回転数を落とす眠り
ひどく眠い。眠れないのは眠りが浅すぎるからなのか、それとも夢見が悪いからなのか。どちらでもいいと思える程度には眠くて、どちらでも困るなと思う程度にはこの睡魔は嫌なものに感じられる。
嫌なものというのは考え事をする時に支障が出るからだ。思考を回したい、回して回して回して回転数を挙げてほらもっともっともっと考えないと。
正解なんてないのは重々承知。それでも僕は僕を信用してくれて、そして互いの言葉と思考に対して誠意を持つ相手に返したいのだ。
時間がかかっても良いと言ってくれるけれども時間は有限だし、何より思考をし言葉を探し組み立てて問いかけ答え、相手の答えと問いかけを受けるのが愛しいし楽しいのだからあまり停止させたくない。
言葉と思考も新鮮な内が美味しいし、受けたそれが時間が経つにつれ些細な疑問で変わるのならばそれはそれで美味しい。
僕はいつだってそういった言葉を愛しているし、それに心地よさを覚える。思考を回し言葉のやり取りをしている、それが一方的でなく互いに思考し複数のものを見付ける。
それはなんて魅力的だろう、それがどれだけ僕に悦楽をもたらすのだろう。嗚呼、嗚呼、美しい。有限故に久遠の彼方までとは言えぬが僕は彼とのその時間全てに美しさを見付けた。
けれども、嗚呼けれどもその美しさは彼と築き上げた物だ。故に他の誰かに話してはならない。だってそうなったら美しくない。二人で築き上げた物の美しさ、それを安い同意なんぞで穢されたくない。僕達の間で交わされたものはとても真剣なものだから安い感情(感覚)で組み立てられたものではないのだ。
嗚呼、それにしても眠い。あの美しい時間に触れたいというのに眠い。
どうすれば深い眠りを得られるのだろう。美しい時間を夢でも展開できると思えば深く眠れるのだろうか。
そんな事を考えながら少しばかり気温の高い部屋の中で僕は小さく笑った。
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