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ぼくの自由研究 - NFTアートがひとつ売れるまでの記録 その1

巷で話題のNFTアート。ここ1年くらいで日本でもポツポツ話に聞くようになり、日本のVRアーティストの作品が1300万で売れたとか、クリスティーズでデジタルアートが75億円で売れたとか、何やら景気の良さそうなニュースを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

NFTアート、というかNFTとは何か、といった話はちょっと検索すればいくらでも出てくるので詳しくは触れませんが、「非代替性トークン」と言われても、いまいちピンとこないのではないでしょうか。

ましてや変動が大きく、リスクも多そうな仮想通貨が絡んでいるとなると、何だか怪しそうな気配もあり、いまいち手を出しづらい印象がある人も多いでしょう。

とはいえこういったものは、実際にやってみないことには何もわかりません。ちょっと調べてみると、始めるだけならそれほど難しくはなさそうだということが分かったので、小遣い稼ぎのつもりでとりあえずトライしてみることにしてみました。もしかしたら「あわよくば」ということもあるかもしれませんし。

まずは仮想通貨ETH(イーサリアム)を準備。

私もこれまで仮想通貨には手を出してこなかったのですが、NFTアートを売買するには絶対に必要なものです。まぁこれも勉強ということで、色々調べてやってみました。この辺りの手順も、わりと情報はたくさんあるので割愛しますが、それほど手間もなく、すぐに準備することができました。

手順を簡単に説明すると、

① 仮想通貨の取引所につなげるための口座を開設し、日本円を振り込む。
② 口座から取引所に日本円を入金し、仮想通貨(ETH)を購入。
③ 仮想通貨をWeb上でやりとりするためのウォレット(METAMASK)を設定。ETHを送金。

こうして見ると複雑そうに見えますが、実際にやってみると驚くくらい簡単にポンポンと進んで、あっという間に準備はできてしまいます。取引所は色々あり、調べるごとにランキングも違ったりしますが、この手の情報は株などと一緒で仕込み記事も多かったりするので、自己責任で吟味して決めるしかないかと思います。

マーケットプレイスを選んで出品。

NFTアートを取り扱っているプラットフォーム(マーケットプレイス)は数多くあり、最近では日本国内でも増えつつあるようです。

私は、とりあえず初心者が始めるにはよさそうな「Opensea」に出品してみることにしました。NFTを扱うのに必要なお金、いわゆる「Gas fee(ガス代)」が安そう、というのが大きな理由です。通常のマーケットプレイスでは、出品するのにも売買するときにも、それなりのガス代がかかる(今はETHが高騰しているのでとにかく高い…涙)ようなのですが、Openseaの場合はとりあえず最初のNFT化に若干かかるだけで、その後の出品にはガス代が必要ないのが特徴です。

https://opensea.io/

で、さっそくOpenseaをのぞいてみると、何というかそこには不思議な世界が広がっていました。

これはアート…なのか?

実際にOpenseaのマーケットを見てみると、こんな感じになっています。

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正直、この様子を見て思ったことは、

金額の相場と作品の傾向がわからない

ということでした。一見すると、それほど手のかかってなさそうなものや、ゲームのアイテムなどが多数並んでおり、値段もマチマチです。かと思いきや、何でもなさそうなキャラクターのピクセルアートに高額な値段がついていたりします。

色々な作品を見て分かったことは、どうやらこれはトレカのように「コレクション」したり「転売」したりするのが主流なのではないか、ということでした。NFTアートの特徴として、転売された場合にも多くて10%程度、制作者にフィーが支払われるということがあります。とにかく安くたくさん販売している人は、それが目的なのかもしれません。

そういった状況から考えると、いわゆる「アート」や「オークション」という響きから想像していた雰囲気とはちょっと違ったようです(少なくともOpenseaは)。

ちなみに下記の作品たちは、NFT界隈で特に人気なコレクションです。とりあえず作っている数が半端ない…。

https://opensea.io/collection/0n-0ne-force-0fficial-collection

https://opensea.io/collection/boredapeyachtclub

https://opensea.io/collection/cool-cats-nft

後から分かったこととしては、どうやらマーケットプレイスによって売買されている作品の相場や傾向が大きく違っていて、Openseaはその名の通り最も開かれた、いわばNFTのフリマのような存在なんだな、ということでした。

とはいえ、全くの初心者が挑戦するにはこれ以上なく参入しやすい場ではあるので、とにかく試しに何か出品してみようと思い、過去に作ったこんなようなものをいくつか出してみました。

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はい。なんだかよくわからないですね。

これは、動画をある方法でスキャンして画像化したもので、個人的には面白いと思っているのですが、こういう「よくわからないけどカッコ良さそうなもの」がウケるのではないかという安直な考えがありました。

で、案の定…

売れない。


なるほどなるほど、と。たしかにさっき見たような市場で、これは合わないだろうなとは薄々思っていました。設定金額も相場がよくわからないし、後から下げることはできないみたいなので、とりあえず欲張って1ETH(出品当時の金額で34万円程度、執筆時点では43万円程度)とかにしてました(笑)

