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交通事故シリーズ第2弾『人身事故と物損事故』


さて、今回も交通事故関連の知識について解説していきます。

これまでの保険請求関連のnoteを見たことが無いよ、という方は無料のマガジンでまとめていますので、ぜひご覧くださいね。


交通事故の患者さんには専用の問診票でヒアリングするのですが、その際に事故処理が『人身事故』か『物損事故』かという項目があります。

新人のスタッフに聞いても、何のことやらさっぱり。

患者さんも保険会社に言われたから、とあまりよく分かっていない方が多いです。

それぞれどういった特徴があり、あなたの事故はなぜそのような事故処理になったのか?

これから分かりやすく解説していきたいと思います。


1、『物損事故』とは


身体や生命への被害はなく、自動車や建物などの『物』にのみ損害を発生させた場合をいいます。

物損事故の特徴は、加害者が『刑事罰』に問われないことです。相手の物を傷つけてしまっているので器物損壊罪などが適用されるかと思いきや、事故は故意ではなく『過失』によるため、刑事罰には問われません。


また免許の違反点数が原則『加算されない』のも特徴です。
※他に違反があれば別です。

さらにもうひとつは、『自賠責保険が適用されない』ということです。前回説明したように、自賠責保険は被害者のケガに対し補償されますので、物損事故の場合は任意保険でしか対応できません。

つまり、事故相手が任意保険未加入だったり、自賠責保険の限度額(120万円)を大きく超える場合に、相手方に支払い能力が無ければ賠償が受けられないこともあります。

2、『人身事故』とは

人身事故は文字通り、身体や生命に被害を発生させた場合をいいます。

物損事故とは違い、加害者は『過失運転致死傷罪』や『危険運転致死傷罪』などの刑事罰に問われる可能性があります。

身体にケガなどの被害を被った場合、自賠責保険が適用され、限度額の120万円を超えるような場合には任意保険が適用されます。

加害者は違反の内容にもよりますが、免許の違反点数が加算されます。



では人身事故と物損事故の違いについてまとめていきます。

◇人身事故
刑事罰:過失運転致死傷罪等に問われる可能性がある
免許:必ず点数の加算あり
保険:自賠責保険が適用される
賠償の対象:治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料、等
◇物損事故
刑事罰:過失運転致死傷罪等に問われる可能性は無い
免許:原則として免許の加算無し
保険:自賠責保険が適用されない
賠償の対象:修理費、代車使用料、評価損、等

こういった違いがあります。

このまとめから分かるように、加害者、被害者の立場の違いによってメリット・デメリットがあります。


加害者にとっては『物損事故』で処理したほうがメリットが大きいですよね。

・違反点数が加算されない
・刑事罰に問われない


この2点。ですから加害者側から『物損事故にしてほしい』とお願いされるケースもよくあります。

逆にケガなどの被害を被った被害者にとっては『物損事故』で処理するとデメリットが大きい場合があります。

・物損事故で処理した以上、治療にかかった費用などは負担されない
・実況見分などが簡素化されることもあり詳細な事故状況の証明が後々困難になる

物損事故で処理された事故によって身体を痛めた患者さんが来院される場合もあります。

その際、保険会社から治療期間の短縮や打ち切り、治療部位の交渉が難しいケースもしばしばみられます。

丸く収めたい、大事にしたくない、加害者がかわいそう、と同情して物損事故で処理したものの、自分の治療がちゃんと補償されずそのまま泣き寝入り、なんてことにならないように知識を身につけておく事が重要です。


事故の状況や双方の合意が得られている場合など、シチュエーションはさまざまで、外部の人間である先生方がとやかく言うことでは無いですが

『事故によってケガをしたなら人身事故』


と理解しておくと間違いないでしょう。


この事故処理は最初が肝心です。あとからやっぱり『人身事故で…』は通じません。

初期対応の時点でちゃんと対応できるように今回の内容をよく覚えておいてくださいね。



ではまた次のnoteでお会いしましょう。

ありがとうございました。

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