ほんの小さな冒険がしたい
そこかしこから外国語が聞こえてくる。
いや、むしろ外国語しか聞こえてこないと言っても過言ではないと思う。ただ僕にはこの光景が懐かしく感じる。
すっかり日常を取り戻した感で溢れ、活気に満ちた伏見稲荷に来ている。
人が多いのは少し憂鬱だが、やはりこうでなければいけない。
これが本来の姿であるべきだと思う。
京都を離れてから毎月のように伏見稲荷には訪れていたが、久しぶりの盛況に、どこかタイムスリップでもしてしまったのかと錯覚してしまう。
僕が今住んでいるのは兵庫県の地方都市で、めちゃくちゃ田舎ってわけでもないが、まったく都会とは程遠い。
そして外国人にとって興味をそそられるような観光資源が無いので、街中で外国人を見かけることなんてほとんどないし、関わることも、道を尋ねられることも外国語を聞くこともない。
おそらくそんな地方都市は日本中に山ほどあると思うが、そんなところに住んでいる人がちょっと都会にでも行こうものなら外国人だらけの街にびっくりするかもしれない。
外国人の受け入れを再開したとかのニュースが流れてきても、どこか他人事のように感じていて現実味が感じられない。
でも、やはりというか、まさに現実は当たり前のように起きている。
そういった事が、自分の見渡せる範囲外で起きているということに少なからずショックを受ける。
京都に住んでいる時は外国人がいることが当たり前で、そんなこと気にも留めたことなんてなかったのに。
どこか少し危機感というか、不安に感じる自分がいる。
毎日を同じようなルーティンで住んでいる地域から出ずに平凡に過ごすのが性に合ってる人もいるだろう。それはそれで良いし、全く否定することもない。
でも僕は違う、と思いたいし、そうありたくはないと思っている。
冒険、と言ってしまうと大袈裟だけど、日常にも刺激が欲しいと思ってしまうのだ。
ちょっと遠出して知らない土地に行く、そんな事だけでもいい。
知らない土地を巡り、空気を感じ、見たことのないモノや風景を見る。それだけで、僕には十分刺激的な体験だ。
時間を見つけて、いや、時間を作って積極的にどこか知らない土地へ足を伸ばそうと思う。
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