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『ジョーのグッドニュース』の名前の元ネタなどを紹介するよ〜前半大体ビートルズの話〜

◆タイトルについて(ネタバレなし)

まず始めに知っていただきたいのが、ジョーのグッドニュースという作品は『連載漫画』ではなく『連続読み切り』という形式で作品が始まりました。

掲載媒体である付録雑誌『青騎士』は全6回刊行で完結とはじめから決まっており、そのなかの4冊にジョーを掲載させていただきました。
連載ではなくあくまで主役と世界観を継続した読み切り、というわけです。なので必ず1話完結方式をとっており、ページ数も30P前後とコンパクトに、テンポ良く、必ずオチをつけて、何話目から読んでも楽しめるように、を目標に作りました。

※その辺の話は、こちらの記事に詳しく書きましたので、お時間のある時にでも読んでみてください。(この記事は盛大にネタバレしている箇所があるので、未読の方は読まない方が良いです。どちらにしろこちら↓の記事はあと読み推奨です)↓

さて、青騎士で掲載を開始した当初は『ジョーのグッドニュース』というのは正式なタイトルではなく、連作読み切りのシリーズであることを示すための仮タイトルでした。
ジョーはかならず掲載時は毎回違ったタイトルが扉絵につくため、その横に小さく『ジョーのグッドニュースシリーズ』と入れてもらって連作であることを察してもらう、そんな感じのためのタイトルでした。

なので、ジョーを単行本にする?
という話が一年ほど前に持ち上がった時、ジョーのグッドニュースではなく新たにタイトルを付け直すつもりでした。
いくらなんでも安直すぎるだろうて。

しかし結局は(仮)だったシリーズのタイトル名を単行本のタイトルにそのままつけることになりました。
理由は二つあります。

①『グッド』という言葉が入っていること。

新聞記者の話なら『大スクープ』とかそちらのほうが臨場感が伝わりますよね。でもあえてグッドニュースにしたのは、ポジティブな言葉を積極的に発信していきたいという担当さんの意見です。スクープは遠い世界の出来事だけど、グッドニュースならすべての人の人生に何度か訪れる身近な存在にも感じます。
なので、ジョーのグッドニュースにしました。とはいえ、単行本にはグッドな終わり方をしない話もありますが…。

②実在したチョコレートアソートボックスのパロディーだから。

これはちょっと説明が長くなるのですが、19世紀から創業しているイギリスのお菓子メーカー『マッキントッシュ』社が1960年代に売り出したチョコレートアソートボックスがあります。
その名前が『GOOD NEWS』という商品名なのです。
(※ちなみにマッキントッシュ社は紆余曲折を経て今はネスレに吸収されています)

パッケージ↓

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当時のパッケージを見ていただくと分かるように、中身のチョコレートの味が本当に色とりどりです。
ジョーの構想を練っていた時の私は、このチョコレートの事を思い出し、『ジョーのシリーズも読み切りという特性を活かして、毎回話の趣向が変わるお菓子のアソートボックスのような作品にしたい』と思いグッドニュースとつけました。
つまりグッドニュースというタイトルは、『良い知らせ』と『色とりどりの味の詰め合わせのチョコ』のダブルミーニングだったのでした。

ちなみに宣伝画像に描かれているこれら↓

画像2

はグッドニュースチョコレートの中身なのでした。気付いた方はいらっしゃるでしょうか。
いるかなぁ…だってこのチョコレートねぇ…

ビートルズの『Savoy Truffle』っていう曲の歌詞に登場してくるからなんですよね!!

歌い出しの『♪クリームタンジェリン、モンテリマー…』の時点でグッドニュースチョコレートの中身の種類を歌い上げています。
もちろん、グッドニュースそのものも歌詞に出てきます。
ビートル・マニアの中では有名な蘊蓄なのでビートルズがお好きな方は予告画像で並べたチョコレートの種類を見て『ああ』と思ったかもしれません。あの五種類はすべて『Savoy Truffle』で歌い込まれているグッドニュースチョコレートの中身の名前だからです。

結論…作者はめちゃくちゃにビートルズが大好き


◆主役2人の名前について(ネタバレなし)

●主人公のジョー

まず考えたのが、親しみやすくて元気がありそうで、男の子に間違われる可能性がある名前、でした。
ちなみにその時点で候補は『ジョー』か『ジェット』に決めていました。そしてそれはどちらもあだ名で、本名はちゃんとした女の子らしい名前である、というカラクリもその時点で固まってました。
ジョーの本名のジョージィはれっきとした女性名です。ジェットにした場合も、本名はきちんと女性らしい名前をつける予定でした。

