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#卒業生インタビュー#03鈴木祐太郎さん#Ridgelinezサービスデザイナー#2017卒

鈴木祐太郎(すずきゆうたろう)
Ridgelinez(リッジラインズ)株式会社
趣味:映像制作、ゲーム

2017年3月 千葉大学大学院修了
2017年4月 富士通デザイン株式会社(現:富士通株式会社デザインセンター)         に入社
2021年9月 同じく富士通系列の会社:Ridgelinezへ異動

こんにちは、インタビュアーの松平です!🐕
今回インタビューするのは、Ridgelinezの鈴木祐太郎さん。
千葉大学のUIデザインの授業でTA(ティーチングアシスタント)として指導してくださいました。


祐太郎さんの根底にはどのようなポリシーがあるのか、潜ります!

このnoteでは、千葉大学デザインコースの専門分野である4本柱(プロダクトデザイン・コミュニケーションデザイン・環境デザイン・トランスポーテーションデザイン)の話が出てきます。それぞれの柱の詳細は下記のnoteでチェック!
☞目次
・サービスデザインはいろんな着地点があって面白い
 
-卒業後の進路を教えてください。
 -富士通デザインに入社した決め手は?
 -千葉大学のデザイン学科を選んだ理由は?

デザイナー=未来予想図を描ける人
 -自分のデザインで大切にしていることはありますか?

サービスデザインはいろんな着地点があって面白い
 -学生時代はどのような活動をされていましたか?

無理だと思ったときに無理って言う
 -卒業研究のテーマはどのようなものでしたか?


サービスデザインはいろんな着地点があって面白い

──卒業後の進路を教えてください。

新卒で富士通株式会社のデザイン部に入社し、インハウスの"サービスデザイナー"として勤務しています。今年の9月からは本社を離れ、"Ridgelinez"という富士通系列の会社に異動しました。今は簡単にいうとコンサルタントのような仕事をしている感じですね。

異動前はインハウスデザイナーとして会社内部にデザイン思考を広めつつ、富士通の新規事業立ち上げに参画するのがミッションでしたが、現在はその知見を社外に向けて提供し、コンサルティングを行うような仕事に就いています。


──
富士通デザインに入社した決め手は?

富士通のデザイナーさんに指導していただいたサービスデザインの授業がきっかけでした。

サービスデザインって「こういうものがあったら世の中素敵だよね」というスタンスで、アウトプットの形が決まってくんです。それは、空間だったりアプリだったりして、アウトプットにいろんな着地点があるところが面白いと思ったんです。

あとは、自分の興味の幅が広かったこともあって「上流の部分にいられるデザイナーになれば、様々なアウトプットにも首を突っ込めるのでは?」とも考えていました。そういった背景の上で、大学の授業でいろんなメーカーから来てくださる先生方の話を聞いて、自分の興味だけでなく
「デザインとしての幅の広さ×実現できるビジネス規模の大きさ」
の結果として一番携われる幅が広そうだったのが、富士通のサービスデザインだったのかなと思います。

雑談①千葉大学の授業について
千葉大学の授業は選択肢が多く、いろんな分野の授業を取り続けることもできるし一つの分野に絞っていくこともできるのが特徴ですよね。
僕は分野を絞っていく中でも、「スケッチなどのものづくりのエッセンスをいろいろ学んでいる」+「趣味の映像制作」みたいに、ある程度得意なものの幅が持てていたのかなと思います。同時に、他の分野のデザインと比較することでサービスデザインが自分にあっていると気づけました。

──ポートフォリオに載せていたサービスデザインの作品は、祐太郎さんがデザインを始めたての頃ものですよね。最初の作品に自信を持てるのってすごい…。

サービスデザインはスキルっていうよりは物事の考え方なので、考えることをやめなければどんどん精度が上がっていくと思いますよ。自分の作品を恥ずかしいなと思えるのは成長した証、と思うようにしています(笑)。


──千葉大学のデザイン学科を選んだ理由は?

高校生の頃は、デザインがどんなものかあんまり分かってなかったですね。絵を描くんでしょって感じ。でも高校生の時から漫画の模写や映像制作をやっていて、「手を動かす」ことが好きでした。それと、得意だった理系の要素を掛け合わせたときに合致するのが千葉大学のデザインだったんですよね。

雑談②進路について
千葉大学のデザイン学科だけでなく他大の建築学科も併願していたので、建築に進む道もあったし、数学が好きで数学の先生になる道もありました。
当時はデザインって何をするものかはわからなかったけど、今では自分のエッセンスとしてデザインの道が合っていたと感じます。


デザイナー=未来予想図を描ける人


──
自身のデザインで大切にしていることはありますか?