そりゃあ売れないですよね、と。ならばということで、もうちょいポップなものならどうだと、過去に描いた落書きのようなイラストも色々出品してみました。

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が、

売れない。

こうなったら、ここはやはり何かトレンドに合わせて新しく作るしかないかと考えました。

Processingとの出会い

とにかくOpenseaの場合は何か「ポップ」で「量産」できるものを作って、薄利多売方式でいくしかないのかな、というのが自分なりの分析結果でした。そう考えると、1枚1枚丁寧に作ったものは割りに合わないだろうということでたどり着いたのが、「ジェネレーティブ・アート」でした。

ジェネレーティブ・アート(もしくはジェネラティブ・アート)とは、プログラミングを使って何らかのビジュアルなりインタラクティブなコンテンツなりを自動生成したアート、のようなものです。考え方としては結構前からあったものなのですが、NFTアートには向いているのではないかと思います。

プログラミングに関しては過去にちょっとだけ経験はあるのでそれほど抵抗感はなかったのですが、最近は全然やっていないのでどうしたものかと調べていると、どうやらProcessingという言語が良いのではないかというところに辿り着きました。

ProcessingはMITメディアラボが開発した、ビジュアル表現に特化したJavaベースの開発環境ということで、存在を知ってはいたのですが、全く触ったことがありませんでした。ところが実際に触ってみると、思った以上にシンプルで、ビジュアルに特化している分、面倒なお作法も少なく、わりと簡単に理解できるものでした。正直、何で今まで触ってこなかったのだろうと思うくらいです…。

デザイナーがコードに触れるのにはうってつけの言語だと思いますので、興味のある方はぜひ挑戦してみてください。とっかかりとしては、下記の記事がわかりやすかったです。

ということで、簡単なプログラムではあるのですが、最初に作ったピクセルアートがこれらです。

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これらは、いわゆる乱数を使って炎や雲を自動的に描画しているので、実行するたびに固有の動きをするアニメーションを作ることができるプログラムです。よし、これならボタンひとつで量産できるぞ…しめしめ、と思ったのですが…

まったく売れない。

売りに出すとほんのちょっとだけ「いいね」が付いたりするので、公開されてはいるはずなのですが、そもそもまったく見られていない印象でした(OpenseaはView数が可視化されています)。これは作品があまりにもシンプル過ぎたか…と思い、今度はまったく別の方向で狙うことにしました。

ターゲットはほとんど外国の人たちなので、やはり日本人らしさを出した方がウケるのではないかという、これまた安直な考えで、見た目もそれなりに凝ったものにしてみようと思いました。で作ったのがこちら。

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はい。漢字です。

漢字は海外で人気ですし、量産にも向いています。元々3DCGは扱っているので、この辺はblenderでちょちょいと。見た目ほど手がかからない方法で作っているので、量産体制もバッチリです。これで3つ売れたらどんどん増やしていくかーと思ったのも束の間…

ひとつも売れない。


こうなったらもう半分ヤケです。とはいえ、量産できるからと言って、自分が作って面白くないものはダメだなという思いもあり、別の策を練ることにしました。せっかくならProcessingを使って、自分でも想像できない結果が描けるもので、いい感じに…ということで、また何か新しいものを作ろうと思い立つのでした。

と、ここまでが始めてからだいたい一週間くらいだったと思います。

もうこういうのは思い立ったらすぐ行動。勢いで新しい技も増やし、一個も売れてはいないものの、技術的な収穫はありました。ただ、やっぱり売れて欲しい…。

まぁ考えても見れば当然なのですが、出品したからと言って、みんなの目に入るわけではないのですね。それを拡げる必要があるのです。Openseaの場合は特に、とにかく参入障壁が低いので、作品の流通量が膨大で、出品してもOpensea上ではすぐに流れていってしまいます。

しかしながら、「NFTアートの出し方」についてはたくさん情報があるものの、「売るためのコツ」「拡げるためのコツ」については、ほとんど情報がありません。

海外の記事を探ってみても、結局は「出品したらSNSで広げよう」ということくらいしか書いてありません。とはいえ、自分のフォロワーはほとんど日本人なので、NFTを活発にやっているという人はまぁいないでしょう。とりあえずTwitterとInstagramは普段とは別のアカウントを作ってみましたが、ハッシュタグを付けて投稿してみるものの、秒で「Send DM!」みたいな釣りが来るばかりで、なかなか広がってはいきません。

とりあえずここまでやってみて分かったことは、「焦りは禁物」ということです。先にリンクを貼ったような人気のアカウントは、長い年月をかけてファンを増やし、量産し続けることでブランド化しているのだろうと思いました。

…といったところで、ちょっと長くなりましたので次回に続きます。ここからは、さらに新しい作品の制作と、別のマーケットプレイスにも挑戦していく2週目の動きになります。乞うご期待。

<ここまでの教訓>
・設定金額は欲張らずに、まずは安く出せそうなものから出すのが吉。
・出品したからと言って、コレクターの目に止まらなければ意味がない。



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