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文化通信社専務取締役の星野渉氏は「日本の書店がどんどん潰れていく本当の理由」(東洋経済)として3つあげている。

①雑誌市場縮小

②20~25%程度と低い粗利益率

③配本制度

元凶は、書店へ「配本制度」だろう。

出版社、取次、書店にとって「楽ちん」な制度でもあった。

出版社は、ある程度発行部数が読める。
取次は、書店を配下におくことで流通を支配できる。
書店は、在庫リスクがなく何も考えないでも取次が配本してくれる。

「配本制度」は、極端に言えば「楽ちんで考えない」制度ともいえる。

出版社は、有名人、話題の人、ベストセラー作家に頼りっきりだ。インパクト重視、流行りモノを追いかけるので、どこの出版社も同じような内容になる。専門分野に造詣が深い編集者は殆どいない。

取次は、出版社から送られる本を配下の書店に振り分けるだけでいい。配下の書店は在庫置き場くらいにしか考えていない。

書店は、返品作業に追われる。どの様な売場を作るのか考えないから、全国どこでも同じような売場になる。全国チェーンのスーパーマーケットと同じだ。

「楽ちんで考えない配本制度」に、読者の声は届くはずもない。本が売れなくなるのも当然だ。

米国ではインディーズ書店が復調しているという。
全米書店組合(ABA)によれば、アメリカでは2009年から2015年の間に、独立系書店が35%も増加している。

ニューヨーク市のブルックリン地区で2010年に50坪で開店した書店「グリーンライト・ブックストア」は、ほぼ書籍の販売だけ。
同店では客単価が28ドルと日本の2~3倍、粗利益率は40~50%と日本のほぼ2倍。年間売上高約2億円、粗利益額約1億円。
2016年に同じブルックリンに2店舗目を開店した。

ハーバード・ビジネス・スクールのライアン・ラファエリ助教授は独立系書店復活のキーワードは「コミュニティ(Community)」「キュレーション(Curation)」「呼び集め(Convening)」の3つだという。

注目したいのは「キュレーション(Curation)」。
顧客とコミュニケーションを重ね個人的関係を密にしすることにより、彼らが顧客が求める書籍を提供する。

つまり御用聞だ。


米国独立系書店は顧客の御用聞きに徹することで、顧客のニーズを掘り越している。

御用聞き書店店員になるには、本や専門分野について造詣が深くないとできない。そういう店員が日本の書店に何人いるのだろうか?

ある大手書店店長が「書店で本を探してアマゾンで本を買うんですよ」と嘆いていた。店員は在庫管理はできるが御用聞きが出来ていないという証左だ。

私は「アマゾンで探して書店で買う」。店員を頼りにしていない。私の要望を理解しこれだという本を店員が提案できないから聞かない。店員には在庫の有る無しだけしか聞かない。

ただ、書店では、思わぬ仮説(著者)との出会いがあり、時間が過ぎてしまう。こうすれば書店ももっと売れると思うアイデアがあるが…。

読者不在の制度は「配本制度」ではワクワクするような本は生まれないし、書店にも足を運ばなくなるのは当然ではないだろうか。

米国インディーズ書店は「考える」ことで復活した。その意味を日本の出版業界も考えるべきではないだろうか。

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