ちなみにジェットにしたのは、まぁ私という人間を何となく察してる方にはお分かりかと思いますが…ポールマッカートニー(ウィングス)の『JET』が大好きだからです。この曲は言葉遊びがメインの支離滅裂な歌詞ではありますが、ジェットは主人公が片想いする女の子の名前として出てきます。ちなみにそのジェットの元ネタは当時ポールが飼っていた…話が逸れてきたのでやめますねー。

ジェット!\ウウウウーウウーー♪/

とにかくジョーかジェットのどちらにしようか悩んでいた頃に、ベルの資料のために戦前に翻訳された海外文学を読みあさっていました。
その中に『若草物語』の翻訳もありました。
主人公四姉妹の中にジョーという女の子がいますが、戦前の若草物語を読んだ私は、ああジョーって呼びやすくていいなと思い、最終的にジョーに決めました。

●相棒のパット

こちらもあだ名です。そしてそのあだ名が『中性的でありどちらかというと女の子を想起させるあだ名』という、ジョーの逆バージョンをです。
パットの本名はパトリックで、こちらもはっきりと男性とわかる名前ですが、『パット』と呼ばれると女性か男性か判別しにくくなる。
同じくジョージィが『ジョー』と呼ばれると男か女が分かりにくくなる。

つまりジョーとパットはお互いの名前(あだ名)がお互いの性別とは反対に聞こえる、というお遊びです。
二話でヘンダーソンが初対面の2人の名前を反対に受け取る場面あたりで察していただけるかとおもいます。

で、ここまでは私が考えた設定なのですが、ある日ビートル仲間からこんな事を言われました。
『いまやってる漫画の主人公コンビってジョージとパティからとったんだね』と。

ジョージはビートルズのリードギターで、パティはジョージの1人目の奥さんでモデルさんです。

私はそんな意図は一切なかったので最初は否定しつつ『なるほどそう捉えられることもあるのか』と思いました。
しかしよく考えてみると、ビートルズのジョージは砕けた会話の最中メンバーから『ジョー』と呼びかけられる場面が多く、ビートルマニアなら周知の事です。
ちなみにパットの方ですが、パティからとってるかといえばそうではない、としかいえないのですが自分で気づいてしまいました。

パットの本名のパトリックの女性名って『パトリシア』やないかい!!!と。

※知らない方に説明…パティという名前はモデルをするための芸名で、パティの本名はパトリシア・アン・ボイドなのです…!

(※西洋や欧米は対になる男性名と女性名というものが存在します、調べると面白いです。ちなみに『ジョージ』の女性名は『ジョージア』などが該当します)

つまり私はジョージとパティのことなんて全然考えていなかったはずなのに、深層心理の中で、本当に無意識のうちに『ジョージとパティ』としか言いようのない、むしろ言い逃れできないコンビを作ってしまっていたのでした。

結論…作者はめちゃくちゃにビートルズが大好き

◆サブキャラクターについて(ネタバレなし)

・ガルボ…言わずと知れた20年代の大女優グレタ・ガルボをモデルにしました。とはいえあくまでモデルなので、本物のガルボには外見も寄せていません。
しかし彼女がスウェーデン出身で英語に少々なまりがあった、というのは事実らしかったので、当時実際に使われた映画のキャッチコピーと組み合わせてオリジナルのストーリーを作りました。

・ダニー室長…ビートルズの楽曲『Rocky Raccoon』に出てくる『Daniel』(ダニエル)を歌詞の中で『ダニー』と歌う部分があるのでそこから取りました。

・ミスターカイト…ビートルズの古いサーカスを歌った楽曲『Being For The Benefit of Mr. Kite !』に出てくる『Mr. Kite』(ミスターカイト)から取りました。歌詞を見ると、ミスターカイトは歌詞の中でトランポリンや火の輪潜りをやってのける芸達者で、呼び込みに使われるほど大スターのようです。
また、この曲を書いたジョンは戦前のサーカスのアンティークポスターを見てこの楽曲を着想したと言われています。
ジョンはその時代感を再現するために、音楽プロデューサーのマーティン先生に『床におが屑が敷き詰められた頃の古いサーカスを表現したい』と注文したのは有名な話です。
なので、ジョーの中でも『床のおが屑』は小ネタで使わせてもらいました。

関係ないですが、近年ポールが来日公演でこの曲をレギュラーメニューに加えていますね。間奏でドームの天井に投影される幻想的なライティングも好きですが、なによりジョンの書いた曲をポールが楽しげにプレイしているのを見られるのは本当に嬉しいものです。
でもジョージのサムシングは最初からバラード調で歌ってくれていいんだぞ。前半にウクレレ演出したい意味はビートルオタクとしてヒシヒシ感じるのだが…!

