新しいカタチへ vol.9 (安堵と不安の上海・・・)

翌朝、おせじにも美味しいとは言えないホテルの朝食を食べ、再び砂漠(勝手に砂漠と言ってるだけですが)に建っているN社長の工場を訪れ、細い打ち合わせに入りました。
特注の家具の製造工程やら価格、納期のことなど念密な打ち合わせは、朝から始まりようやく出口が見え始めた頃には、夕焼けで上海の空が真っ赤に染まってました。

「イタル なんとかなりそうやな」

「そうですね・・・」

「あとは税関を何事もなく通過することを祈るばかりやな・・・」

「えっ 通過しないこと あるんすか?」

「そらオマエ 何があるかわからんぞ! 税関で何ヶ月も止められたってことあるらしいしな」

「ちょちょちょ ちょっと待ってくださいよ! そうなったら・・・?」

「そうなったらアウトや! 不運やったってことやで! 笑」

タバコをうまそうに吸い込むYさん・・・
一抹の不安を抱えながらの帰国となりました。

相変わらずの人人人でごった返している上海空港出発ロビー

「おい イタル 俺らの乗る飛行機、行き先にKIXってなってるけど・・・」
「KIXってどこや?」
(後で知ったのですがKIXは関空の略です。)

「えっ 知りませんヨ・・・汗」

「これキリギスタンの略と違うか・・・?」

「えーっ・・・」

「到着したらキリギスタンの草原の空港やったらどないする?」

「ちょちょちょ ちょっと Yさん・・・」 

当時はLCCなどと言う格安航空が存在しなかったので、私たちは高い運賃の日本の航空会社を避けて、中国の飛行機を選びました。
当時は日本語のサービスもなく、私たちは半信半疑でKIX行きに乗り込んだのでした。

「これでホンマにキリギスタン着いたら、ええ話のネタになるぞ」

「何をのんきなコト、ゆーたはるんすか!!」

緻密なのか? ええかげんなのか? 肝が座ってるのか? Yさんがよくわからん・・・
でも、あの3日間は、私の人生にとって、かけがえのない冒険と思い出の旅でした。

つづく

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