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選手全員が示した「前へ」の姿勢と、強い責任感。そして等々力の圧勝劇を生んだ、中村憲剛の観察眼と大久保嘉人の老獪さ。(リーグ第9節・鹿島アントラーズ戦:4-1)

 等々力での鹿島アントラーズ戦は4-1で勝利。

内容・結果ともに噛み合い、こういう試合が見たかったと思えるような試合でした。

 チームの何が変わったのか。

試合後のミックスゾーンでどの選手も口を揃えていたのが、この鹿島戦にかける「気持ちの強さ」でした。選手たちの証言を並べます。

「何が変わったのか・・・・気持ちでしょ。そろそろ、(みんな)がやばいと思っていたのかもしれない。僕は思ってなかったけど(笑)。これをベースにできれば良いと思う」(阿部浩之)

「こういう言いかたはしたくはないですけど、今日は気持ちの面で戦っていた。攻守の面で強気に、アグレッシブだった。それが全てだったと思う。攻撃も、迫力のある勢いのある攻撃を見せられた。守備の切り替え、戻るスピードも早かった」(谷口彰悟)

「みんな気持ちも入っていたし、足も動いていた。コンディションのところで一週間空いたのはあった。それにベタですけど、気持ちは大事」(中村憲剛)

 プロのゲームを観戦するとき、「気持ちが入っているかどうか」なんていうのは、本来、議論すべきところではありません。なぜなら、気持ちが入っていて当たり前だからです。

 でも、ピッチに立っている全員が気持ちが入ってプレーし、見る側にまでそれが伝わるゲームというのは、そう多くありません。

 でもこの鹿島戦では、選手が強い意思を発し、それが局面の攻防にも随所に現れていました。サッカー的に言えば「デュエル」、少し前で言えば「インテンシティ」というフレーズになりますが、実に激しく、見応えのあるゲームだったと思います。

 試合内容としてはスコアほどの差があったわけではなかったと思います。前半の途中からかなり押されており、苦しい時間帯も多かったですから。

 では、どうしてこれだけ大差がついたのか。試合中のピッチでは何が起こっていたのかについて、いつものように、選手の証言を交えながら、どこよりも詳しいレビューとして公開していきます。

今回のラインナップはこちらです。

1.「何をしたら勝利に近づくのか。それを整理して試合に入りました」。なぜ家長昭博は「超フリーマン」をやめて、右サイドのエリアで仕掛け続けたのか。この試合に向けた攻撃陣に起きていた変化を示す証言とは?

2.「前に出て行かないと相手は釣られない」(阿部浩之)、「空走りでもいいから、走らないといけない。そういうところが良い方向に出たと思う」(家長昭博)、「相手の前でボールを回すわけではなく、攻めも背後に出て行く」(中村憲剛)。徹底されていた「前へ」の姿勢と、ボールホルダーを追い越す動き出し。

3.「うまくスピードを殺さずに、かつ相手に触らせないようなボールを配球できた。自分もあの1点に貢献できたかな」(守田英正)、「ネットだから、変なことして外すかなと思ったけど、うまかったですね(笑)」(阿部浩之)。イメージのシンクロで崩した、ネットの追加点。チームの狙いが凝縮されていた2点目の崩しは、いかにして生まれたのか。

4「向こうの激しい部分に真っ向からぶつかっていこうと思っていた」(奈良竜樹)、「そこで弱気になって先に下がったりするのを鹿島は狙っている。そこは二人とも辛抱強くやれました」(谷口彰悟)。サイドに流れて起点を作る鈴木優磨と金崎夢生の2トップを、マンマークで対峙し続けたCBコンビ。そこにあった、強い覚悟と責任感。

5.若い左SB・小田逸稀の迷いを見逃さなかった37歳・中村憲剛による観察眼と、大黒柱・昌子源をピッチから追いやった大久保嘉人の老獪さ。小林悠と大島僚太の不在でも、フロンターレらしく勝てることをピッチで示した、等々力の圧勝劇。

※追記:6.「もし遠くを見て蹴ろうとか、繋ごうとしていたら行かなかったと思う」。なぜ中村憲剛は、左SB・小田逸稀の「一瞬の迷い」を嗅ぎ取れたのか。そして得点後に、メインスタンドではなくGゾーンまで走ってBKBパフォーマンスを行った理由。

 以上、6つのポイントで約10000文字です(23日19:00に後日取材でポイント6を追記しました)。読み応えたっぷりですので、是非読んでみてください。

なお、プレビューはこちらです。➡️試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第9節・鹿島アントラーズ戦)

では、スタート!

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