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火星に行く前にランサローテ島に行ってみよう


火星より近い火星みたいな場所

近年、火星への旅行や移住の話を耳にすることが多くなってきました。
探査機が送ってきた火星の写真を見ると、岩がゴロゴロした赤い地表の不毛な場所のよう。興味はあっても火星旅行はまだまだ夢物語。
でも、火星みたいな場所があったら行きたくなりませんか?

溶岩の海を進む

ちょっと遠いけど火星より近い島があります。
その名はランサローテ島。
スペイン領カナリア諸島の島のひとつで、アフリカ大陸の北西部125km先に浮かんでいます。

カナリア諸島の7つの島はそれぞれ個性的。中でもランサローテ島は典型的な火山島で、地図をみたらびっくりするくらい多くのクレーターが島内に散らばっています。その数は300以上もあるそうで、島の大半が18世紀の大規模な火山活動によってできた溶岩台地に覆われています。

SF映画のセットに迷い込んだみたい。きっと火星もこんな風景なのでは?それもそのはず、実はNASA(アメリカ航空宇宙局)も同じように考えていて、ランサローテ島の自然公園内に火星への任務に向けた訓練場を作っています。

そんなNASAのお墨付き火星みたいなランサローテ島、実はあまり観光地化されていません。なので公共交通機関が使いづらく、移動は主に自動車がメインとなります。でも全長約60kmと小さめの島、車で横断しても1時間くらいです。住民はのんびりと旅人を受け入れてくれるので、安心してあちこちを訪問できます。

それでは、そんな不思議なランサローテ島、その魅力を見ていきましょう!

唐突に出会う火口

ランサローテ島情報
面積:845.9 km2(京都市とほぼ同じ)
人口:154.530人(2020年統計)
位置:アフリカ大陸の北西より大西洋沖125km
島都:アレシフェ(Arrecife)
気候:亜熱帯と砂漠性に分類
行政:スペイン王国カナリア諸島ラス・パルマス県
1993年にユネスコの生物圏保護区に指定

私がランサローテ島に行ったきっかけ

ここでちょっと私がランサローテ島に行くことになったキッカケを語らせてください。

私は今までに3回もこの島で休暇を過ごしてきました。その理由は、別の惑星のような怪異な風景と、のんびりと流れる時間、冬でも暖かく晴れ渡っている空。日常から遠く離れ、まるで火星旅行にでも来たような風景に、普段の生活がリセットされるような感覚になるからです。

カナリア諸島はヨーロッパ人に人気のリゾート地です。特にテネリフェ島はイタリア人のお気に入りで、私の彼(イタリア人)もテネリフェ島に行ったことがあります。しかし、同じカナリア諸島に行くのなら未知のランサローテ島にしたいと飛行機の切符を買いました。

それが大当たりで、今では私たち二人の一番のお気に入りの休暇先です。イタリア在住の私からもちょっと遠いけど、この先もまた訪れたい大好きな島です。

テギセ海岸の門

溶岩が海になる、想像を超えた大自然

見渡すかぎり赤黒く乾燥した大地はまるで火星。街から一歩出るとマグマが固まった海のような大地が広がる。人も動物もいない。植物さえも土地にへばりつくような土気色の草木だけ。

島の大部分が赤黒い岩だらけの大地で圧倒されるのに、ティマンファヤ国立公園では、さらに手付かずの溶岩跡や噴火口が残っている驚異的な景色が楽しめます。これは行かないと!

噴火口が並ぶ道を行くティマンファヤ国立公園

島の東部を占めているティマンファヤ国立公園、ここは18世紀に起きた大噴火の中心地になります。当時、流れ出したマグマや噴火口が固まり、そのまま残っている異様な光景が広がる場所です。

ビジターセンターまでは車で入れるのですが、そこから先は周遊バスに乗り換えて14kmの道のりを行きます。怖いくらい荒々しい巨大な噴火口の様子は、マグマの威力を感じると同時に、人のちっぽけさも突きつけられます。不安にかられる風景が続く場所ですが、噴火する予報はないのでご安心をと博物館の人が言っていました。

ティマンファヤ国立公園内は周遊バスでまわる
見渡す限りこんな黒い岩の風景で、ここは火星?

