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こんにゃくを煮る


中学浪人してたんです。

国立高専を半年で中退して、翌年に普通科高校を受験するまでの間、ヒマだったので近所のうどん屋さんでアルバイトをしてた時に教えてもらったのがこんにゃくの煮物です。

退学した理由は「ここじゃないな」と思ったからです。自分にとっては正しい選択だったと思っています。

私の担当は基本は洗い場です。時給は350円でした。朝9時に入って、仕込みを手伝いながらうどんを作ります。作ると言っても粉と水または食塩水を入れて機械で捏ねて、足で踏みつけなから何度も伸ばして、ひと晩寝かせます。そのあと麺カッターで引き伸ばしながら切っていきます。それなりにコツがあります。手打ちではありませんが、そこで感じたのは手打ちかどうかは実はうどんの味にはあまり関係ないということです。

昼時はめちゃくちゃ忙しくなります。1時を過ぎると落ち着いてきて、2時からみんなでまかないをいただきます。私は3時に店を出て家で一応勉強をしていました。

作り方は至って簡単で、こんにゃくは三角に切り、うどんの用の出汁に醤油とみりんと砂糖を少しだけ加えて、30分ほど煮込みます。このこんにゃくは定食などにつける小鉢の一つです。もうひとつポテサラもありますが、それは私の担当ではありませんでした。

うどん屋さんでのアルバイトは私の唯一の外食経験です。ここではいろんなことを教えてもらった気がします。

面白かったのはそのお店は不動産屋さんのサイドビジネスでして、不動産屋仲間はほとんど今で言うところの反社の人たちでした。月に1回くらい、彼らが夜にお店で宴会を開くんです。その時は特別メニューを出すんですけど、私はまだ15歳ですが、「お前もよく頑張ってるなあ、困ったらいつでもうちに来いよ」と何度もスカウトされました。みんな優しいいい人たちでした。

そして翌春に1年遅れて普通科高校に入学したのでした。

切り方を変えてまた煮てみた

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