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LiveRevolt Coda/EP:NAGANO

六月末、梅雨も佳境に入り
横浜の海は夏のきらめきを日に日に見せ始めていた。
それと対照的に横浜に聳える大きな音楽学校
奏ヶ丘女学院の生徒会長でありトップディーヴァ
時音ひなたはその暑さに、日に日にきらめきを失っていった。

「あぢーーーー……」
その会長は会長席の上でただただ伸びていた
「あのね、ひなさん、暑いって言ったらもっと暑くなっちゃいますよ」
会長席の目の前
会議机の上でアイスを加えながらそう言ったのは宮代りな。
「あ゛ーもう!かな!エアコンどうにかならないの!」
「文句はLibraに言ってくださいよ」
「この間の攻撃で生徒会の電源回路フルパワーで回した結果エアコンが壊れる程度で良かったじゃないですか」
「なんでよりによってエアコンなの!!!」
「僕にもわからないですよ、でもまぁ、純正パーツがないと直らない壊れ方してるので、取り寄せに一週間……」
同じくアイスを加えながら諦めの表情を見せているのは平井かな。
「一週間!!!!」
ひなたはこの学校一設備が整ったSランクの部屋でエアコンが壊れていることにただただ納得がいっていないようだった。

「まぁ、まだ六月なんで、八月とかに壊れなくてよかったと思ってください」
「えーやだ!あちーもん!」
「全くこの人は……」
「あ、そうだ!」
ひなたは何かを思いついたように、小型の携帯スピーカーを取り出した。
そしておもむろに電源をつけると、音楽を流し始めるのだった。
流れ始めたのはひなたたちが活動するFIREVOLTの楽曲たちだった。
「あつすぎて気が狂ったのか、なんでそんな自分らの曲じゃなくてもっと涼し気なのかけてくださいよ」
「まぁ、聞いてなって」
「……あれ? ねぇ、かなちゃんなんか気持ち涼しくなった……?」
「……たしかに」
FIREVOLTの楽曲を聞けば聞くほど、不思議とりな、かな達はこの部屋が涼しいと感じる様になっていった。
「ほら!涼しいだろ?」
「……ボイススキルか」
「御名答!」
「オーバーテクノロジーをくだらんことに使うんじゃないよ」
「まどかの温感操作の能力を使って全員の”暑い”を”涼しい”に変換してるのさ」
「本作始まって以来の最大にくだらんボイススキルの使い道だよ」

「何を私の歌でくだらないことをやってるんですか」
生徒会の扉が開き姿を表したのはFIREVOLT、ひなたの相方である
白石まどかだった。
「それに、ボイススキルで脳だけ涼しくしたところで、体が受ける暑さは変わらないですから、体温調整狂って体壊しますよ」
「げ、そうなのか」
「気づいてなかったのか……」
「はぁ……そろそろ夏休みなんですから、部屋が暑いなら涼しい所にでも行ったらいいんじゃないですか」
「涼しい所?」
「まどかが旅行の提案をするなんて珍しいな」
かなが驚いたようにまどかを見た。
「まぁちょっと所用があって、そこに行かなきゃいけないんですよ」
「私旅行さんせーい!」
りなは乗り気なようだった。
「で?その涼しいところってどこよ?」
「トウシンエリア、なんてどうですか?」
「トウシンエリア?」
「あぁ、都府県再編で長野県って4つになったんだっけ」
「そう、まぁ、私の両親の別荘が軽井沢にあるからってだけですけど、軽井沢とか、上田とか。涼しいですよ」
「いいねぇトウシンエリア!」
ひなたも、あまり自分からは行かない遠出に心を踊らせていた。

「あ、でも折角行くならあかねちゃんたちも連れていきたいわね」
「dubstarも誘うとなると、6人か、部屋に収まりきるかな……」
「トウシンならアタシも行こうかしら」
そう行ってまどかの影から姿を表したのは学園でも上位の人気ユニットRumBlueの瀬戸マリン。
口にはソーダアイスクリームを咥えていた。
「あー!私のアイス!ってかなんで君、勝手に生徒会室上がり込んでんの!」
主にアイスを勝手に食べられたことでひなたは怒りをあらわにした。
「生徒会室は生徒の共用部、憩いの場所だもの、勝手に上がって文句言われること無いでしょー、それにアイスも共用部の冷蔵庫にあったから」
「それは一般的な学校の話だろ!ここはトップディーヴァの寮室なの!アイスも私の名前書いてあったし!!!」
「まぁ、ともかくとして8人は連れていけないぞ」
まどかがひなたを無視して割って入る。
「あー大丈夫よ、私の生家、長野の佐久にあるから」
「両親は海外だし、勝手に使ってやる分には問題ないでしょ」
「そっちからあぶれたやつ、”藤原あかね以外”は!こっち泊めてやってもいいわ」
「意外ねーマリンちゃん、もっと都会の出身だと思ってた」
りなが二本目のアイスを咥えながら言った。
「あぁ!?田舎っ子だと悪いってーの!?」
「まぁ、いいんじゃないの?皆でワイワイ行こうよ!長野に!」
「そうですね、最近ジメジメでお外でライブもできてなかったし」
「お、いいね、向こうでライブバトル!?」
「じゃあ、決行ですね、あかねにも声かけておきます」
「まどか頼んだ!よーし!いこう!すぐいこう!」
「ひなさん、期末までの書類片付けてから出ましょうね」
「え゛ー!やだー!!!すぐ行きたいー!!!」

斯くして、一行は旧長野、トウシンエリアへと向かうこととなった。

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