冷静な司令塔と、情熱のキャプテン。そして追撃弾直後の動揺を見逃さなかったバンディエラ。6分間の大逆転劇は、こうして起こした。(リーグ第18節・サガン鳥栖戦:3-2)

サガン鳥栖戦は3対2で勝利。

中二日での真夏のアウェイゲーム。タフな3連戦で見せた、わずか6分間での2点差の逆転劇。実にお見事でした。

 興味深かったのが、2対2の同点に追いついたときの選手たちの感じ方です。

 エウシーニョが同点弾を決めたのは、56分の谷口彰悟の追撃弾からそのわずか2分後でした。普通だったら、「これでひっくり返せる」とチーム全体が息巻くはずですが、意外にも大島僚太は冷静だったと言います。

「いや、いけるとかは思わなかったです。去年の福岡戦(1stステージ第16節:2-2)のようなこともあったので。そういった意味で、『よし!』とは思わなかったし、逆転するまでに同じテンションでしたね」

 実に冷静なんですね。
中盤でゲームメークを任されている大島が、落ち着いた試合運びを心がけていた一方で、ストライカーの小林悠は、不思議と自分の決勝ゴールを確信して、ギラギラと燃えていたと言います。

「エウソンが決めて追いついた瞬間、3点目を取るのは俺だなという感覚があった。これ、3点目を自分が決めて自分がヒーローだなと」

 その予感通りに決めてしまうあたりが、さすがストライカーです。チームという集団で考えたときに、同じ状況でもほとばしる情熱でギラギラしている選手と、冷静になっている選手の両方がいたほうが良いんだろうな・・なんてことを思ってしまいました。

いずれにせよ「中二日で勝った」、「0-2から逆転した」という勝利経験は、シーズンのこれからを戦う上でも必ず生きてくると思います。

 では、この逆転劇はいかにして起きたのか。
レビューではそこをどこよりも掘り下げて分析しております。ラインナップはこちらです。

1.長谷川竜也の欠場という誤算。そして、もったいなかった2失点。「1点目はゴロの(クサビの)パスは自分が消せればよかった。ショウゴくん(谷口彰悟)のところです。あそこは自分が消せるぐらいスライドできていれば問題なかった」(大島僚太)。前半の問題点はどこだったのか。

2.「お前らの力ならば絶対にこの試合に勝てるぞ、と言われました」(小林悠)、「信じて頑張ろうと思ったし、気持ち的にはそれほど悲観せずにやれました」(大島僚太)、「追いつくのではなく、勝ちにいくというプランをオニさんが話してくれた」(登里享平)。選手たちのハートに火をつけた、ハーフタイムの指揮官の言葉とは?

3.「前半、一本もショートコーナーをやっていない。セットプレーで失点が多いというスカウティングもあったので、そこはチャンスだなと」(中村憲剛)。追撃弾を呼んだショートコーナーという機転。そして鳥栖守備陣の再開直後の「動揺」を見逃さなかった、中村憲剛の観察眼。

4.「自分のポジションによって、外寄りか中寄りかで、福田くん(福田晃斗)がポジションを変えようとしていた」(登里享平)。左サイドを起点に3得点。2アシストの車屋紳太郎の攻撃力を生かした、登里の絶妙な気遣いと、そのルーツにも迫る。


5.「つなぐところもつないだし、カウンターも狙った。みんな頑張ったし、総力戦。勝つことをこだわってやれました」(小林悠)。意志統一しながらも、最後はなりふり構わず守り切る。

 以上、5つのポイントで冒頭部分も含めて約7500文字です。どこよりも読み応えはあると思います。よろしくどうぞ。

https://www.youtube.com/watch?v=dzPCBaGFoqg

では、スタート!

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