意味分かんないね

 ふと言葉を内包し過ぎると内側から腐っていくなぁという思考になった。何も思わない訳じゃあないけれど、ああこれは言っても仕方がないとなったり言っても無駄だなと思うと結局内包するしかなくて。それでストレスというか澱みが溜まっていくんだろうなと、そしてその澱みで内側から腐っていく感覚を味わうんだろうなと思った。

 言葉にしない理由、それは相手の性格やら何やらを分析したりする場合もあるし言葉にする事によって面倒が起きるからだ。僕は面倒を極力回避して生きていきたいので(ついで無駄にエネルギーを使うのも嫌なので)内包という選択をする。
「それって軽い自殺行為じゃないかね」
 その思考を聞いた古い友人は平然とした表情で紙コップに注がれた、その金額なりの味のする珈琲を一口飲む。僕は短くなりつつある煙草を咥えながら目を伏せる事で返事をする。

「キミって奴は相変わらず馬鹿だなぁ」
「馬鹿なんだよなぁ」
 深く吸い込んだ後に煙を吐き出して返すと小さな笑い声が聞こえる。それは馬鹿にしているとか呆れているとかでなく、なんとなくな返しだ。
「生きてる意味わかんないね」
「分かんないよ、内包して腐る事を選んでるんだもの」

 最悪だなぁ、最悪だよ、そんな風に言葉にして僕達は窓の外に広がる空を眺めた。ああ、今日も相変わらずひどく哀しくて醜い世界だなんて心の内で呟いた。

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