『魔王』

伊坂幸太郎
講談社文庫 2023 (新装版)

だいぶ前に読んだことがあったが、内容を忘れてしまっていた(私はこれがよくあるので、この読書記録をつけることにしたのだ)のと、新装版の表紙が良かったので、また読んでみることにした。

この著者の本は、『死神の精度』の印象が良かった覚えがある。他の本も面白いのだけど、軽妙な語りが私には軽妙すぎる感じがしてある程度読んでからその後は読んでいなかった。
『魔王』はどうだったかな、、、と思いながら読んだところ、軽妙さがそれほど気になることなく面白かった。

兄も弟も、どちらも魅力的だ。兄は冷静でしっかり者、考えすぎるところがある。弟は純真で誠実。
人生で周囲を魅了してうまくいくのは弟のほうなのだろうな、とほんの少し残念に思うのは、私が兄タイプだから。「考えろ考えろ」という感情に、とても親近感がわく。世の中、考えすぎるとしんどいけど、どうしても考えてしまうタイプというのがいるよね。
兄は日本を良くするために考えて考えて行動した結果倒れてしまうが、私だったらどうするだろう。私もきっと、自分が倒れても行動しようとすると思う。しかしまあ、倒れるまでは倒れるとは分からないのだけど。

なぜか兄が能力を手に入れて、徐々に忍び寄ってくる怪しい影。その忍び寄ってくる様子がかすかに少しずつ描かれているのが想像力を刺激するのも、面白さの理由なのだろう。兄にはもっと生きていてほしかったなあ。

新装版に描かれている男性は、兄な感じがする。冷静でしっかり者。冥界を支配するアヌビスの面?帽子?を頭にかかげている。クールでかっこいい。この絵で頭の中の物語を動かしたので、いっそう話が魅力的になったような気がする。

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