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IPS細胞の本を読んで|老後が楽しみになって来た

山中伸弥先生のIPS細胞についての本を読みました。

本書を読んだ理由は、昨年は小保方春子さんのSTAP細胞の本を読むなかで、本家というかさらに以前から研究されている山中先生のIPS細胞とは何が違うのかというのが気になって仕方なくなり読んでみたのです。


ぼくたちの老後も楽しみだなと予感させる

率直な感想は明るい未来を感じました。特に今の中年世代以降の方々。
それより若い方々は老後についてはまだまだ先と思うのではないでしょうか。中年以降は、自分もそうですが自分の親世代についてはすでに老後の可能性が高く、老後の生き方や終活などをかなりリアルに考えることでしょう。

リアルに考えてしまうのは病気の不安です。長く生きているとどうしても体にガタが来ます。細胞が分裂を繰り返し常に新しい細胞に置き換わるものの実は分裂回数は限度があります。それゆえ、生き物は分裂を繰り返していくうちに若さが徐々に失われやがて死が訪れます。本書を読んでそう理解しました。

自分の未分化の細胞をストックできていたら未来が明るい

心臓、肺、脳など体の臓器はすべて細胞でできています。未分化の細胞とはその分化前の細胞のことです。本書でも取り上げられていますES細胞です。

このES細胞があると、健康なうちにES細胞を培養しておいて臓器を作っておいて、不調になったときに置き換えることができます。そんなことができれば老後の健康寿命もかなり長く取れるのではないかと思いました。

自分の未分化細胞から臓器を用意するにあたり、2つの問題点

自分の未分化の細胞を用意しておいて、何かのときにそこから臓器をつくるのが一番副作用がなく理想です。だが、現実的には2つの問題があるようです。

1つ目は倫理上、現実的問題です。ES細胞自体は胚から作られます。胚とは受精卵です。卵子は女性が一人の女性が一生に400個程度しか生み出さない細胞です。倫理的にも技術的にも、大量の人間のES細胞をストックすることなど難しいといえるのではないでしょうか。

2つ目は時間とコストです。未分化の細胞を臓器まで作り直すには相当の時間とコスト(お金)がかかります。病気の進行は通常待ったなしです。

なので現実はむずかしいのです。

ES細胞獲得の解決案)IPS細胞の培養

ES細胞は胚(受精卵)などから用いて取り出します。実際には確実には取り出せないため大量の受精卵が必要になるのです。動物実験ではできてもさすがに人間では倫理上の問題がはかり知れません。

大量のES細胞の獲得が実現できそうなのが山中教授が発見したIPS細胞です。IPS細胞はもとは皮膚などの分化済みの普通の細胞です。その細胞の中のわずか4つの因子を書き換えることで、細胞を未分化状態にさせられることを発見しました。

これであれば、倫理上の問題をクリアしやすくなりますし、ES細胞と同じ未分化細胞の大量獲得のチャンスが広がります。これは普通の細胞から得られるので副作用の少ない未分化細胞の発見チャンス拡大につながります。

臓器製造の解決案)副作用の少ないES細胞の収集と培養

時間がかかる問題の解決には、副作用の少ない細胞で作られた臓器の培養です。たとえば血液型はA,B,AB,Oと4つありますが、O型だけは他の血液型に輸血ができるという特性があります。

同じ原理で、人の中にも一定の割合で副作用の少ない細胞を持つ人たちが存在します。その数は数パーセントと少ないようですが、その方々からES細胞を集めて培養しあらかじめ臓器を作っておけば、いざというときに臓器移植ができそうな予感がします。

これは生体移植ではなく、培養臓器移植なので提供者による生体に負担はありません。・

山中教授のすごいところ|「分化させる」ではなく「未分化にする」に着眼

2006年にiPS細胞の発見に至りましたが、その発見には人とは違う着眼点が功を奏したようです。

当時の未分化細胞は1981年に発見されたES細胞でした。科学者たちはこの未分化の細胞をどの臓器に分化させられるかの競争でした。

臓器によってつくりやすいものとそうでないものがあったようです。

山中教授の研究室は予算も少なく分化の方面は太刀打ちできないと考えていたようでした。そこで、ES細胞では人間適用が難しいことを考えて、もっと簡単にES細胞にあたるものを得られないかと考えたのです。

状況をみて着眼点を変えることに対して山中教授のすごさを感じました。
ただ、当時研究者が少ないのは理由があり、そこで理論上ではできるけど難易度がすごく高いからでした。

それを不断の努力が幸運も引き寄せ発見に至ったようです。

STAP細胞ではもったいないことをした

そうなるとSTAP細胞はどうだったのでしょうか。STAP細胞は、健康な細胞にストレスを掛けると初期化されるという現象を発見したのが始まりでした。

研究としては、筋がよいものでした。実際に発見の兆候がありましたし、海外では今でも研究が続いているようです。しかし、日本では学者の見栄というか成果の取り合いのようになり、結局利権争いの末やむやになってしまったと言えるのではないでしょうか。

小保方さんは研究者のひとりです。失礼ながら若手故研究チームのます席でした。もっと中心となって研究を進めていた責任のある方がいたのです。しかし、その方々はうまく雲隠れして出てきませんでした。

小保方さんの博士論文の改ざん問題は、当時の教授が承認した論文とは異なる論文(手違いにより書きかけなもの)が提出され受理されてしまったという事実があります。これを全部提出者(小保方氏)のせいにするのはどうかなと思ってます。大学側の論文の承認から受理の仕組みに突っ込みどころ満載です。

そんなこんなで日本ではSTAP細胞はだいぶ残念な印象になっているようです。もっと研究そのものにフォーカスし、スキャンダルに熱を上げなければ違った未来があったようにも思えます。

とはいえ、日本では叶えられませんでしたが、海外では研究も続いているようなので、未来は明るいと思っています。いつか日の目を見ますように。

#3行日記 : 嘘も方便・結果できていればよいという考え方

本書を読むなかで、山中教授がiPS細胞の研究をするにあたり、研究技術でまだできてないことを「できます」といって進めていることがあったようです。見込みはあったけどそこまでできていない状態であったようです。
しかし、最終的にはできる状態にして研究に挑んだようです。

ウソも方便といいますか、最新分野に突っ込むにはそれなりのリスクを許容してでも進むことが必要なんだなと思いました。
そこで、いちいち目くじら立てても多分進まないのだと思いました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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