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見つけた瞬間に思ってしまったこと

≪日々の機微 vol.6≫


あ、肉離れだ

一緒にいた友人にそう呟き、私は肉離れの元へ向かっていった。
友人が乾いた笑いをしたような気がしたが、興奮を抑えられぬまま衝動的にこの1枚を残した。

見つけた瞬間に言葉も同時に出てくることがある。

気づきとも言えるし、ツッコミとも言えるかもしれない。
世界にこんな面白い状況が文字通り転がっているだけでその日一日何とも言えぬ幸福感に包まれることがある。

中島らもが記したエッセイ「その日の天使」の言葉は自分の生き方にも多少なりとも影響を受けていると思う。

一人の人間の一日には、必ず一人、「その日の天使」がついている。

中島らもエッセイ・コレクション (ちくま文庫)/「その日の天使」


絶好調のときにはこれらの天使は人には見えないものだが、絶望的な気分に落ちているときには、この天使が一日に一人だけ、さしつかわれていることに気づく。例えば知人から電話がかかってきたり、ふと開いた画集か何かの一葉の絵によって救われたりと。

絶望的な気分に落ちずとも、私にとってこの天使というのは人に限らず思わず笑ってしまうような状況を作り上げた"もの"が路上に天使として現れるようだ。

だから、その天使を見つけたときはこの上ない喜びに溢れた瞬間だ。

先日お知らせした私の展示では、この肉離れの写真をメインビジュアルのひとつに採用している。
肉離れの説明がないとなんの写真かよく伝わっていないかもしれないが、選んだ背景はそんな理由があり、撮り集めている写真の象徴だからだ。
今回の展示では、このほかにも路上で出会った天使のような写真を12点ほど選んでいる。

言葉と合わせて、楽しんでもらえたら幸いである。


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