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東京150年祭の初音ミクちゃんの衣装デザインをしました

※去年のお仕事(2018年10月)の紹介です※

浜離宮恩賜庭園で開催された東京都主催の『東京150年祭』というイベント内で上映される、初音ミクちゃんのコンサートの衣装デザインの一部を担当させていただきました!

内容はというと、明治時代から現代までの流行歌をミクちゃんがメドレーで歌うというもので、歌に合わせてその時代の衣装を着ていきます。私は、明治時代から前回の東京オリンピックまでの時期の計7着の時代考証・デザインをいたしました。
私は東京生まれ東京育ちなので、このようなイベントに携われて本当に嬉しいです。
愛するわが故郷、東京にこんな形で恩返しができるなんて、夢のようでした。これまでの東京に暮らしていた全ての人と、ミクちゃんを想いながら大切にお仕事させていただきました。

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上記の二枚は公式サイトからお借りしました!上の画像ですと、左端のバッスルドレススタイル、真ん中のモダンガール、その右隣のサブリナ・パンツのレジャースタイルが私の手がけたデザインです。ここには写っていない他の衣装も自信作なのです。いやーミクちゃんカワイイですね

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これは私がツイッターで告知用に描いたものです。東京駅大好きです。

(ここから制作秘話というか余談です)

最初ご依頼を頂いた時には、ミクちゃんの着る時代衣装の時代考証とデザインをというもので、どんなイベントなのかは伏せられておりました。しかし時代のアイコン初音ミクちゃんのおめかしのお手伝いができるなんて、本当に身に余る、大変に光栄な依頼だったので、一も二もなく引き受けさせていただきました。

すると打ち合わせで全貌を聞かされてびっくり仰天、主催者兼クライアントは「東京都」で、東京150年祭はきたる東京オリンピックを盛り上げるための関連事業のひとつと知り気絶しそうになりました。私は東京生まれで東京が大好きです、これは私の人生で、きっと一番の恩返しになる・・・そう思うと熱いものがこみ上げてきて、お金やキャリアなどではなく、故郷への感謝のために平成最後の夏はこの仕事に捧げようと思いました。

明治時代から東京オリンピックの衣装の7着をデザインさせていただきまして(※キービジュアルになっている女学生ミクちゃんは私のデザインではなく、時代考証をちょっとさせていただいたのみです)とっても駆け足ですが日本の女性のおしゃれを振り返るお手伝いができたかなと思います。
最初にわたしが提案資料を提出した時は20着近くアイデアがありまして、(初手で服飾史をまとめた論文みたいな分厚い資料を作って提出したらちょっと引かれたw)明治維新〜東京オリンピックまでの女性の服飾史をかなり細かく細かく分類していたのですが、最終的に最もキャッチーで、かわいく、かつ時代を感じられる8着程度に絞り込んで行きました。
どの衣装もそれぞれ違った苦労があり、どれも思い入れがあります。
バッスルドレスは構造を理解するところから始めるため服飾博物館でスケッチしたり、アメリカのバッスルスタイルの解説書を探したり、当時の鹿鳴館に出席した人たちの写真資料を集めたり…

中でも60年代初頭のフラワーワンピースは『その時代のリアルクローズ』でなくてはいかん!と思い(60年代と聞いてイメージされがちな、ミニスカートファッションが日本で流行するのは60年代後半からなので、この時期はむしろ50年後期の落下傘スカートのシルエットが近いのです)連日神保町に行って当時の婦人雑誌を発掘し
(アンティーク雑誌は大抵恐ろしく埃っぽいので鼻炎と戦いながら・・・)
付録の型紙(当時の婦人雑誌には洋服や編み物の型紙が付いているのです、当時の女性なんでも家で作っていたんですね)をひろげてこのシルエットがいいか、あの配色がいいかとうんうん悩みました。ドレスの花柄も当時の生地を参考に手描きしました。あのドレスは本当に当時の女性雑誌の型紙から起こして、かつ衣装風にアレンジを加えたデザインです。

