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嘘のぬくもり

寒い夜はなんで人肌恋しくなるんだろう。
誰かとベタベタイチャイチャするのは好きじゃないけど、寒い。心もだいぶ寒いし冷たい。
季節は春なのに、陽気な気持ちになれる程の余裕もない。

夏はきらいだ。でも寒いのもきらい。
春は花粉症がひどいし秋は何を着たらいいか分からん。
あ〜あ、生きるのって大変だ。

この鬱々とした気分をさらにどん底まで沈めてくれたのは快活CLUBの若い店員だった。
あの日もTinderのよく分かんない男と快活CLUBで私は会っていた。ヤバそうな男だった。
先に帰っちゃお〜っとトボトボ歩きながらレジに向かうと彼がいた。
背が高くて私が大好きなくっきり二重の黒髪の男の子。
見上げながら心の中でかっこいいなぁ、こんな人に会いたいんだよ私は!!と唱えながら「先に出ます..」と伝えた。
その店員は少し困惑しながらも会計一緒でいいんですね?と大きい目を動かしながら聞いてきた。
マスク越しでも分かるよイケメン….
「ヤバそうな男と快活来ちゃったけど私は帰ります….ほんとは君のこと食べたかった。」
もちろん言えなかったけどさ。
ありがとうございました〜の声が背中に刺さる
そうだよ..あんな素朴そうなイケメンに会えるほどこの田舎でのTinderは甘くない。
快活CLUBの湿っぽい空気が抜ける扉の向こうには晴れた空が広がっていたけれど、悲しく歩く私の背中に向かって「わしらには救えぬものじゃ」ってダンブルドアの声がもはや聴こえる気がした(
ハリポタ観てない人は見よう?見てほしい)

今日もハズレな日だ〜なんて思いながらTinderでLINE交換したいくつかの男に返事を返すことにしました。懲りないですね。本当に生きててすまん。

その中でも熱心に連絡を返してくれていた子がいたの。顔はよく知らなかったし軽い気持ちで写真を送ってとお願いしたら、仕事中ですケドォ!ってお店の制服を着た男の子の写真が送られてきた。
二度見した。びっくりを通り越して声が出そうになった。驚くと人はこんなにドキドキするのか。
吊り橋効果って信用ならなかったけど、今ならお化け屋敷にどうでもいい男と2人で入れば多少なりともドキドキするかもしれない。私の心はチョロい。
その写真に映る彼は、間違いなく快活CLUBに居た若い店員だった。私が後ろ髪引かれながらトボトボ帰ったあの日に見たイケメン。
見覚えのある制服に、くっきりした目。
マスクはしていたけどその人だった。

嬉しくて嬉しくて、会ったことあります!かっこ良いって思ってました!!と正直に伝えた。
彼はびっくりしていたけれど、そんなイケメンじゃないよ。と謙遜していた
(以下、快活君と呼ばせてもらう)
この時点で喜んで浮かれていた私に教えてあげたい。時間戻し機があるならほしい。
嫌なことがある度にタイムマシーンを切実に欲しがるこのお馬鹿な思考をどうにかしたい。
長年Tinderをやっているのに忘れていた。あの角度(最大に盛れる角度)で顔を撮影し、すぐ送ってこれる男は9割型ろくでもない(私調べ)
かっこいい!!と言われる写真を撮り溜めしてる可能性すらある。

まあでもさ。運命とか言ってみたいじゃん。
毎日毎日同じことの繰り返しをして生きてるこの世界で変化とか欲しくなっちゃうじゃん。
連絡きたら返すじゃん?会いたいって言われたら会うじゃん????
しかも恋愛漫画風に言ったら一目惚れしたイケメン店員と恋愛シュミレーションゲームみたいなことしたいもん。下心丸出しだけどさ?!

トントン拍子で会う日を決めて、車が無い快活君は駅前まで出て来てくれることになりました。
当日わたしの職場の最寄りまで乗り換えて来て欲しいと伝えたら全然行きます!と張り切って来てくれた。
お金も時間もかけてわざわざ会いに来る感じ、ほんとちんぽこビンビン丸って感じですよねぇ。
それがあのイケメン店員、快活君だと思うと性的に正直興奮しました。Tinderだしね?許して?
SEXしよ〜と軽いノリで約束してたから会ってすぐホテル行ってわりと丁寧に抱かれた。
正直SEXが良かった。マスクを外した顔はちょっと劣化したけど慣れたSEXがすごく良かった。

まぁ、こんなもんだよなぁと思いながらも仲良くなれそうな人懐っこさを感じていた。お腹減ったよぉ〜と嘆く快活君を連れてラーメン食べに行く。音ゲーが趣味って言ってたのもあってか話し方とか話す内容から陰キャっぽさは伝わってきたんだけどそれが良かったりもしたの。
陰キャだけどSEXがバチボコって最高じゃん…
私のただの性癖です。

