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特修商法演習 第11回レポート 出光の事件について調べてください(組織再編の事例について) (1) 出光の事件について調べてください(組織再編の事例について)  

2023/12/18

特修商法演習 第11回レポート 出光の事件について調べてください(組織再編の事例について)

 

(1)   出光の事件について調べてください(組織再編の事例について)

  出光興産の会社内では、昭和シェル石油との経営統合に関して経営陣と創業家らの間で激しい意見対立が生じました。この状況で、出光興産は平成29年7月3日の取締役会で公募増資による4,800万株の新株発行を決議しました。

経緯として、創業家らの持株比率はもともと約33.92%であり、彼らだけで株主総会で昭和シェルとの合併決議を否決できる状況でした。しかし、公募増資による新株発行が行われると、創業家らの合計持株比率は最大で約26.09%まで低下し、これにより創業家らだけでは合併決議を否決できなくなります。

創業家らは、この新株発行が不公正であり、自らの持株比率を低下させる目的で行われたと主張し、新株発行を差し止めるために裁判所に仮処分を申し立てました。事件はこのような経過をたどっています。

要点のまとめ:

  • 出光興産では昭和シェルとの合併について経営陣と創業家らの対立が生じた。

  • 出光興産は新株発行を通じて創業家らの持株比率を低下させ、合併決議を否決できない状況を作り出した。

  • 創業家らは不公正な手段としてこの新株発行を差し止めるために裁判所に仮処分を申し立てた。

 

裁判所の判断(東京地裁平成29年7月18日決定)に基づくまとめ:

  1. 主要目的ルールの採用:

    • 裁判所は、「著しく不公正な方法」の判断において主要目的ルールを採用した。

    • 新株発行が特定の株主の持株比率を低下させ、経営陣が支配権を確保する主要な目的であれば、それは不公正な発行と認定される。

  2. 支配権維持目的の検討:

    • 裁判所は創業家らと経営陣が実質的に支配権を争っていたと認定した。

    • 創業家らの持株比率が新株発行によって最大で約26.09%まで低下し、支配権を維持するためには約470億円の払込みが必要であり、これが通常困難であると判断された。

    • 経営陣は合併に反対する創業家らの持株比率を減少させ、支配権を有利な立場に置く目的があると推認された。

  3. 資金調達目的の検討:

    • 裁判所は支配権維持目的が認められたため、経営陣は新株発行計画の合理性について説明する責務を負う。

    • 一般的な財務体質の改善や外的要因だけではなく、具体的な必要性と合理性がない限り、資金調達は認められないとした。

    • ブリッジローン契約に基づく借入金の借換資金調達には合理性がありつつも、戦略投資を理由とする資金調達には認められないと結論づけた。

  4. 主要目的の判断:

    • 裁判所は支配権維持目的が主要であり、新株発行が第三者割当増資ではなく公募増資であったことを考慮して、不公正発行には該当しないと判断した。

    • 公募増資の場合、取締役に反対する株主の支配権減弱は相対的に弱いとして述べ、経営陣の行動において支配権を有利な立場に置く主要な目的が存在するとまで断ずるには足りないと結論づけた。

    • 東京高等裁判所も同様の結論を示し、不公正発行を否定した。

要点のまとめ:

  • 裁判所は主要目的ルールを採用し、支配権維持が主要な目的であれば不公正な新株発行と判断する。

  • 創業家らと経営陣は支配権を争っており、経営陣は新株発行によって創業家らの持株比率を減少させ、支配権を有利に維持する目的があると認定された。

  • 資金調達は支配権維持目的があれば合理的でなければならないとされ、具体的な必要性・合理性がない部分については認められなかった。

  • 最終的に、不公正発行は否定され、公募増資による新株発行は支配権維持が主要な目的ではないと判断された。

 

参照:出光興産の新株発行差止仮処分事件が実務に与える影響 - BUSINESS LAWYERS

 

(2)   興味のある事例について

同様の経済法務に関する実例として、アクティビスト投資家と企業経営陣の対立に関する事例が挙げられます。以下はその一例です:

事例: アクティビスト投資家と企業経営陣の対立

背景: 企業Aは業績の低迷や戦略の違いからアクティビスト投資家Bの注目を浴びることとなりました。Bは企業Aの株を大量に取得し、企業Aの経営方針や構造に不満を抱き、変更を求めています。

主要な対立点:

1.     経営方針の変更:

·       投資家Bは企業Aの経営方針に疑義を唱え、収益性の向上や株主価値の最大化を目指す変更を要求しています。

·       企業Aの経営陣は現行の戦略が将来的な成長をもたらすと信じ、変更を拒否しています。

2.     取締役会の構成変更:

·       投資家Bは企業Aの取締役会に自らの代表者を任命することを求めています。

·       企業Aの経営陣は、自社のビジョンに共感するメンバーを維持し、外部からの介入を拒否しています。

3.     株主還元政策:

·       投資家Bは企業Aによる株主還元策の拡充を提案しています。これには配当増額や自社株買いなどが含まれます。

·       企業Aの経営陣は、将来の成長への投資や財務の健全性を重視し、適切なバランスを維持する立場です。

対応:

·       投資家Bは、通常は主要な株主総会での提案や公開書簡などを通じて、自身の要求や提案を明確に発表します。

·       企業Aの経営陣は、これに対して対話や交渉を試みつつ、場合によっては法的手段を検討することがあります。

結末:

·       このような対立が解決する際には、通常は株主総会や交渉の成果によって合意が形成されます。あるいは、時には企業の経営陣が一部変更され、提案された変更が一部実施されることがあります。

このような事例では、企業の将来の方向性や資本構造に関する異なる視点が対立し、株主と経営陣の関係が緊張することがあります。

 

  参考:アクティビスト投資家と上場会社の対峙 (dir.co.jp)

 

 

以上


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