・ミス・ヘンダーソン…同じく戦前のサーカスの様子を描いたビートルズの楽曲『Being For The Benefit of Mr. Kite !』に出てくる『Henderson』(ヘンダーソン一家)から取りました。歌詞の中では『あのヘンダーソン一家も出演します!』歌っているので、こちらもよほど芸達者な芸人一家なのでしょう。
今回はヒロインとして看板娘ミス・ヘンダーソンに変更しました。

・ヘンリー…こちらも『Being For The Benefit of Mr. Kite !』に出てくる名前です。しかしこの名前は人間ではなく曲乗りの馬の名前です。
犯人役だし、いっかぁ、と適当に選びました(笑)

・ジュリア…ビートルズの楽曲『Julia』から取りました。また、ジュリアはこの曲を描いたジョンのお母さんの名前です。ジュリアさんは非常に奔放な女性で、ジョンをミミ叔母さんに預けて離れて暮らしていました。しかしジョンとの仲は良好で、とくに音楽面でジョンに多大な影響を与えた人物です。しかしジュリアさんは若くして事故で亡くなってしまいます。ジョンの人生に大きな影響を与えた人物の1人です。

ビートルズの楽曲は魅力的な女性が沢山登場するので、アンナ、ミッシェル、リジー、エリナー、ルーシー、マーサなどものすごく迷ったのですが、結局ジョンとゆかりの深い女性の名前に落ち着きました。

・アンリ(アンディ)…完全に『ローマの休日』のアン王女のもじりです。というかアンリ王子が出演する『マンハッタンの休日』は『ローマの休日』の男女が入れ替わっただけのパロディーであり、かつ2人が訪れる名所がマンハッタンのどこかしらである、というだけなのです。
この話はローマの休日の大筋をあえて、はっきりパロディだと分かる様にそのまま使いました。誰でも知っているウェルメイドなお話だからこそ、小細工をするよりそのまま描いた方が『マンハッタンである』ことが引き立つ気がしたからです。

・マリゴールド国王…アンリのお父さんです。姿は出てきませんがアンリに王位を譲るため彼を外交の旅へ向わせました。
これはビートルズの楽曲『Cry Baby Cry』の歌詞に出てくる”The King of Marigold”から取りました。架空の国を想定するにあたって、ファンシーな国の名前がいいなと思っていたのでぴったりだなーと思っています。

・カーコーディ…こちらもビートルズの楽曲『Cry Baby Cry』から。ただしこちらは女性として歌詞に登場します。カーコーディ公爵夫人(The duchess of Kircaldy)という人物が歌詞に登場するので、そこから取りました。

・バンガロウ・ビル(ビリー)…ビートルズの楽曲『The Continuing Story of Bungalow Bill』の
Bungalow Bill(バンガロウ・ビル)から取りましたら。実は名前の候補に、同じくビートルズの楽曲『Rocky Raccoon』(ロッキー・ラクーン)と迷っていたのですが、本名をつけることを考えたらいかにも通り名っぽい方がいいなと思いバンガロウ・ビルにしました。
また、彼の本名の『ビリー』はビートルズの楽曲『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』に登場する架空の歌手『ビリー・シアーズ』もちょっと意識しています。
なんなら本名ビリーシアーズにしとけばよかった。(今更)


結論…作者はめちゃくちゃにビートルズが大好き


◆各話のタイトルについて(少しネタバレあり)

ジョーの各話のタイトルは名画のパロディです。しかし20年代の映画に限定してしまうと、邦題の自由度がかなり下がってしまうので、(20年代の映画も大好きですが、邦題が簡素すぎて情緒がないんですよね)そこは製作年代をあえて気にせず好きなアメリカ映画の邦題をパロディにしました。

※ちなみに、元ネタにしたのは“タイトルのみ”で、『マンハッタンの休日』以外は、全てタイトルの元ネタの映画の内容と漫画の内容は関係ありません。

●1話『ジョーほど素敵なひな鳥はない』
…元ネタ『ショウほど素敵な商売はない』(1954)