そのほかの衣装も、海外の映画や女優やレジャー文化など当時の女性が熱狂したネタをこれでもか!と散りばめました!みなさん細かなネタも気づいて下さり嬉しかったです。

当日は、コンサートが始まった瞬間感極まって泣いてしまいました。全部知っているし大好きな曲揃いのメドレーだったのでとても楽しみにしておりました。
特にカチューシャの唄は自分の作品のキーアイテムにするくらい好きで、ミクちゃんがカチューシャかわいや・・・と歌い始めたらもう胸がいっぱいになってしまって。
東京キッドも映画が大好きで、劇中のひばりちゃんがこの曲を歌う場面を見るとすごくキューンとなります。ほんと、60年代くらいまでの楽曲は沢山の思い入れがあるので、書きつくせないのですが・・・とにかく大好きな歌を飾るお手伝いができたことが幸せでした。
また、あらゆる時代の歌と衣装を身にまとって輝く初音ミクちゃんが素敵でした。ミクちゃんは未来のカンバスですね。私はボーカロイドのシーンには詳しくなかったのですが、これを機に色々触れていきたいと思いました。
ツイッターではミクちゃんファンの方達にお優しい言葉をかけていただいて、とってもステキな世界だなと思いました。
ツイッターでも現場でもみなさんとても紳士で、ミクちゃんを応援しよう!というキラキラした気持ちが輝いていました。
本当にこのような素晴らしい催しのお手伝いが出来たこと、感謝してもしつくせません。
あ、グッズ私も欲しい!と思って行ったら全て売り切れていたのが唯一切ない思い出です・・・笑

そういえば、担当させていただいた中でも青いドレスは、東京150年祭のあとのミクちゃんのジャズコンサートでもキービジュアル&劇中衣装にしていただき大変に光栄でした。
あの青いドレスは『東京キッド』と『東京シューシャインボーイ』を歌うときに身にまとっていましたね。
実は当初は、真反対のイメージの衣装デザインで進めていました。

歌謡曲がお好きな人ならお分かりですよね?美空ひばりちゃんの『東京キッド』の劇中衣装と暁テル子さんの『東京シューシャインボーイ』の歌詞…の主人公は…
そう!鳥撃ち帽子に胸当てズボン(キャスケットとオーバーオール)というとってもボーイッシュな格好をしているんです!
ですから当初、ここのミクちゃんはキャスケットにつぎはぎのついたオーバーオールで健気に歌い働く女の子〜というイメージでした。

(そういえば。東京キッドの劇中歌『ひばりが唄えば』、でひばりちゃんは
"町から町へと 歌を撒く
わたしはひばり
こゝろはいつでも 青い空
悲しいときにも歌え
笑顔を浮べて歌え
ララララゝゝ 歌えば 春だ 天国だ"
と歌いますが、なんだか初音ミクちゃんにも歌って欲しいですね、話が逸れました…)

しかし、話し合っていくうちに美空ひばりさんの往年のジャズシンガードレスのようなイメージでもいいのではないかと提案され、なるほど、ひばりちゃんが大人になって、子役時代に演じた『東京キッド』を歌うというとても粋な演出だな…!と感じ、色味を極力減らしつつ華やかに、かつ可愛く見えるドレスをデザインしました。
ジャズやシャンソンの舞台特有の『ステージドレス』の華やかさを掴むために、越路吹雪さんの舞台ドレスも大いに参考にしました。昨年越路吹雪さんのドレスのみを集めた服飾個展がありましたが、それくらい吹雪さんのドレスのセンスの良さは素晴らしいです!

当日『ミクちゃんがもんぺを履いている!』とちょっと話題になった衣装も私の担当なのですが、あのもんぺもよく見ていただくと上半身のブラウスとミスマッチの着物生地で出来ています。
日本の統制が厳しくなり、戦争に突入すると泣く泣くお気に入りの着物を切ってもんぺにした女の子。
でも一番の宝物のブラウスだけは戦火の中でも手放さずに済んだ!そして、戦争も終わったからこのブラウスを着ていいんだ!
そんな女の子が終戦の焼け野原で精一杯お洒落をして前を向こうとする、そんなストーリーを込めてあります。

このように一着一着、かなり細かな背景を設定してデザインさせていただきました。『その時代の、どんな立場の女性が、なんのために着ているのか』を初音ミクちゃんに託す…という、なんだかデザインというより祈りに似た作業であった事を思い出します。

コンサートではミクちゃんの足元が全く映らない仕様だったので、靴をお見せできなかったのはちょっと心残りです。靴って本当に時代の形が出るので結構こだわったんですが、こればっかりは仕方ないですね。デザイン画も公開していいよと言われているのですが、私の書き込みが汚すぎて人前に出すのがちょっと恥ずかしいので、いつか時間があるときにデザイン画を描きなおして公開できたらいいなと考えています。

平成最後の夏に素晴らしい仕事に携われて、わたしは幸せ者でした。

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