高校数学における"存在"について
私が高校数学を勉強していてしばらく強敵として立ちはだかっていたのが"存在"である。正確には"存在"の存在を認識できるまでに長い時間を費やしたので、そいつが敵だとすら分かっていなかった。この記事を書いている今も完全に攻略できたわけでは全くないが、現時点で判明したことについて記す。
1. "存在"
高校数学を勉強していたら"存在"という言葉自体は誰しも聞いたことがあるだろう。例えば、「解の存在範囲」「ベクトルの終点の存在範囲」また、中間値の定理で「$${0 < x < 1}$$に少なくとも解が1つ存在する」などが挙げられる。
そこで、皆さんはこの"存在"についてどのようなイメージを持っているだろうか。以前の私は"存在"について、なんのイメージすらも持っていなかったと思う。問題文や解説ででてきても、ただの日本語として読み流していく程度の存在であった。
しかしこの"存在"は数学においてどこにでも潜んでおり、特に軌跡や領域の問題では非常に重要になってくる。
2. 軌跡・領域
軌跡・領域の問題を1つ例として上げる。
〈問題〉
$${k}$$が全実数を動くとする.$${xy}$$平面において,
$${y=x^2+4kx+k^2-2}$$
の通過領域を求めよ.
皆さんはどう解くだろうか。答えだけを求めるだけなら、まず与式を$${k}$$について整理する。
$${k^2+4xk+x^2-y-2=0}$$
そして判別式$${D}$$が$${D≧0}$$であることから、
$${D/4=3x^2+y+2≧0}$$
よって
$${y≧-3x^2-2}$$
となる。しかし、なぜ$${D≧0}$$としたら答えが出たのか。$${k}$$が実数だからだ、といえばその通りなのだが、それでなぜ通過領域が求まるのかいまいち私は分からなかった。結論しては通過領域を求めることは与式を満たす実数$${k}$$が存在する条件を求めることだからだ。すなわち$${k}$$の存在条件を考えることがこの問題ですべきことだったのだ。
3. なぜ"存在"は強敵なのか
私が"存在"について1番厄介だと思う点は「"存在"が重要な概念であることに気づけない」ことだと思う。自分の認識の外側にあるものについてなど対処のしようがないのである。
「足す」「垂直」「相似」「かつ」
問題文でこれらが登場したとき、誰しもが注意を払うようなワードだと思う。
これらには「$${+}$$」「$${\perp}$$」「$${\sim}$$」「$${\cap}$$」といった記号がある。数学では日本語と、数字や記号といった数学的な言語が登場するが、数字や記号は意味が厳密に決まっており解釈によるブレはない。だから記号があるものについては、多くの人は数学的に重要な概念と勝手に認識しているのではないだろうか。
高校数学では表立って登場しないが、そう、"存在"にも「$${\exists}$$」という記号がある。高校数学でこの記号が登場しないことが、"存在"を重要な概念だと認識できない要因の1つだと私は思う。
4. 存在記号「∃」
存在記号「$${\exists}$$」を用いると、
$${f(x)=0となるxが存在する}$$
は、次のように表記できる。
$${\exists x , f (x)=0}$$
記号は記号自体には意味は無いが、日本語によって様々に表現されるものを統一的に見ることができる。
5. まとめ
私が"存在"について理解し始めた要因の1つは記号の存在を知ったことだ。いままで多様な形で高校数学に潜んでいたものが実は同じ仲間だということに気づいた。そして見え方が180°変わった。高校数学で存在の記号を扱える必要まではないのかもしれない。しかし、記号があること、そして記号によって今までの表現がこう書き換えられるということを知るだけでも、"存在"に対する接し方は変わるのではないだろうか。
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