なかなか難しい質問ですよね、これ(笑)。
だけど、敢えて挙げるとしたら「妄想力・想像力」と、「自分のデザインの未来を意識すること」の2点を大切にしているかな。


1.妄想力・想像力

デザイナーに限らずものを作る上で大事なのかもしれないですけど、僕らデザイナーはまだ世に無いものを作るのが仕事です。でも、これから作るものが本当に良いかどうかって何も無い状態だと誰にもわからないですよね。
そういった状況で、「こんなものがあったらよくないですか?」と未来予想図を一番最初に描けるのがデザイナーだと思っています。その上で、

①これから世に生み出されるものが、「こんな価値を持っていてこんな見た目でこう機能するから世の中の人が幸せになるんじゃないですか」というビジョンをいかに高い解像度で思い浮かべられるか

②それを周りに伝える / 自分で確認するために具体的な形に落としこむ

ことが大事かなと思っています。
だから妄想力・想像力は、大切なんじゃないかなと思います。



2.自分のデザインの未来を意識すること

会社に入ってデザイナー以外の人と仕事をする機会が多くなる中で、デザイナーとしての自分の立ち位置がどうあるべきか?を考えることも大事だと思うようになりました。このことを、僕のお世話になった先輩は「文化を醸成する」という言葉をよく使っていて、これはその先輩の受け売りでもあるけど、例えば、

”日本の文化として名前を出さない美徳が醸成されてしまったせいで、日本のデザインの歴史をデザイナーの名前で追うことが難しくなっています。この弊害として、「再現性が無い」とか、「誰がどんな作品に影響を受けたのかがわからない」ということがあります。(SNSが発達した時代では名前を出すことのリスクがあるから一概に良いとは言えないけど、)いいものを見つけた時にメーカーがわかっても、誰が作っているのかまでは追えないですよね。”

という話をしたことがありました。

デザイナーとしてデザインすることによって、今後世の中にどう良いことが起きるか?という問いに向き合っていく、みたいなところを先輩がよく言っていて、すごく感銘を受けました。世の中にいい影響を与えるとか、自分の作ったものです!って胸を張って言えるようにデザインすることを自分のマインドとして大切にしたいです。



──それを
行動に移すとしたらどういうものになっていくのでしょうか?

その先輩が主体となって、「富士通のデザイナーの顔を見せましょう」というマインドで、”FACE”というウェブサイトを立ち上げました。

今後のインハウスデザイナーのあり方として、「組織ではなく個人としてのデザインに責任を持ち、その成果を可視化していかなければ」みたいな、ある種の危機感を持って自分たちでゼロから企画したものです。

「どう行動に移すか」っていうところですが、今の世の中「考えたものを作り切る」ことが学生でもやりやすくなってきてるのかなと思います。クラウドファンディングだったり、やろうと思えば使えるものがたくさんあったり。できないと思って勝手な制約を設けず、自分でやりたいことを企画して最後までやり切れるといいなと思っています。



──
「やり切る」ことは頑張れば可能ですが、社会からも認められることって相当ハードルが高いのではないでしょうか…。社会的評価と自分の評価のバランスはどう見極めていますか?

自分がいいと思っているものと、社会的評価や一般的な価値観とのチューニングってすごく大事だと思っています。自分が作りたいもの、好きなものの価値を追求することは大事だと思うんですけど、その上で、「社会が何を求めているのか」を考えなければならない。デザイナーとして、社会との繋がりを持ちながらあるべき未来の姿を世の中に伝えることも僕たちのミッションになるんじゃないかな。
極端な例ですけど、このご時世で人と人が強制的に密になるサービスを作っても認められないですよね。結局、社会との繋がりは捨てられないものなのではないでしょうか。

この時、主観と客観を使い分けることがとても大事で「こういう価値観って存在するんじゃない?」という仮説を検証して伝えていくなど、根拠が伝わるものを見せなきゃいけないと思います。

雑談③自分の作品に対する自己評価基準
──検証って客観的に評価するのに役立つ指標の一つですが、デザインする中で「厳しい自分」と「甘い自分」の評価をどう考えますか。

