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コメント力を鍛える

いくつかある私の朝のルーティンの中には、心と体と頭のスイッチをオンにするものがありますけれど、頭のスイッチをオンにするのにとても役に立っているのがVoicyの放送へのコメント付けです。

いくつかの番組を朝から聞いていますがその中でもお気に入りになっているのが荒木博行さんがパーソナリティをやっているbook cafeです。
この放送は荒木さんが読んだ本とその感想の紹介、著者との対談などが盛り込まれるもので、本をたくさん読みたいのだけれど時間がなく、どんな本なのかを教えてもらったり、読む前の頭出しとして聞かせていただいていて、とても助かっています。

放送を聞いて思ったことや感想、あるいは疑問に思ったことをコメントとして書き込む機能がVoicyにはありますけれど、毎回の放送でコメントをつけているうちに、放送に呼ばれるまでになってしまいました。
以下のリンクで私がコメント職人の一人として話しているので、聞いてもらえると嬉しいです。

放送の中でも触れていますけれど、私はこのコメント付けを一種のトレーニングの様に捉えています。
確かにコメント自体は感想文に過ぎないのでしょうけれど、コメント力を鍛えると実は学習能力も加速するのではないかと最近思うようになりました。
どういうことなのか整理してみようと思います。

書き始めたきっかけ

Voicyを聴き始める前は私はClubhouseのベビーユーザーでした。
2年前ぐらいに大いに盛り上がって今はやや沈静化しているClubhouseですが、アレの良いところはなかなか普段話すことができない人のトークにライブで質問したり、一緒に生で話したりすることができるところにありました。
番組を聴きながら、「ここもうちょっと聞いてみたい」と思うことがあると、私は遠慮なく手をあげて質問をしたり、自分の意見や考えを述べてフィードバックをもらったりしていました。とても刺激的でしたし、良い学びが得られました。

Clubhouseが下火になってきてコンテンツ的にもいまひとつな番組だらけになってきたあたりから私はVoicyの放送も聴き始めていました。
誰でもルームを作れるClubhouseと違ってVoicyのパーソナリティは厳選されたエキスパートやその道のプロといった人達が放送を行なっているので魅力的な番組も多く、次第にVoicyを聞いている時間が長くなってゆきました。

Voicyの一般的な放送はPodcastのようなもので、収録された録音を一方通行で聞くだけのものですが、コメントをつけることができます。
最初は聞いてるだけでしたが、たまに「これはいいことを聞いた!」と思えるような放送に出会えると、お礼の意味でコメントをつけるようになりました。
単に感謝を伝えるのではなく、放送のどの部分に感銘を受けたのか、どの言葉に刺激されたのかを伝えるとたまに「コメント返し」というリスナーのコメントに対してパーソナリティがコメントをしてくれるコーナーで名前を呼ばれたり、コメントしたことへの感謝の言葉を受け取れたりします。それがあると結構嬉しいものです。

当初は散歩しながら聴き流してる感じでした

そんなことをし始めていたところ、全てのコメントにコメント返しをしている放送がありました。それも、全てのコメントをその場で読み上げて、それに対してパーソナリティがコメントをするという丁寧さで。それが荒木博行さんのbook cafeでした。

コメント返しを丁寧にしてくださるだけでなく、放送で取り上げる本もビジネス書から哲学、場合によっては美術館見学など多様で勉強になるものばかりでしたし、それらの著者との対談も本に書かれてない内容があったりして興味深いものでした。
いつしか私は荒木さんの放送で毎回コメントをつけるようになってゆき、それが習慣として定着しました。そして、放送に呼ばれるようにまでなった、と。

コメントの書き方

最初の頃つけていたコメントはほとんどが感想であり、感謝の言葉に過ぎませんでした。知らなかったこととか新たな解釈が出てきた時に、純粋に価値のある放送であったことをフィードバックしたくなるのが動機だったと思います。

放送を聴き続けるうちに、話された内容についてのどういうことなのかを整理して自分の理解が合っているのかを確認したくなったり、質問や疑問が出てきて答えを得たくなったり、自分なりの考え方を伝えてそれに対するフィードバックが欲しくなってきたりしてきました。コメント返しでそれを確実に聞けるので、伝えたい・聞きたいと思ったことをは次第に遠慮なく書くようになってゆきました。

やがて、自分なりのコメントの書き方のパターンが出来上がってゆきました。それがリンクを貼り付けた放送の中で私自身が説明している内容でもあります。
簡単に以下にまとめてみますね。

