情報化社会のスピード感 『ISO通信』第79号

「世界は常に変化している。現代はこれまでの歴史において最も変化のスピードが速い時代である。しかし、今日を起点とした歴史がこれから始まるなら、2020年代は変化の速度がもっとも緩やかだった時代と評価されるだろう」
これは、トランサーチ(私の所属先)のロンドン本部が各国のメンバーに向けて行なったセミナーで聴いた言葉です。
英語で聴いたセミナーだったので、少し意訳していますが、覚えておくべき言葉としてメモしました。

さて、次の文章は、上記のセミナーで聴いた言葉ではありません。
"やや先ばしったいいかたになるかもしれないが、わたしは、たとえばコンピューターのプログラムのかきかたなどが、個人としてのもっとも基礎的な技能となる日が、意外にはやくくるのではないかとかんがえている。すでにアメリカでは、初等教育においてコンピューター用の言語 FORTRAN をおしえることがはじまったようだ。"
FORTRAN? いつの時代の話をしているの?と思った方もいるかもしれません。しかしこれが、1969年に出版された本(梅棹忠夫 著『知的生産の技術』)にあった文章だと知ったら驚くのではないでしょうか。
プログラミング言語のFORTRANは1950年代に開発されたそうです。1969年当時、アメリカの初等教育において、どのようにプログラミングが教育されていたのか存じません。しかし、日本の小学校でプログラミングが必修化されたのは2020年度です。
IT分野に関して日本は周回遅れと言われますが、アメリカとは半世紀の差があったようです。

(kindleの「あなたへのおすすめ」に従って読んだ)『知的生産の技術』に書かれていた内容をもう少し紹介します。以下、仮名づかいも含めて引用です。
“社会には、大量の情報があふれている。社会はまた、すべての人間が情報の生産者であることを期待し、それを前提として組み立てられてゆく”
“情報産業こそは、工業の時代につづくつぎの時代の、もっとも主要な産業となるだろう”
これらの文章を読んで、著者の梅棹忠夫氏(故人)も変化のスピードが常に最速であることを意識していたのだろうと想像し、冒頭の言葉を思い出しました。

SNSの普及で、すべての人間が情報の生産者になれる時代になりました。社会には大量の情報があふれ、Amazon、Google、facebookなどがおすすめしてくれる情報が、私にとっての身近な情報になっています。そして「50年以上前からプログラミング教育が実施されていた国には、ちょっとかなわない」と思ってしまいました。
しかし、サッカーボールの中に内蔵されたICチップのおかげで、ボールが1ミリだけ線の上に残っていたか否かを判別できる時代です。また、家の鍵をかけ忘れたときに外からスマホで施錠ができる時代です。このようなIoTの分野なら、工業に強みがある日本にもチャンスが残されていそうです。
明治維新の頃や太平洋戦争が終わった頃、日本は先進国と50年以上の差があったのではないでしょうか。IT分野に50年の差があるとしても、きっと追いつけるはずです。

個人的にはIT分野が得意とは言えませんが、知識を常にアップデートし続けることの重要性も『知的生産の技術』に書かれていました。時代から置き去りにされないように、古い本からも新しい本からも学んでいきたいと思います。

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