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優秀なプレーヤーが優れたリーダーになるとは限らない 『ISO通信』第86号

「部下に『失敗してもいいから、自分で考えてやってみろ』と言ったら『失敗することはないと思いますが、失敗から学べという意味なら、チャレンジングなやり方でやってみます』と言われたよ。優秀だけどかわいくない」
某社でマネージャーの立場にある友人から聞いた言葉です。
指示を出した相手は、20代の若手で仕事はできるそうです。
「頭のいい部下を持つと大変だね」別な友人がそう言うと
「あいつは俺のことをバカにしてるね。学歴は高いけど人間性に問題ありだな」
とマネージャー氏は言っていました。
 
「若いうちは、ちょっと生意気なくらいの方がいいよ」
「イヤ、素直じゃないやつは、結局は伸びないね」
「おおらかな目で見てあげなよ」
そんな会話の後、飲み会の席は別な話題に移りました。
 
生意気だけど憎めない、と思われている人は組織の中で成長していきますが、生意気なだけだとやがて組織から浮いていくことになります。転職相談の会話において「私だけがエライ」的なオーラを放っている人にたまに会いますが、組織内で浮いちゃった結果、転職したくなったのだろうか、と心配になります。
 
知的レベルや事務処理能力が高い人は優秀なプレーヤーになれますが、相手の感情を理解して行動できないと、リーダーとして部門を統率することは難しくなります。人口が増え続け、経済が成長していた時代には、社員を駒のように扱うマネージャーでも成果を上げることができました。しかし国内の人口は減少する時代になり、転職が当たり前となった現在、駒のように扱われた社員が転職した後、会社が新たな社員を採用することは簡単ではありません。後任の社員を採用できなければ、部門の目標を達成することは困難であり、社員を駒や部品のように扱うマネージャーは減ってきました。
 
飲み会の席ではないのですが、少し前に以下のような場面がありました。
「辞められちゃ困るからって会社がこんなに甘くなっていいんですか。我々の時代はどやされたり、どつかれたりしながら、仕事を覚えていったのだと思いますけど」
「時代が違うと言えばそれまでだけど、今の若い人はかわいそうだね」
「かわいそうなことにならないように部下をリードしてあげなきゃ」
私は三つ目の発言に同意して
「サーバント型のリーダーシップやEQの高いリーダーの方が、最近はうまくいってるみたいですよ」と付け加えました。

リーダーシップのスタイルは多様であり、企業の成長のフェーズや、トップの性格によっても、どのようなスタイルをとるべきか変わってきます。サーバント型と呼ばれるスタイルは、相手の意見を聞いて支援しながら、組織を理想的な方向へ導こうとするやり方ですが「それでは甘い」という批判もあります。

ちょっと生意気な社員には、サーバント型のリーダーシップを発揮すべきか、力で支配するようなスタイルが適するのか、それにも答えはありませんが、相手によってスタイルを変えると頼りないリーダーになってしまいます。
どんな相手に対しても一貫した態度で臨むことは簡単ではありませんが「部下に対しては支配者のように、上司に対してはサーバントのように」ということがないように注意しましょう。


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