コメントの書き方
1)タイトルコールで提示される「お題」を聞いて、自分の中に浮かぶイメージや質問したいことを手元のメモに書き出しておく
2)放送を聴きながら、お題についてパーソナリティが何を伝えたいのか、キーワードや自分がインスパイアされた言葉をかき取ってゆく
3)同時に放送の中で語られるパーソナリティの視点や考えについて、自分の感想、そこから想起された知識や経験、疑問点などを書き出してゆく
4)放送に区切りが入った時点で、パーソナリティの言葉と自分の考えが並んで書かれているメモを見ながら、3分〜5分で250字以内のコメントにまとめアップロードする

私の場合は放送を聞き始めてから終わるまでにコメントのアップロードが完了します

一回の放送が長くても20分ぐらい。
それを聞きながら絶えずメモを取っていて、パーソナリティが話していることを書き出すだけでなく、自分の頭で考えたことも同時に書き出しています。そしてそれを短時間で一つに統合し文章、というかメッセージとし、かつ文字数制限があるので端的な表現になるように言葉を削ぎ落としています。

明らかに文章を書くためのトレーニングになっていると私は思いますし、実際に毎朝これをやっていると頭がクリアに回転するようになります。なんというか「はっきりと頭脳が覚醒している」ようなハイな状況にまで持ってゆけます。
そして、この勢いで午前中の仕事には高い集中力とクルクル回転する頭で臨むことができるようになっています。
これが習慣化できたことは本当にありがたいと思っています。

私はコメントをつけ始めてからまだ一年経っていないと思いますが、他のコメンテーターはもっと年期が入っていて、絶妙のメタファーでパーソナリティのトークを抽象化していたり、自分の経験と結びつけて一段深い感想を述べている人もいます。
他の方のコメントを読むことで、自分のコメント力もまだまだ磨くことができる余地があるなと思えます。

今は放送を聴くときはメモをとりながらコメントを書く準備をしています

コメント力を応用する

放送を聞いて感想をコメントして書く…これが何の役に立つのでしょうか?
自分がやってることは一体なんであるのか、どんな意味があるのかをちょっと考えてみました。

やっていることをハイレベルで整理をすると…
1)テーマや課題に対する問いを短時間で設計する
2)人の話を聞いて、その人が伝えたいポイントを整理する
3)話を聞きながら、以下のように自分の考えを出してゆく
  ①明確にしたい事柄を質問として書き出す
  ②相手の論点と異なる視点や反対意見(反駁)を考え書き出す
  ③抽象的な内容については自分の経験を持ち出して具体化を試みる
  ④具体的な内容についてはメタファーなどで抽象化を試みる
4)話された内容と自分の考えを結合させて文章を作成する
5)文章のノイズを削ぎ落としてメッセージをシンプルにする
これを極めて短い時間でやっている、ということになると思います。

こうしてみてくると、これはファシリテーションにすごく似ていると思いませんか?
対話会を設計したり、会議の進行をしたりするときにここで書いたようなことをこれを読んでいる皆さんもやっているのではないでしょうか。
文章にしなくても口頭で言葉として伝えるなどの方法でやっていると思います。

ファシリテーションと違うのは、リアルタイムのやり取りが発生することはなく、時間をおいてフィードバックがくるところでしょうか。リアルタイムの会議では発言を刻むための介入などもできますものね。
しかし、リアルの場でもひと通りの長い話を聞きながらそこの論点やキーポイントを組んでまとめつつ別の方向にリードするというのは場面としてあり得ますし、対話の場というのはむしろしっかりと相手の話を聞いて受け取ることが求められるので、同じような状況になることは十分にあるのではないかと思います。

コメント付けを、多様なトピックに対して数をこなしてゆくと、いつしかどんな内容の話でもしっかり受け取って相手の論点を捉えつつ自分の考えも主張することができるようになります。
しかも文章として不特定多数の目に触れるものにまとめあげるスキルもつくので作文能力もかなり上がるのではないかと思います。


会ったこともない人の放送を聴きながらコメントをつけるのはハードルが高いなぁと思われる方も多いかもしれません。
「こんなこと書いたら頭悪いとか思われるかなぁ」とか、「正しく理解できてるのか自信がないから書けない」とか考えて、なかなかコメントを書こうとまで思えないこともあるだろうと思います。

でも、私も最初は遠慮がちにおずおずと、でした。
差し障りのないお礼の言葉から始めて、感動したポイントや思い出した話などを共有するつもりでちょっと書き添えた時に、それに対する反応がもらえると書いて良かったなと思えます。
そんな小さな満足感をひとつひとつ積み重ねていってるうちにいつしか上達したというのが正直なところですし、まだまだコメント力が足りないなぁとも思っています。

ここまで書かせていただいたように、コメント力は自分は複数のコミュニケーションスキルを磨くことができます。
まずは、短くあなたの気持ちを伝えるところから始めてみませんか?

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