これは完全に元ネタの響きが好きで、ショウとジョーの韻を踏みました。
ちなみに編集さんはこの映画を知らなかったらしく、『ジョーほど素敵なひな鳥はない』の『ひな鳥』の部分に勝手に『フラッパー』とルビを振られてしまい(こちらは、フラッパーというルビを振って欲しいなんて全く頼んでもいないのに…!)一時はパロディタイトルの意味がなくなるところでした。
元ネタが『しょうばい』という四文字の発音なのだから、ひな鳥という四文字に揃えてもらわないとリズムが狂ってパロディ感が無くなり台無し…

慌てて、それは違うんだよ〜と説明してルビを取ってもらい、何とか事なきを得ましたが、出版社の編集の方が名画のタイトルを知らないということと、こちらが一切頼んでいない改変を勝手にされそうになったことはショッキングでした…。


また、2年前にこの話が掲載されたときも、コミックナタリーでも『ジョーほど素敵なひな鳥は”いない”』とタイトルを間違えた記事がネットに出されてしまい、パロディの意味が全くなくなってしまいました。
(また、その記事からWikipediaなどにタイトルを転載されたりして、間違ったまま情報が広がり、当時は本当に悔しかったです。)

私は1話の『ジョーほど素敵なひな鳥はない』がタイトルとして一番気に入ってます。
単行本のタイトルにしてもいいくらい好きなタイトルです。
しかし、周りの人達が意図や元ネタを全然理解してくれず、結局一番苦い思いをしたタイトルでした。


●2話『私をシルクにつれてって』
…元ネタ『私を野球につれてって』(1949)

これは映画というより、この映画の元ネタになった『私を野球につれてって(Take Me Out to the Ball Game)』という、1908年に作られたノベルティソングの方が有名なのではないでしょうか。球場でいまでも流れますもんね。
映画では冒頭でフランク・シナトラとジーン・ケリーがご機嫌にこの曲を歌うショウからスタートします。
ちなみに映画の劇中も1908年に設定されています。
ちなみに主演のフランク・シナトラは好きですが、ビートルズの『Something』…ジョージが書いたこの美しいバラードについて『最も美しいレノン=マッカートニーのナンバー』と発言したことについては私はおかんむりです。書いたのはジョージだっつうの!
ちなみにマイケル・ジャクソンも同曲をレノン=マッカートニーが描いた曲だと勘違いしていたらしく、ジョージ本人に『え?サムシングって君が書いたの!?』と尋ねた話が残っています。
ゆ  る  せ  ん!!!

※作者ははちゃめちゃにジョージが好き


●『素晴らしき哉、労働!』
…元ネタ『素晴らしき哉、人生!』(1946)


また工場内での振る舞いはチャップリンの『モダン・タイムス』(1936)の序盤のパロディであり、所々の構図はロシア映画の『ストライキ』(1925)を意識しています。
特にジョーがパットにストライキの日を密告するシルエットの場面は、『ストライキ』の冒頭のショットオマージュです。
しかしこの映画、最終的にストライキを実行することで、労働者が警察にじゃんじゃん殺されていくかなりショッキングな内容です。当時のストライキは普通に人がガンガン死ぬ!ストライキっていうのは命がけ!っていうのを目の当たりに出来ます。(まぁロシア=ソ連という当時の情勢も多分にありましょうが…)

またライン工場で精神がおかしくなっていったり、プレス機でなんでもぺっちゃんこにしちゃうギャグはチャップリン『モダン・タイムス』そのままなんで、知ってる人は存分に楽しんでください。


●『マンハッタンの休日』
…元ネタ『ローマの休日』(1953)

もうこれは説明不要でしょう。ストーリーの何から何までローマの休日の筋をなぞっています。ただ場所がマンハッタンで、主役の2人の性別が入れ替わっている、ただそれだけの話です。
私はローマの休日ほどウェルメイドに作られた作品はそうそうないと思っているので(それは皆さんも同じかと思います)下手にアレンジをするより、ストーリーをそのまま持ってきたほうがよりジョーとマンハッタンという街が浮かび上がり、元ネタとの違いが明確になる、と考えました。
ただひとつ、ローマの休日は主役2人が最終的に恋仲になりかけますが、ジョーの場合はあくまで友情に留めました。それはやはり主役はアン王女(アンリ王子)ではなく、あくまでジョーなので、ジョーがアンリとの出会いでどのように変化したかをオチに持ってきたかったからです。
あと『なんといってもマンハッタンです』という台詞を言わせたかった(白状


●5話『2人でお茶を』
…元ネタ『二人でお茶を』(1950)

これは改変せずそのまま使いました。
補足すると、『二人でお茶を(tea for two)』は元々1920年代にヒットしたブロードウェイミュージカル『ノー・ノー・ナネット』という演目の中の挿入歌の一つでした。
しかし『2人でお茶を』という曲は舞台から独立するほど人気のスタンダードナンバーとなり、後々この曲をタイトルにした映画『2人でお茶を』が作られることになります。