難しいね(笑)。
いろんな自分がいることはすごく大事で、甘い自分がいちゃダメってことはないと思います。自分の作品や社会に出てきたものに対していいところを探せる目っていうのは求められると思うけど、その上でクリティカルシンキングなど厳しい目も必要だと思います。さっき「社会とのつながり」という話をしたけども、その一方で難しいのが「良いデザインは多数決では生まれない」こと。

例えば、ロゴ案を選ぶために100人にアンケートをとってみたからといっていいものが選ばれるとは限らないですよね。それだったら専門家が評価した方がいい。いろんな人の話を聞いて、本質を見極めて、そこを採用するっていうところが大事じゃないかな。

あとは、「2つの案のどちらがいいですか」って聞いたとしたら好き嫌いの話になっちゃうじゃないですか。問いの立て方も大事になってくると思うので、いろんな自分を見捨てないで飼ってあげることと、その上で社会に目を向けつつもうわべの言葉に釣られない、という2つが大事だと思います。


〜ここまでのお話で、プロのデザイナーとしての祐太郎さんのポリシーが見えてきた気がします。ここからは学生時代について深ぼることで現在の祐太郎さんの考え方ががどのように形成されたのかに迫ってみました!〜


サービスデザインはいろんな着地点があって面白い


──学生時代はどのような活動をされていましたか?

僕はシステムプランニング研究室という、プロダクトデザインやサービスデザインを専門とする研究室に所属していました。
コンペに関してはめちゃくちゃ出していたわけでもないけど、デザイン学科以外の友達とアプリを作るビジネスコンペに出したり、Adobeの学生アンバサダーもやったりしていたので、学外のいろんな人との出会いが印象に残っています。そこでの繋がりで、今でも一緒に映像を作ったり、サービスを作ったりしています。



──もしよろしければ、学生時代の最初の頃の作品や印象に残っている授業があれば見せていただけませんか?

黒歴史を一緒に見ましょう(笑)。

当時の授業だと、企業ロゴトレースとか、パッケージトレースの授業がなんとなく印象に残っています。

よく「UIトレースをして」って言われるのは、デザイナーの意図をどれだけ汲み取れるかの訓練になるからだと思います。創意工夫をキャッチできるかどうかで物事の見え方が変わるんじゃないかな。

例えば、改札のICをかざすところの角度とか…。あれをただ「使いやすいな〜」で終わるんじゃなくて、(自分が再現できなかったとしても)そこに工夫があることを知ってるかどうかで全然世の中の解像度が変わりますよね。デザイナーの気配りや思考をなぞれる力がトレースにはあると思います。1年生の時はそこまでの深い意図は読み取れなかったけれど、今思うと良い授業だったな〜って思ったりはしますね。



──私は授業でトレースした時、読み取る時の意識の仕方がわからなくて「うつしただけ」で終わってしまいました…。「気づける目」はどう養っていきましたか?

特にきっかけがあったわけじゃなくて、すごいダサい作品を見せると……。

ロゴを作った上で、「海外のコンペサイトに応募して賞金を稼いでね〜」という授業があって……。今見ても地獄……。出したくないな(笑)。
清涼飲料水のメーカーのロゴを作ろうと言われて、当時僕が出したデザインが……



名称未設定のアートワーク 7

※祐太郎さんのお話を元に松平が代描したイメージ画像です


まず、ロゴですらないよね(笑)。

当時、どういうロゴがいいとされてるかをわかっていなかったんですよね。さっき社会的評価と自分の評価をどうするかって問題がありましたが、まだ色々わからないうちは、世の中で評価されているデザイナーや良いとされているものを知り、自分との違いを考えるといいと思います。(「いいかどうか」はお金を稼げているかとか、グッドデザイン賞などのアワードを獲得しているかとかいろんな尺度があると思っています。)
「社会的にどう評価を受けているのか知る」っていうのはありがちだけど大事なことだと思うんですよね。そして、自分が「これいいですよ! 」と思っているだけで思考を止めないで、もっと良くできないかっていう、ある種の疑いの目も必要になってくるんじゃないかな。

「知ること」はシンプルだけど難しい。
情報収集のアンテナを張って、展示会に行くでも、Twitterで有名な人をフォローするでもいいと思うけど、更に言語化したり要素の分解や価値の深掘りをしたりするのも大事だと思います!

ーーーーーー
あとは、コミュの授業も楽しくて、ただパッケージを作るだけじゃなく、コンセプトからターゲットを決め、その人にどういうものが刺さるか、というところで、こちらの飲料缶のデザインの課題に力を入れました。

03_package(仮)


──これが学部時代の作品?! めちゃくちゃリアルですけど、ツールは何を使ったんですか…!!

