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新装再編版「スラムダンク」を語る〜第7巻:「はらたいらさんに3000点」って通じますか?

新装再編版「スラムダンク」を語る。今回は第7巻のレビューです。

 まずは表紙の考察から。


流川楓の翔陽戦でのダンクシーンです。

帯コメントは:「奴はとてつもないスターになる・・・そんな予感がする・・・」。陵南の田岡監督による流川評です。

 藤真がコートにいるので、後半途中の時間帯の一コマだとわかります。三井が交代する直前に、ルーズボールを拾って流川につなげたときのダンクシーンかと最初は思ったのですが、流川に追いすがる翔陽の顔ぶれが長野、高野、花形でした。この表紙では長谷川と藤真がいるので、その場面ではなさそうです。

 ただ、それ以外だと、ダンクした場面もかなり限られてきます。

 ここかな?と思ったのは、後半終盤に翔陽が勢いを取り戻していくという局面です。花道が4ファール目で花形のメガネを破壊して負傷したものの、花形が奮起して、翔陽が活気付くという展開なのですが・・・このときに「湘北も11番流川の個人技などで返すが追撃の決め手はなく、残り5分には点差は逆に開いていた」というナレーションが入ります。表紙のダンクシーンは、このときの「流川の個人技」ではないかと推測します。

 では本編に。7巻のタイトルは「湘北vs.翔陽」。メインは決勝リーグ進出をかけた翔陽戦です。

試合前、選手兼監督という立場で紹介される藤真のシーンは、格好良過ぎですね。ルックスもジャニーズ系なので、女性人気の高いキャラクターです。

 リアルタイムで読んでいる時、キャプテン翼の三杉くんみたいに病気で長い時間プレーできない人なんだろうな、と予想してましたが、チーム事情で選手兼監督をせざるをえなかっただけだったとは・・・・今思うと、強豪チームが負けたときに、選手の格を落とさないようなエキスキューズを含ませたこういう描き方、井上先生はうまいですよね。

にしても、インターハイ常連の強豪チームに監督がおらず、顧問の先生しかいないなんてことは、実際のところ、あり得るんでしょうか。前年度の監督が何か問題やアクシデントが起きて辞めたとか、そんな理由の緊急事態だったんですかね。

 試合開始前には、海南と陵南が会場でハチ合わせし、両主将がそれぞれ勝敗予想をしており、牧は「10点差で翔陽」、魚住は「はらたいらさんに3000点・・・!!」とボケてます。

 ただ、いまの世代はクイズダービーを知らないので、「はらたいらさん?・・・3000点?」と、このシーンを理解できないそうです・・・これは、おれショックだったよ・笑。でも昭和のクイズ番組だからな。

読み返してみると、翔陽戦は後の強豪との試合と比べるとストーリーのテンポが良くて、わりとサクサク進んでいきますね。

 そして相手チームのことよりも、湘北のほうが見せ場の多い展開にもなっています。花道はリバウンダーとしての才能を開花させ、リョータは電光石火のプレーを見せて翔陽のビッグマンを翻弄。三井が追い上げの3ポイントを決め続け、流川は、序盤の劣勢を打開し、終盤にも得点を量産・・・あえて言うなら、ゴリに見せ場がなかったかもしれませんが、チームとしての湘北の真価が発揮された試合でもありました。「俺たちは強い!」の合言葉も、ここで出ます。

 ただ「湘北が強い」を描いたことのしわ寄せで、他の強豪との試合と比べると、県内ナンバー2である藤真や花形の見せ場が少ないのが、ちょっと惜しいですよね。特に藤真は後半途中の出場のみで、終盤にはゲーム支配力も弱まっている描写があり、存在感も希薄になってしまってます。

花道の退場後、ラスト1分50秒の激闘もナレーションだけで終了です。2年生の角田が花道の代わりに出て勝ち切っているのですが、翔陽に得点を許していません。どんな展開だったかも、ちゃんと見たかった気もします。

井上先生が何かのインタビューで話してましたが、湘北が勝つことが決まっていて描いた試合は、この翔陽戦とインターハイの豊玉戦だけだったそうです。だから、このテンポだったのかもしれませんね。

 最後に翔陽戦の小ネタを。

長谷川一志が、街で不良時代の三井にすごまれたときの回想シーン。このときの背後にある看板が「ケンタッキー フライドチキン」ならぬ、「アンザイ フライドチキン」だったりしますね。ちなみに長谷川くん、花道がバッシュを買ったチエコスポーツ帰りでした。

 翔陽には永野満という選手がいるのですが、同じ名前のナガノ・ミツルが「リアル」にも出てくることで話題になりました。

 もっとも、リアルのナガノミツルは長野満なので字が違いますが、顔や風貌もどことなく似ているということで、井上先生もなかなか面白い演出を凝らしてきますね。

今回はこのへんで。次巻は、王者・海南大付属との一戦です。

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