今日の私はひたすら聞き役に徹してお姉さん感を存分に出していこうという戦法!話はつまらなかったけど上手いこと相槌打ったりしてニコニコして聞いていたら快活君は満足そうにラーメンを頬張っていた。
食べ終わってお店を出ようとすると立ち上がって私の手をぎゅっと握って歩き始めたの。
この感じ久しぶりだな〜と思いながら車までの短い距離を歩く。
お店の前でタバコを吸う若い2人組の視線を感じながら私はイケメンと手を繋いで歩いてます!!ちょー幸せですよ今!!!どうもありがとう世界!!
なんて満たされていたんだよ。
でも別に夜に食べたくないラーメン割り勘だったよ?わたしまじで現実見て??

時間も時間だったし電車の時間も少なそうだったから家から30分以上はかかる快活君の家まで送り届ける事にした。
てかこういう所だと思う。分かってるんだよ。甘やかしすぎてどんどんダメにさせていく。
歩くダメ男製造機
甘やかすとすぐ図に乗る男が多すぎる。
寒い駅にさっさと降ろしてまた機会があればな!と去れば良かった
与えるだけの優しさはいつか崩れる
そんなの知ってるはずなのに他人に良く思われたいと心の中でいつも考えてしまう
誰かに必要とされたいし愛されたい。
Tinderを早くやめれば解決しそうな話でもあるんだけどね?みなみなさま、優しいココロでまだ読み進めてあげてください。

時間をかけて快活君のおうちに着いたの。
帰り際に「ねぇ..?」とヒソヒソ声で快活くんが囁いた。なんだなんだって思いながら横を向いたら、「また会ってくれる…?」と耳元で聞いてきた
あれ?これどこかで聞いたことある台詞!!!!中出しゴミクズバンドマンだあーー!!!
最初はデロデロに優しくしてきたけど最終的に揉めに揉めたアイツです!

あれなのかな..ゴミクズみたいな男には女に使えるテンプレ集みたいなのがあるのかな。
こわいね。騙されちゃだめだよ。
言葉はタダだから言うだけなら簡単だし?
そうだねまた遊ぼうねって気を確かに持って返したの。

1回会ったらだいぶ冷めるのでは?と考えてはいたけれど次の日も会う約束してて、当日までるんるんなやり取りしてた。
そしたらギリギリでおばあちゃんが倒れたから付き添わなきゃいけないとか言われてドタキャンされたの。え?うけるよね?
この時はだいぶヤバいなコイツって思ったし、まぁお大事にねぇ〜と返して様子見してた

何日か経ってまた会いたいって言われたからSEXも良かったしドタキャンには目を瞑ろうと思ったんだよ…ばかだねぇ。
そしたら会う約束した当日、またギリギリでLINEが鳴るのよ。悪い予感しない?するよね?
お馬鹿ちゃんな私でも分かりました。

「財布なくした」

ほんとうにいい加減にして???
こいつ舐め腐ってんだろまじで??な??
イライラしながらも、ちゃんと探したの?ポケットは?カバンは?って心配してますよ風には言ったよ。どこまでも優しい人でいたいし…
嘘だろうなぁ〜とか考えながらも警察署行ったら?と促したら、わかった!行くって!!
ん?
財布落としたのガチなの??
まぁさ、仕事もお休みだったし嘘っぽいけど警察署連れて行ってあげるくらいはね…
って、、、、普通はならないよね?頑張って生きてくれ!バイバイ!ってすればいいのにさ。

一緒に警察署行きましたよ。ホントかウソか分からない財布なくした話を聞きながら、優しい警察官に遺失物届書いてもらったの。
人に優しくする、これだけの徳を積んだし生まれ変わったら大金持ちにでもしてくれません?お願いしますよ、神様。

優しい優しい警察官だった。優しく丁寧にどこで落としたか、何が入っていたか、記憶を辿れるように快活君に聞いてくる。
こんなに優しく丁寧な対応してくれる警察官で良かったね快活君….。
あれ?快活君??
快活君はめちゃくちゃイライラしていた。項垂れながらも警察官や私にひしひしと伝わる苛立ちを隠し切れないまま優しく投げかけられる質問にいちいちキレ気味で返している。
「まぢ終わった!財布落とすとかまぢキショ!拾ったやつまぢ死ねし!」
ぶつぶつ言いながらリピートしていた。お気の毒様だけど自分が悪いじゃん…お尻ポケットに財布を入れるなよ。
そして警察官に当たるな。優しくしてくれてるのにさ!