当時のお芝居やミュージカルなどを見ていくと、テーマ曲や挿入歌だけが有名になって一人歩きするということは珍しくないですよね。
例えばブレヒトの『三文オペラ』(1928年初演)のオープニングを飾る『マック・ザ・ナイフ』は、『三文オペラ』という演目からいまや完全に独立してジャズなどのスタンダード・ナンバーになっています。
舞台の『三文オペラ』は知らなくとも、『マック・ザ・ナイフ』を聞けばそのメロディに誰でも聞き覚えがあるという。
ちなみに私は三文オペラの中では『海賊ジェニーの歌(Pirate Jenny)』が一番好きです。ああ、話がそれた。

あとは映画『第三の男』(1949)の『ハリー・ライムのテーマ』も、いまやすっかりエビスビールのCM曲として日本人に定着してますね。恵比寿駅の発着音までハリー・ライムのテーマなのはさすがにウケる。


『二人でお茶を』もそんな感じで『ノー・ノー・ナネット』から独立し、ついに映画にまでなりました。

5話の話の内容自体は『二人でお茶を』とも『ノー・ノー・ナネット』とも一切関係ありません。
ただ、パットとジョーが最終的にどういう関係に落ち着くのか、を考えた時に『2人でお茶を』というタイトルは、これしかないなと思って選びました。


結論…作者は映画や舞台が結構好き


以上がジョーのグッドニュースのタイトルやキャラクター名の元ネタの話です。
青騎士という自由度が青天井の冊子で、なおかつ連続読み切りという特殊な形式だったから、もうやりたい放題やったった!
という感じです。普通の連載漫画だったらもう少し思慮深くなる…さすがの私も…!

◆描ききれなかったネタのこと(おまけ)

私は基本的に1話完結の話を描くタイプなので、ネタ出しは多いタイプだと思います。
大抵1話につき5.6個アイデアを出して、その中で話として成立しやすそうな、実際に調べてみてピンときそうな、面白くなりそうなネタを採用しています。
なので、ジョーに関してもプロットは作ったけど(青騎士の刊行回数の関係で)描けなかったネタがかなり残っています。

ずらずら書き出すと『あーこれ描きたかったんだよな〜』と悔しくなってくるのでその中の一部を紹介します

・当時のギャンブルに挑戦する話

…作中で特別に言及はしてませんが、パットはイギリス人です。1話での名誉云々〜の部分もそうですし、4話でジョーがパットに電話越しに『アロー』と話しかけているのは、ハローをそう発音しないと嫌味を言ってくるから…という裏でのやりとりがあってのことです。

さてイギリス人といえば『賭け』。イギリス人にとって賭けというものはなによりも知的で高尚な遊びであるというのは皆様ご案内の通りです。(笑)
なのでパットがメインで当時のギャンブルの話は描きたいなぁと思っていました。ジョーが取材に赴いたカジノパーティーで大はしゃぎするとか、当時大流行したアメリカ麻雀なんかもいいですね。

・ボストン糖蜜災害

この事件が実際に起こったのは1919年なので扱うとなるとパラレル時空になってしまうのですが、被災地に赴く話はやりたかったです。
ボストン糖蜜災害は工場の敷地にあった糖蜜(シロップ)を詰めた巨大な貯槽が破裂し、ボストンの街を水びだしならぬ蜜びだしにしたという事件です。街がシロップの海に沈み、死人も出た悲惨な事件ではありますが、シロップの海と化したボストンにジョーとパットがかけるつけるというのは、それだけでなんかもう面白いなと。
バスタブに乗ってシロップの海(街)を散策したり、結局シロップに落ちてジョーがツルツルのヌルヌルになってまとも歩けなくなって滑って転んでを繰り返す、歌舞伎の『女殺油地獄』のお吉殺しの場面のパロディもできる…!

しかし昨今、大雨による浸水被害や水害事故が相次いでいる情勢を省みて、読む人によっては不謹慎にとられるかなと考え、このネタはやめておきました。
バスタブに乗った二人という絵面がなんかもうそれだけでおかしいので描きたかったですね〜

他にも作るだけ作って描けなかったネタは山ほどあります。

そもそもジョーのシリーズは、元々単行本化する予定のなかったおまけ漫画なので、今回単行本になっただけで本当にありがたいのですが、将来またなにかチャンスをいただけたら描きたいシリーズです。

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1話試し読み

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