詳細情報
名称:ティマンファヤ国立公園 (Parque Nacional de Timanfaya)
住所:Diseminado Islote Hilario, 1, 35560 Tinajo, Lanzarote, Spain
アクセス:島の中心アレシフェ市より北西へ車で約30分
営業時間:09:30〜15:45
定休日:年中無休
電話番号: +34 901 200 300
料金:大人一名12ユーロ、子供(7〜12才)6ユーロ、6才以下は無料
公式サイトURL:https://cactlanzarote.com/en/centre/montanas-del-fuego-timanfaya/

澄んだ荒い海に心奪われる

大陸から離れているので海も澄んでいて美しいです。しかし、真っ黒い砂浜なので透明感が伝わりにくく、不気味な感じもします。波は高く、サーフィンをしている人もチラホラ。

黒い砂をよく見ると緑色の石が混じっていることも!これはペリドットという名の貴石で、溶岩流の中で生成されます。宝探しのように砂浜を探って楽しむことができます。ただし、島からペリドットを持ち出すことは禁じられているので、手元にほしいのならお土産屋さんで購入しましょう。

島東部にあるハヌビオ海岸
ここでオリーブ石と呼ばれるペリドットが見つかります

島の北部には白い砂浜の地域もあります。砂は溶岩の隙間に広がっているので足元に注意が必要です。尖った岩が隠れているので海用のサンダル着用がオススメです。冬でも泳いでいる人がいますが、私には冷たく感じられたので足だけ水に浸けていました。

島の北部には白い砂のビーチも
でも周囲の溶岩石は尖っているので足元に注意!

風景をもアートに:セザール・マンリケ

動き出しそうな噴火口は彫刻のようだし、見渡すかぎりの赤黒い大地はそれだけで気持ちを揺れ動かされる大地。そんなランサローテ島はアートの島でもあります。島のあちこちに見られる陽気な彫刻の多くは、島を代表するアーティスト、セザール・マンリケ氏の手によるもの。

1919年にランサローテ島で生まれたセザール・マンリケ氏は、スペイン・マドリッドで学んだ後にニューヨークで活躍した後、60年代にランサローテ島に戻りました。その後は、島の特異な景色とアートを組み合わせた作品を作り続け、この島で一生を終えました。
島のあちこちにマンリケ氏の作品や建築物があり、観光の名所になっています。

溶岩の海に囲まれたセザール・マンリケ財団

島の中心部にあるセザール・マンリケ財団は、氏の住宅をそのまま博物館とした場所です。溶岩の海の中に建てられた家は、1階は伝統的な白い漆喰、地階はマグマが作った空洞を5つつなげて部屋として利用しています。まるでSF映画の地底人の棲家のような地階は、アートに興味のない人にも楽しめる場所です。

セザール・マンリケ財団
よくこんなところに家を作ったなと感心する

詳細情報
名称:セザール・マンリケ財団(César Manrique Foundation)
住所:Taro de Tahíche –C/ Jorge Luis Borges, 16, 35507, Tahíche, Lanzarote, Spain
アクセス:島の中心アレシフェ市より北へ車で約10分
営業時間:10:00〜18:00
定休日:1月1日
電話番号: +34 928 843 138
料金:大人一名10ユーロ、子供(7〜12才)3ユーロ、6才以下は無料
公式サイトURL:https://fcmanrique.org/en/casas-museo-visitas/fundacion-cesar-manrique-tahiche/

白いプールが印象的なハメオス・デル・アグア

同じくセザール・マンリケ氏が手掛けたハメオス・デル・アグアも一度は訪れたい!溶岩でできた洞窟を文化的な施設に整えた場所です。中には水の色が映える白いプールやレストランがありますが、特異なのは地下湖。洞窟内にある深い湖には盲目の白い蟹がいます。小さな弱々しい蟹は、この湖にしか生息していないそうで、この環境をずっと守っていきたいという思いを強くさせてくれます。

ハメオス・デル・アグア
ここも溶岩内にできた空洞を利用した施設です

詳細情報
名称:ハメオス・デル・アグア(Jameos del Agua)
住所:Carretera Arrieta – Órzola S/N, 35542, Lanzarote, Spain
アクセス:島の中心アレシフェ市より北東へ車で約30分
営業時間:10:00〜17:15
定休日:年中無休
電話番号: +34 901 200 300
料金:大人一名10ユーロ、子供(7〜12才)5ユーロ、6才以下は無料
公式サイトURL:https://turismolanzarote.com/que-visitar/cact-lanzarote/

白と黒の素朴な町があちこちに

島には小さくて素朴な町が多くあります。昔ながらの様子を残した教会や家は、白漆喰が基調のこじんまりとした佇まいでかわいらしいです。

昔の島都だったテギセ

歴史的にも重要な町テギセには手の込んだ建築が残っています。近年はオシャレなお店もちらほら見かけるように。マンリケ財団のお店ここでもあり、アートなお土産を買うこともできます。

