのは、彼の若さによる「勢い」を出せないことでした。中村憲剛が言います。

「彼らに自信を持ってやられるのが困る。彼らの余裕を排除するために、前からのプレスを選択する。(相手が)つなぐからこそ、(奪いに)いく。それに、つなぐチームは、(ボールを)取られるともう一回やろうとしますから。それでも、(奪いに)いかないと。ウチがいつもやられることをやりましたね」(中村憲剛)

 小林悠も同意見でした。狙いを聞くと、相手の最終ラインが若いこともあり、あえて強気でボールを奪いに行ったと明かしています。

「正直、それはありました。自分たちが勢いを出すことで、相手が(パスを)出すところがなくなる。それでバックパスを出す。それでハマっていくと、こっちもいけるなと思う。そこはうまくハメれたかなと思います」

 もちろん、強い気持ちのプレッシングだけで、相手のビルドアップを封じられるわけではありません。では、何が勝因だったのでしょうか。今回のレビューでは、そこらへんを中心に検証してみました。

今回のラインナップです。

1.「リョウタと同じ絵が描けていたと思う」(中村憲剛)。前線のプレッシングを支えていた、阿部浩之の絶妙な位置取りと、大島僚太の的確なコーチング。

2.3試合連続ゴールはならずも、笑顔を見せた小林悠。「自分が点を取って引き分けるよりも、守備で走る時間が長くてもチームが勝つことが嬉しい」。チームの守備を体現した、後半の場面とは?

3.「DFの存在価値は、チームが苦しい時にこそ発揮されると思う」。「去年よりも見えるものは増えている」。この10ヶ月で奈良竜樹に起きているある明確な変化。

4.入念に準備していた柏対策の3バックを試合で使わなかった理由。試合翌日の鬼木監督に聞いてみた。

以上、4つのポイントで冒頭の部分も含めて約7500文字です。後日取材も充実しているので、読み応えはあると思います。ぜひどうぞ。

なおプレビューはこちらです。→「柏もやり方を変えてくるだろうから、正直、わからないですね」(車屋紳太郎)。3バックか、4バックか。鬼木監督がまぶした柏対策の狙いを読み解く。/ 試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第3節・柏レイソル戦)

では、スタート!

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