私の隣でペラペラと本名、住所を警察官に伝えている。ここで私は少し信用してしまった。
だってTinderの関係が浅い人に安易に本名や住所なんて知られたくないよね?
この人は私のこと信じてくれているのか?とさえ思った。警察官に対する態度はどうかと思ったけどさ。

一通り書類が作り終わって「ありがとうございました」と私が警察官にお辞儀した。
快活君はもう歩き出していた。え????
なんなんだこいつ、まともな教育されてねえな?
お礼を言えよ。
もうこの時点で警察署に置き去りにすれば良かった。頑張れば歩いて帰れる距離だし。
てか警察署来てお金も大して持ってきてないのにこの後何する??ってなった

私たち会ったらSEXする関係でしかないし散歩するテンションでもないし家まで送るのも違うし…
SEXしました。ホテルで。お金?
この日は私が払って次は快活君が払うことになったんだよ。まぁいいよこれは。
SEXしたかったのは事実だし。
その後またラーメン行ったの、仕事入ってるから急いで食べれる物…ラーメンだねってなって。
お金?私が払うよね。
てか金ないならご飯食うなって感じじゃない?
もういいよこれも…人には優しくしろって親に言われて育ってきたしラーメン1杯くらい奢ってもバチ当たらないでしょ…はぁ。

仕事がある!って急いで帰って行った快活君。これも後々から知る嘘かもしれない話。
財布無くしたからって次会う予定も流れたし..
その後、出張とか言って2週間くらい都内に居たらしい。それも今となっては怪しい。
快活君が出張してる間、私は親友ちゃんと会っていた。その時、快活君の話をしたら女の勘?なのかその男なんか変じゃない?と怪訝そうな顔をして聞いてくる。

頼れる親友ちゃんの話には、ちゃんと耳を傾けたかったので快活君と通話を繋いで3人で話すことにしたのだ。それとなく色々聞いてくれる親友ちゃん。とても頼りになる…
そしてお金の話になった時に快活君は、ポロっと借金があると言った。
金額を聞くと言いたくないと言いながらも600万と言い出した。

6万でも60万でもなく600万。
それも会社からの借金とかいう意味の分からない事を言っている。ウシジマくんの話かなんかなの?もっと現実味がある嘘にしてほしい…
親友ちゃんも困った顔をしながら話を聞いていた。
嘘っぽいけどただSEXするだけの関係ならいいかもね、ただお金絡まなければの話ね???
親友ちゃんは念押しするように私に言った。

それから1週間くらい過ぎた頃、快活君が出張から帰ってきた。帰ってくるまでの期間も毎日連絡は取り合っていて早く会いたいね!会いたい会いたい!会いたいよ!会いたいの機関銃を打たれてた気がする。
沼らせ系男子特有のアレだ。甘えるのが上手い。息を吐くように嘘をつく。
暇なのか?ってくらい連絡がマメなのも特徴のひとつと言えるだろう…

帰ってきてすぐ会うことになったんだけどさ。
ご飯食べていちゃいちゃしてSEXして解散した。
なんとなく少し冷めた態度を感じたし、私もモヤモヤしていたの。
だってさぁ…SEXは良いからって思ってたはずなのにゴムつけるとなかなかいかないし…原因はいつも生でやっていたからって…分かりやすいくらいのダメ男じゃん..
責任も取れない、ゴムをつけない男はSEXをするな!!!そんな男とSEXをするなよ!って話ですよね。ごめんなさい。

その日を境に連絡が途切れました。
毎日LINEがきていたから少し心配した。いやだいぶ心配した。熱出た具合悪いって写真つきでLINEしてきた後に音信不通になったからワンチャン死んだかな??って思うじゃん。私いい人だしぃ?
LINEもこない、電話も出なかったからもうしょうがないよなぁって考えていたんだよ。
てかこの時点で次会う日決まってたのにまたドタキャンされてるのうける。
さすがに嫌味っぽく謝らないの?って聞いちゃったよね。

何日か過ぎてずっと気になってはいたけど、どうしようもねぇしな〜とか思って諦めようとも考えたけど快活君がよく使っている駅にふらっと買い物に行くことにしたの。
もしかしたらさ、そんな偶然無いのは分かるけどもさ?バッタリ会ったりするかもしれないじゃん。
でも駅の中なんてすごーく広いしそんな上手くいかないのも分かってた。
分かってはいたけど駅の中をぶらぶら歩いてみる。まぁ散歩だと思えばね???