テギセの聖母教会の鐘楼

詳細情報
名称:テギセ(Teguise)
アクセス:島の中心アレシフェ市より北12km
スペイン観光公式サイトURL:https://www.spain.info/ja/mokuteki/bija-tegise/

のんびりとしたサン・バルトロメ

島の中央にある小さな町、サン・バルトロメ。地元の人が集まるカフェからは歌声が聞こえくることも。冬でも日差しがきついので、みんな建物の中にいます。ここには気さくなオーナーがいる小さなパン屋さんがあり、サツマイモ入りのパンが私のお気に入りです。サツマイモは「バタータ」と呼ぶそうで、響きがユニークなので、すぐに覚えてしまいました。

サン・バルトロメの教会
黒い溶岩石と白漆喰の組み合わせがかわいらしい

詳細情報
名称:サン・バルトロメ(San Bartolomé)
アクセス:島の中心アレシフェ市より北西8km
スペイン観光公式サイトURL:https://www.spain.info/ja/mokuteki/san-barutorome/

不毛な大地で何を食べているの?

さて、火星のような荒れ果てた大地では何を食べているのでしょうか?
メニューを見たところ肉料理が多いです。グリルや煮込みと調理方法はシンプル、スペイン領なのでイベリコ豚を中心とした料理をよく見かけました。

野菜ではジャガイモが特産物で、3〜4センチくらいの小粒なジャガイモを塩茹でしたものをよく食べます。

そして大事なのはモホソース!
どんな食事にも付いてくる赤と緑のカラフルなモホソースは、ランサローテ料理に欠かせないもの。ピリ辛の赤いソースとコリアンダー入りの緑のソースが基本。時々白いソースも付いてきて3色の時もあります。どの色のソースもニンニクがよく効いていて、パンやお肉や何にでも付けて食べます。

モホソース
ここのお店は3種類だった

稀少なヨーロッパブドウで作られるワイン

19世紀後半、ヨーロッパの葡萄畑を寄生虫を襲った悲劇はご存知でしょうか?アメリカから持ち込まれたこの虫は、ヨーロッパブドウの根に寄生して枯死させる恐ろしい害虫でした。

現在、ヨーロッパの葡萄畑のほとんどが、この寄生虫に耐性のあるアメリカブドウの台木にヨーロッパブドウを節木した苗木を使っています。
しかし、この寄生虫の被害を受けず、ヨーロッパブドウだけの葡萄畑が少数だけ残っています。その貴重な場所の一つがランサローテ島!

ランサローテ島の主要なワイン産地ラ・へリア(La Geria)地区は、火山由来の黒い砂で葡萄畑を覆う特殊な栽培方法をとっています。このおかげで寄生虫を寄せ付けず、昔ながらのヨーロッパブドウが残っている世界的に見ても稀少な場所となっています。

この地域でよく作られるのは白ワイン。特にマルヴァジアという種類の葡萄から作られる甘口のワインは、トロピカルな香りで格別です。甘さ控えめのSemi Dulce(準甘口)は現地のハムやチーズにピッタリ!

葡萄畑での栽培方法も特殊で、ここでしか見られない形です。強い風から守るため、葡萄の木一本一本が壁に大切に守られています。葡萄の木も低く剪定されて、風の影響を受けないようになっています。

ラ・ヘリア独特の葡萄畑
風が強いので石壁で葡萄の木を守っている
ワイン用葡萄の木
風を避けるため低く剪定されている

詳細情報
名称:ラ・ヘリア (La Geria)
アクセス:島の中心アレシフェ市より西へ車で約20分

真冬にテラス席でワインを一杯

アクセス方法

残念ながら日本からの直行便はありません。
スペインで乗り継ぎが必要になります。マドリッドからは飛行機で約3時間です。
イギリス人にも人気の島なので、意外とイギリス経由も便利です。私はマンチェスターやブリストル経由でランサローテ島に行きました。経由地で1〜2泊してランサローテ島に行くことが多いです。

まとめ

こんな場所があったなんてと感激する景色が広がっています。
自然の圧倒的な威力を感じる、地球らしくて地球らしくない場所。
行くのに時間がかかるけど、それに見合うだけの景色と出会えます。
もし機会があればぜひ検討してみてください!

参考サイト
スペイン観光公式サイト-ランサロテ島
CACTランサローテ島観光センター


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