照れますね〜(笑)。
これはイラレで描きました。いわゆるイラレレンダってやつですね。実物サイズでめちゃくちゃな量の紙に印刷して、少しずつデザインを変えていきました。これは完全に自慢なんですけど、クラスの中で一番評価が良かったのでサントリーのグラスをもらえて、今でも使ってます(笑)。

アプリやブランディングっていうエッセンスはコミュの授業から影響を受けたと思います。

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〜学生時代から授業や自主制作でバリバリ活動していた祐太郎さん。祐太郎さんの卒研の内容への期待も高まります……!〜


無理だと思ったときに無理って言う


──
卒業研究のテーマはどのようなものでしたか?

卒研は「千葉県のお土産を作る」っていう、研究室のプロジェクトでパッケージやブランディングをやっていました。


──ちなみに、卒研って社会に出てからも自分の代名詞になるのでしょうか?

会社に入って「卒研何やった?」とかは聞かれるね。でも自分次第だよ。
全て語らなきゃいけないルールはないから。僕はどっちかっていうと黒歴史派なので、このインタビューを受けていいのかなって迷ったところもあるんですけど......。
最終的には完成して卒業することができたけど、いろいろな出来事が重なって一時期学校に行っていなかったんですよね。色々なことに手を出しすぎてパンクしてしまって、卒研だけでなく意匠展も、考えうる限りのありとあらゆる方面に迷惑をかけて卒業した人間なので......。

でも、そのときに助けてくれた先輩や同期がいました。たくさんの人に迷惑をかけつつ、その恩をその人に返すのか社会に還元するのかは色々選択肢があるので、大変だと思った時は周りを頼れることも大事なスキルだなと思いました。

自分1人で全部やってると思わない方が良いよ
っていうのが過去の自分へのアドバイスですね。僕も卒研シーズン真っ只中に引きこもってしまってもなんとかなったから、しんどくなった人がいたら元気出してほしいです!



──
そんなことが......!現在、自分のキャパはどう管理しているのですか?

副業をやってたり......今でもギリギリで生きてるね(笑)。
1人で作るものだったら自分が投げ出してしまえば終わり。だけど、やっぱり人と作る方が多いじゃないですか。
会社に入った時に強く感じたのが、無理だと思ったときに無理って言うのが大事ってこと。自分がやらなきゃだめだ、というのはみんなを不幸にしてしまうと思います。無理な時は無理と言える関係性を作ることも大事だし、いいものを作るために自分の忙しさも1個のリスクとして考えて管理することは社会に出てからも必要なんじゃないかなと思います。

雑談④趣味と仕事の関係
ーお仕事だけではなく自主制作もなさるんですね!!
富士通は副業OKなので。僕、ゲームが好きなんですけど、ゲームの大会のPVを趣味で勝手に作っていたら仕事として依頼を受けたりとか、最近は友達と漫画作りたいとか、色々やっています。仕事以外のものづくりで言うと副業が多いかな。趣味自体が仕事につながってますね。


──第ー線のデザイナーとなると、尚更「無理」のハードルが高そうですよね。

作業時間を早くするとか効率化していく、みたいなところで対処したりね。(そうすると仕事が増えることもあるんですけど(笑))キャパの管理っていう部分も自分を客観視するための工夫かなあと思います。

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──抽象的で難しい質問が多い中、私が理解しやすい言葉を選んで話してくださったと感じます。本当にありがとうございました!

言葉も大事にすると良いですね。自分のイメージを相手に伝えるためにも絵だけじゃなくて言語化は大事だと思います。


もっと深く潜りたい方はぜひ意匠展へ
日程:2022年3月18日〜20日
場所:千葉大学墨田キャンパス
デザインコース一同、皆様にお会いできることを心待ちにしています。

(インタビュー・編集:松平 彩香)


今回は卒業生インタビューの最終回でした! ここまで読んでくださりありがとうございます。インタビュー企画いかがでしたか?

インタビューを書き起こしながら、
先輩たちは私たちよりずっと先を歩いていて追いつくことは難しい。
だけど私たちがそれを見ることによって、少しは未来の自分の歩き方に繋げていけるのかなと思いました。

インタビュー企画は今回で終わりですが、意匠展はインタビューでお見せしたような、学生個人の考えを深掘れる展示になっています。このようなご時世ですが、実際に会場にお越しいただき学生ひとりひとりの制作に是非"潜って"みてくださいね!


意匠展サイト
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