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【空想雲上】『キャロル』

映画を鑑賞してから少し時間が経ってしまったが、『キャロル』は僕の中で今年ベストの映画である。

1950年代のニューヨークを舞台に同性愛者(レズビアン)の恋愛が描かれている。

離婚寸前のキャロルと、結婚しようにも全く決断できずに悩んでいるテレーズと二人が、ある日テレーズが働くデパートのおもちゃ売り場で、お互いに視線を感じ距離を縮めていく。

上映中はずっと画面に釘付けで、久しぶりに時間を気にすることなく、最後まで夢中で鑑賞できた作品だった。

スクリーンに映し出されるスーパー16mmフィルムの淡い映像とそこに50年代の様々なアイテムが置かれる。劇中何度も流れるテーマ曲にうっとりとしているうちに映画が強烈な印象を残して終わった。

キャロルとテレーズがお互いに「好きです」とは言わず、じーっと見つめ合っていて、たまに話す詩的な一言が、恋愛の恍惚感を表していて身体の底から熱くなるような思いがした。

本作は同性愛というテーマを扱っているが、異性を愛する人でも全く問題はない。現代の恋愛は旧世代の考え方に締め付けられたり、マーケティングに支配されたりと自由恋愛のようで、そうではない部分が多くあると思う。そういった時代の変化に憤りを感じる全ての人に向けて、恋愛の本質をもう一度呼び起こしてくれるような作品だと言える。

今月末のアカデミー賞でも再び話題に上がりそうなので、ぜひチェックしてもらいたい。

僕は、出会いのシーンでキャロルが手袋を意図的に忘れたように見えた。何度もに画面の端に映し出される手袋…、そして全てを計画していたかのようなキャロルの余裕の対応と、シーンの最後に就業ベルが鳴り響くという演出に「これは…」と深読みしてしまった。

そういった所も楽しめる余白がある様に見えたのでオススメしたい。


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