歩く…歩く….
一緒に買い物した100円ショップがある….
通り過ぎる….え?通り過ぎないで!!?
レジで会計してるの快活君じゃん、嘘?!?
えぇえぇ、、ってなった。
こんな事ある?私は引きが強いのか?
どうしよ..どうする?!ってなったけどとりあえず気付かないふりして歩く
会計が終わった快活君がお店から出てきてバッタリ鉢合わせした。

マスクしてても分かるくらいの困った顔をしているのが分かった。バツが悪そうに驚いた顔。
….何してるの?嫌な空気感に耐え切れない私が聞くとこれから仕事だから!!汗汗
急いでる風にその場を立ち去ろうとする快活野郎。もう快活君とか言いたくないレベルな?
ちょって待ってて!と小走りで走り出した。
え、、逃げた?指名手配でもされてるんか?
しかもそこの角曲がっちゃったら行き止まりだよ..
遠くから動向をボーッと見てたらこっちの方をチラチラ見ながらやむを得ない感じでトイレ入って行った。明らかに挙動不審すぎる。

しばらくしたら何事も無かったようにトイレから出てきた。逃げられないと思ったのかな?
とことこ歩いてきたから、連絡したんだけど…って一応言ってみた。
「携帯壊れた!今ない!修理出してる!」
アセアセしながら快活君が答えた。
もっと上手な嘘なかったの?悲しいね。
嘘つくならもっとちゃんとしてよ。
めちゃくちゃ急いでます風で、なんなら少しイライラしながら仕事だから!行かなきゃ!って繰り返してるし悟りました。もぅだめだ〜。
私も仕事だから行くね…とお別れしたの。

少しでも心配した私が可哀想だね。
人に優しくと教えられながら生きてきたこの人生…優しくする人は見極めろ!を追加したい。
肩を落として車までの道を戻りました。

ん?なんか嫌な予感する、したの。
1度乗った車を降りて今来た道を戻る。
我に返った、怪しい。おかしいおかしいおかしい
快活君とお別れした先にあるゲームセンターに私は吸い込まれるように入りました。

音ゲーが趣味と言っていた。
駅前のゲーセンでよく遊ぶと言っていた。
まさかね…これから仕事って言ってたしすごく急いでいたもんね。居ないでね。お願いします神様仏様。

私は恐る恐る、わざわざ遠回りして音ゲーゾーンに近づいた。誰にも見つからないように。

すごく遠くからだったけど快活君が見えた。
でもね?見間違えとかありますよね?
ないですか?ないですよね。
間違いと思いたかったしパニックになっていた
私は何を思ったのか目の前にいた男子高校生に声をかけた。

「あっちで音ゲーしてる男の人の写真撮ってくれませんか?」

高校生はびっくりしてたけど不気味なお願いをするアラサー女を哀れに思ったかもしれない
快くOKしてくれたのだ。
私のスマホを渡してしばらく待っていると小走りで高校生が戻ってきた。

上手く撮れたか分からないですけど…。
そう言ってスマホを優しく返してくれた
純粋な高校生をこんな面倒事に巻き込んでごめんなさい。成人したらお姉さんが優しくしてあげるからね??この御恩は忘れません!

撮りたてホヤホヤの写真を見返した
そこにはノリノリでゲームする快活君が写っていた。
写真をお願いしただけだったのに優しい高校生、動画も収めてくれている。ノリノリの快活君だ。
ちょっといいなぁって思ってた人がノリノリで音ゲーする姿ってカオスじゃない???
音ゲーは悪くないんだけどさ?
音楽に乗ってゲームする姿に嫌悪感すら感じるの。あ〜あ見たくなかったよ

いつかがあるのならこの写真を送りつけてやりたかったけど、いつかも、もしも、も無いだろう
車のエンジンをつけてすっかり暗くなった空を少し見上げなら私は走り出したのだった。

そんな日に限って、音信不通だったはずのLINEが鳴る。快活君だ。
代替機から連絡していると書いてある。
いつまでこのハッタリ野郎に付き合うのか、
聞いてもないのに気になる人が出来た!とか見当違いすぎる話もしていた。
正直もう頭がついていかない。ショートしそう。

気になる人と付き合うかもしれないけど、まだ分からないからそれまでは会えるけど?
そう言われた。優しい人もここまでだ。
返信はしなかった。ブロックもしなかった。
もう何もしたくなかった。

さとうもかちゃんが歌っていた
「湿ったこの裾を離したら終わっちゃうような関係だもの」
私たちはどこまでいってもセフレでしかなくて軽くて脆くて壊れるのは簡単だった。

大人になってから友達を作るのは容易いことじゃない。相手を受け入れて自分を受け入れてもらうのは簡単そうですごく難しい。
だからこそ、この人なら仲良く出来るハズ!
そう思える人に出会えたときに大事にしようと頑張ったりする。
たとえそれがセフレでもね

誰かを不用意に傷つけたくないし傷つけられたくない、その為にたくさんの予防線を張ってるつもりなのにどうも上手くいかない。
人間ってめんどくさいなぁ。

きっと忘れた頃に快活君から連絡がくるだろう。そこまでがセットである。
寂しくなったら都合のいい女が必要だからね
ブロックはしないよ、いつか言いたいもん



「私のこともう抱けないなんて可哀想だね」


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