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vol.9 「こんなのを理学療法士の仕事と 思われては困る」 「この研究がいったい何の役に立つのか」 ーー「病い」と「疾患」から読み解く本連載に対する批判

前々回の連載では理学療法士の加藤を紹介した。加藤の病院は寝たきりの高齢者が多いため加藤には、身体機能の回復ではなく、少しでも身体を動かし生活のリズムをつくることが主要目的となるオーダーが出されることもしばしばである。つまり加藤は理学療法としての専門知識を十二分に生かしがたい状況にあるのだ。

加藤はこの点について、むなしさを感じることがしばしばあると話す一方、徒手的療法のような手技療法だけがリハビリではないと話す。たとえば寝たきりの患者の場合、たとえ1時間であっても病室の外で身体を動かせる機会は貴重だ。表面的にはリハビリをしぶる患者も、いざ始めると生きいきし、「リハビリは楽しい」と言って帰ることも多いという。身体機能の回復にとどまらず、同じ空間に人々が集まり、そこで他愛もない会話が生まれること、それによって楽しさを感じられること、それらを全部ひっくるめてリハビリなのではと加藤は考えている。

実はこの記事は、加藤の専門学校時代の同期の斎藤からかなりの批判を受けた。斎藤は加藤からこの記事を渡され「理学療法士の仕事はけっしてこれだけじゃない。

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